ごくごく個人的な「本」日記
2014年6月
2014. 6. 30 月
昨日もすこし書きましたが、ガファレル論集への僕の寄稿は、魔術的な力の働きをあくまで自然なものとして説明しようとするガファレルの議論をルネサンス末期の知の文脈において分析しようとするもので、これまで多くの研究者が触れてこなかった未知の領域を開拓していると思っています。これを集中講義のための教材にしたいところですが、もうリストは一杯になってしまっているので無理でしょう。
この秋には、小澤君がらみで依頼された魔術についての論集に寄稿しないといけません。引き受けたのは良いけれども、どういうふうにアタックすればいいか、ずっと迷っていました。そうだ、このガファレル論文の邦訳版を土台にすればいいかなと思うようになりました。難題が解決した気持ちです。
ところで、今夏の集中講義の前評判はとても良いようで、予定している受講者の数は予想を大きく上回るものとなっています。もしかしたら、予定していた教室を変更してもらわなければならないかもしれません。
2014. 6. 29 日
今日はツイッターでのやりとりで、これまで分からなかったことが分かりました。ふたつの学校について、トニーは本のなかで「アカデミー」という用語を使います。どちらも大学とまではいかない学校だからです。ひとつは、カルヴァンがジュネーヴにつくった神学校で、のちには大学になるものですが、16世紀の段階ではそこまでいっていません。ヨシ君の教えでは、ジュネーヴの「学院」と訳すのが良いようです。もうひとつは、フィレンツェのものです。ピサに大学の機能が移ってからのフィレンツェのものはどう訳したらいのか疑問に思っていました。こちらは実質的には大学の体をなしていなかったようですが、根占先生と原さんのアドヴァイスによれば、「大学」と呼んでいいようです。
ガファレル論集の目次、序文、謝辞、省略記号表のチェックをクレアにしてもらいました。あいにく、ガファレルの肖像画はみつからないので、論集のなかでくり返し議論される図版をかわりに使うことにしました。これも、出版用に高解像度のものを準備してもらいました。
この論集に寄稿した僕の論考自体は、第2著作とリプシウス論文できわめた論文執筆におけるアートから離れて、つぎのスタイルを模索している段階で書かれたものです。肩の力をぬいて、下手ながらも大きな俯瞰を与えることに注意して魔術と科学の絡みを描いたつもりです。さらに本来なら、トニーが教えるところのルネサンス人たちによる古代人類史研究の文脈でガファレルをとらえないといけないのでしょうが、今回はそこまではできていません。
2014. 6. 28 土
昨日、めでたくも資金繰りのメドがついたので、ガファレル論集の編集作業を終わらせてしまおうと思い、目次、序文と謝辞、省略記号表をつくりました。僕のつくる論集は序文が短いと文句をつけられることがあるのですが、小品ですから前口上よりも中身を読んでもらうのが一番だと思います。ただ、まだ最終的なタイトルを悩んでいます。『ジャック・ガファレル:初期近代ヨーロッパの魔術と科学のはざまで』というのにしようか迷っています。カバラや科学革命という売れる単語を入れたい気もしますが…
Jacques
Gaffarel between Magic and Science in Early Modern Europe
いざ、出版が具体的になってくると、これまでしてきた編集作業に欠点がないか、かぎりなく心配になってきます。大丈夫だとは思いますが。
2014. 6. 27 金
大学からガファレル論集の出版のための助成金として、1500ユーロまで出してもらえることになりました。今年中に出版をしないといけませんが、これで大きな推進力をえました。良い感じです。BH の熱心なファンの皆さまからいただいた寄付とともに、必要な額に迫りつつあります。このまま秋冬には出版にこぎつけましょう!
なんとか年代学についての授業の準備もひと段落ついたので、教材に指定しているジェディ&モーティ組の『ニュートンと文明の起源』を読みはじめました。最初はニュートンのケンブリッジの学生時代からはじまります。そこで彼がうけた自然哲学を再構成するのですが、使っているマテリアルはコーペンハーヴァの1988年の論文などで古いかもしれません。新しいところでも、ビルの2006年の本ですね。世間的な理解では、まだこの辺なのでしょうね。
2014. 6. 26 木
僕も主催者の一人である、来年の3月19-20日にユトレヒトで行われる占星術についての大型の国際会議への発表の公募をだしました。参加・発表したいという人は、ぜひともチェックしてみてください。締め切りは、9月30日です。
今日に出だしは低調でしたが、午後の後半からはテンポが出てきてました。もう少しで、もっとも難しかった年代学の部分もできあがると思います。ここは僕の専門分野というよりも、新たに与えられたテーマを前に、どういうふうに研究を進めていったらいいかを探るアトリエとしたいと思います。
2014. 6. 25 水
授業を1本つくると、どうも気が緩みます。根を詰めるので、緊張感をもって継続するのは難しい作業ですが、あと1本がんばります!
2014. 6. 24 火
HOPOS(History of Philosophy of Science)の年会が、来週にゲントでおこなわれるようです。ちょっとプログラムを見てみました。このあいだウィーンで開催された Intellectual History Review 系の Scientiae と同様に、他にはないくらい初期近代についての発表が多いのですが、僕にいわせれば哲学の人が考える科学という視点の発表ばかりのような気がします。これが世の中のトレンドだとしても、どうも個人的にはピンときません。予言とか、終末論とか、夢解釈が好きなのですが、こういうテーマはHOPOSとは対極にあるのでしょう。やはり、僕は歴史家なのだと感じます。
では、Scientiae はどうでしょうか?こちらは知の歴史に比重がおかれていて、いくつかの発表のテーマのとり方には身近なものを感じます。ただし、参加者は欧州とカナダの人たちが主流で、米国を巻き込んでいないところが弱点です。ということで、ルネサンス学会がいまのところ一番であるような気がします。その証拠に人々にたいするアピール度も高いです。
哲学的な関心というものの根っこを探れば、発展史観と切っても切れない関係にあるのではないかと感じています。科学革命のような近代性の物語にひきつけた視点によるからでは?とロンドンのコージ君はコメントをくれました。でも、知の歴史だって科学革命などの近代性もしっかりと視野に入っているのですよね。だから、近代性そのものが問題ではないような気がします。むしろ方法論ではないでしょうか。その証拠に、HOPOSの参加者たちの多くは、自分たちがインテレクチュアル・ヒストリーをしているとは言わないでしょう。
今日は、なんとかがんばって、集中講義の序論のパワポをつくりました。これで3本つくったので、あとで微調整しないといけない既存の2本とあわせて5本となりました。ゼロからつくらなければいけないのは、残り1本となりました。ふう。
2014. 6. 23 月
今日は雑事がいくつか重なり、集中講義の準備ができませんでした。明日からがんばります。
懸案だったポスターの転送(学習院女子から主要メンバーまで)の作業は、葉月さんに協力してもらうことになりました。ふかく感謝です。受け渡しに都合がよい日を、根占先生と相談して決めていただければ幸いです。
7月17日の招聘ゲストのピックアップ(東京シティ・エアターミナルから日吉)は、ヨシ君が協力してくれることになりました。2組を僕と分担すれば、なんとかなるでしょう。これまた、ふかく感謝です。18日のアンジェロさんのピックアップ(おそらく新横浜から日吉)をどうするか考えないといけません。
2014. 6. 22 日
今日はブリュッセルで用事があります。ワールドカップのベルギー戦と同じ時間帯に当たってしまいました。荒れないことを祈ります。> なんとか問題なく帰ってこれました。
2014. 6. 21 土
今日は一日かけて、集中講義における占星術(宇宙論と気象論もふくむ)についての回のパワポをつくりました。ここは、キミアの回とかなり似たような展開になっています。10年くらいの感じずれでキミアを追っているようです。
国際シンポの招聘ゲストが到着するのが、17日なので出迎えの手配をしないといけません。成田に10時半と12時なので、TCATには2時間後の12時半と14時でしょうか。2つの組の到着に微妙な時間差があるので、僕一人で対応するのは無理です。誰かもうひとり手伝っていただける助っ人を探さないといけません。
2014. 6. 20 金
去年の春と秋に2回ほど校正につきあわされた、僕のパラケルスス論文(2008年)の英語版がオンライン版(無料)で読めるようになっています。皆さんも、この機会にどうぞ。
集中講義の演習の方は、教材を決め、報告担当者もだいたい決まり、あらかたの教材もわたしました。欠けている分の3つは、来週までにはなんとかするつもりです。つぎは、講義の内容づくりです。6回分ありますが、2つは去年イスキアと学習院女子のためにつくったものを使おうと思っているので、残りは4つです。まずは、序論よりも扱いやすいキミアについての回からつくることにしました。あら筋をきめながら、パワポをつくっています。まだ、90分ほど話すには、何枚くらいのスライドが必要か、自分でも良く分からないところがあります。それでも、なんとかタタキ台はできました。つぎは、占星術の回です。
2014. 6. 19 木
昨日、カズ君の博論から物質論についての1章が送られてきましたので、読んで気がついた点をスカイプでコメントをしました。生命論、神話解釈とみてきましたが、今回のものは最初のヴァージョンとしても完成度は高いと思います。残りは、あと宇宙論についての1章となりました。
最近、トニー本に深くかかわったこともあるからなのですが、カズ君の原稿を読んでいてひとつのことを考えました。ベイコンがギリシア・ローマの神話を寓意で溢れてぼやけてはいるが、何がしかの「古代の叡智」(prisca
sapientia)を伝える歴史ドキュメントとして理解している点は、先日ここでふれた人類史を旧約聖書と結びつける営為と似ている流れだと思うのです。つまり、聖書で描かれる時代があって、神話の時代があり、バビロニア、ペルシア、ギリシアなどの古代史がくると理解して世界史を記述しようとした運動です。ルネサスの人文主義者たちが文学的・文献学的な関心から注解の対象として解釈していたものを、さらに一歩進めて16世紀の後半に展開されたものとして、世界史記述における神話解釈の流れがあったわけです。その流れのなかにベイコンの神話論をおいて、理解すべきなのではないでしょうか?
2014. 6. 18 水
昨日は、集中講義の細かいプログラムと教材を決定して発表しました。今日は、受講生との連絡や教材の配布のためにフェイスブック内に専用の会議室を立ち上げました。集中講義の受講希望者は、連絡ください。会議室のメンバーに加えます。
すくなくとも最初の1〜2回の演習では、集中講義のはじまる前に準備をしないといけないので、しっかりと報告者とそれぞれの担当するマテリアルを決めておかないといけません。幸いなことに2〜3時間のうちに、ほぼ確認できる人々は会議室への登録が終わり、それぞれが担当するアイテムを確定しました。皆さん協力的で、とてもスムーズだったのには驚きました。各アイテムの担当者は、こちらに一覧としました。
基本的には、皆さん、初めて触れるような聞いたこともないテーマばかりでしょうから、教材の粗筋をまとめて、とくに手法に注目して分析してもらい、余裕がある人は自分の関心や研究に引きつけたコメントを加えてもらえれば最高です。一本につき15分で説明してもらって、その後に15分間ほど皆で議論するのを3本行って、90分としたいと思います。
2014. 6. 17 火
ゴールデン・ウィークのころからトニー本とガファレル論集のふたつの編集作業で忙しくしていたので、この日記やフェイスブックを含めたその他のことが疎かになっていますが、ご容赦ください。今年は、このふたつをドーンとお届けできることを狙っています。
学術出版の未来を占うためにキンドル版BHを開設して、ほぼ2カ月がたちました。なかなか好調で自分でも驚いています。もう一つ別の、あっと驚く電子出版が年内にくる予定ですが、これについては細かいことが決まってからお知らせします。もう少しお待ちを!
さあ、今日からは集中講義の内容とパワポを本格的につくっていこうと思います。>
だいたいのプログラムと演習用の教材を選定しました。履修予定の方々、こちらからどうぞ。なお、教材についてはPDFなどで配布する予定ですが、一足先に欲しい人は連絡ください。それぞれの回につき、15分づつ3人の発表を予定しています。ということで、毎回3本(邦語と英語の半々)を選んでいます。
2014. 6. 16 月
今日はついに、トニー本の核となる長尺の第4章の見直しが終わりました。これは分量的にタフで、内容的にも不慣れで難しいので、なかなか苦しかったです。でも、だいぶ邦語として読みやすくなったと思います。これで僕がもっている部分は、すべて見直しをとおして行いました。あとは残っている第1章の注を片付けていただいて、全体の最終的な読み直しをはじめたいところです。
2014. 6. 15 日
今日はトニー本の第4章を読みなおしました。だいぶスムーズになったと思いますが、とにかくこの章は分量が多いので、なかなか全体を統一的にコントロールするのは難しいのです。これで、最後の準備が残っている第1章をのぞいて全体を読みなおし終えました。
2014. 6. 14 土
超有名ブログ『石版!』の紺野さんにトニー本の序章を読んでもらい、いろいろ指摘してもらいました。やはり、文才のある人の着眼点は素晴らしい。とても有益です。ふかく感謝!
去年の夏から拠点をリェージュのBH本館にもどし、オランダは週3日ほど滞在しているのですが、ここ半年ほどオフィスに山積されていた本などを毎週末帰ってくるたびに少しずつ運び込んでいます。しかし、これらをきちんと収納するためには、本棚を本格的に整理しないといけません。それができていないので、どんどん至るところに小山ができています。
2014. 6. 13 金
夏の一時帰国用の航空券を入手しました。1100ユーロだったので、盛夏なのに冬の料金とそれほど大きく変わりません。お得だったといえるでしょう。今回初めて羽田着となります。どうなるでしょうか?
7月14日 ブリュッセル 7時10分―8時半 パリ
パリ 10時50分―羽田 6時(15日)
8月27日 羽田 22時15分―パリ 4時(28日)
パリ 8時―ブリュッセル 9時45分
うまく集中できて第9章も見直しが終わりましたので、週末はスキップした第4章にもどります。それで手持ちの分はお終いです。
2014. 6. 12 木
トニー本の作業をつづけ、第6章と第7章をプリント・アウトして見直しました。だいぶ良くなってきたと思います。すでに第2章と第3章は終わっていますので、残りは長いので飛ばした第4章、そして第8章と第9章です。なお、まだ第1章は一歩前の段階にあります。今週末までに第8章と第9章を終わらせたいとは考えています。
2014. 6. 11 水
今日はナイメーヘンに移動です。
2014. 6. 10 火
昨日からポスターの入稿を試みていますが、これは毎回一度では上手くいきません。僕は素人ですし、クレアは日本語の指示が読めないので、印刷会社の要求がうまく一発で反映できません。もどかしい限りです。向こうは24時間対応なのですが、日本との時差もありますし、なかなかです。3回目にして入稿に成功しました。結局のところ、最初からためしていたPDFをあきらめて、イラストレーター・ファイルにしました。3日でできあがり、発送となります。5日で学習院女子大に荷が届くでしょう。
印刷会社からのファイルのチェックを待つというヤキモキする状態だったのですが、そのあいだトニー本の序章のチェックを終了しました。残りは第1章だけです。こちらの作業も、これで大詰めを迎えました。ただ、この本は分量が多いせいか、表記の統一性にいまひとつ自信がもてません。助っ人を雇うことになるかもしれません。
2014. 6. 9 月
すっかり忘れていましたが、今日は祝日です。昨日あたりから、欧州に灼熱が襲ってきました。冷房のない建物ばかりですので、外気が30度をこすと建物のなかにいられなくなります。唯一の対処策としては、ブラインドを閉めて薄暗くすることしかありません。これは効きます。
今日は、朝からガファレル論集の編集作業です。レフェリーからのリポートが帰ってきて、それを寄稿者に送ったりして、3本分について作業しました。寄稿者に2週間ほど時間を与えて、最終版を送ってもらいます。寄稿者の一人であるシルヴィは、家の工事で2週間ほどパソコンが使えないというので、それが終わるまで待ちます。そのあいだに、エリザベトにもシルヴィの仏語をチェックしてもらうつもりです。
2014. 6. 8 日
大陸と英国は1時間ずれているので、小さな時差ボケで朝早く起きます。今日も、今日は14時の電車でロンドンを発ちます。コージ君の家の近くのタパス屋で軽く食事をしてから新幹線の駅に向かいました。なかなか充実した24時間でした。いろいろ感謝です。
さあ、これから1か月は、7月の集中講義の準備に専念したいと思います。
2014. 6. 7 土
今日はお昼にロンドンに出て、14時に在ロンドンのコージ君と合流します。楽しみです。
今回の会議をふり返ると、30分の発表4本の後に質疑という特異な形式は、ちょっと辛かったと思います。話題の異なる発表を休みなしで2時間聞いた後に、議論というのはどうも緊張感に欠け、焦点もぼやけ、ダラダラしたものとなりました。20分プラス10分、あるいは30分プラス15分の形式で質疑があった方が良かったと思います。まとめる場合でも、多くても3本の発表で合計して1時間から1時間半のあとに質疑というのが限界でしょう。主催したのが経験の浅い博論生だったのは分かりますが、アドヴァイザー的な人が脇をしっかりと固めるべきでした。僕は、ダレルをコメンテーター的に呼ぶことを提案していたのですが、それは採用されませんでした。彼がいれば、もっと議論も意義ぶかいものになったと思います。
13時に待ち合わせ場所に着いたのですが、外の天気は良くなかったので、駅のベンチで1時間ほど待ちました。14時ちょうどにコージ君が現れてから、夜中の零時すぎまで休む間もなく、いろいろな話をしました。これは、かなり話し込みましたね。
2014. 6. 6 金
今日は国際会議の本番です。大陸と1時間ほど時差があるので、なんだか微妙にカラダの感覚がずれています。7時に起きたのですが、英国では6時です。なんだか早すぎます。これでは一日もたないかもしれないですね。気をつけなくては。10時に迎えのタクシーが来るそうですので、9時半にロビーに降りて待っています。
5人でヴァン型のタクシーに相乗りして、ウォリック大学に到着しました。40分ほど出迎えのコーヒー・タイムとして、いろいろな人と会話をしたあと、11時からワークショップがはじまりました。最初の発表は、チャールズ(バーネット)氏です。プログラムではルネサンス期におけるアブー・マーシャルの受容についての話だったはずですが、12世紀の翻訳者カリンティアのヘルマンの話となりました。大丈夫かな。
2番目の僕の発表のつぎは、『ブリル版必携ルネサンス占星術』の編者であるブレンダン(ドゥーリー)の話でした。編者として何回かメールでやりとりしましたが、実際に会うのはこれが初めてです。アメリカ人で、ドイツやイギリスのあとアイルランドで教えているようです。60代でしょうか。ハンキンスと同年代で、友人のようです。じつは、この論集のアイデアは10年以上も温めていたもののようです。
午前の最後は、ジャコミアン(プリンス)の発表です。どうやら、彼女はイ・タッチのシリーズのためにフィチーノの『ティマイオス』注解を準備しているようです。もうすぐ出版されるとか。楽しみですね。> いつも思うのですが、彼女のアクセントは強すぎて、よく分かりにくかったです。慣れるまでのまだ時間がかかりそうな気がします。
午後の最初は、ドイツで博論を終えたばかりのアンドレアス(レルヒ)による発表で、偽プトレマイオスの『センテロキウム』の受容についてです。ルネサンス期に一番多く版を重ねたベストセラーの占星術書といえます。そのあとは、ザグレブのイヴァナとつづき、パドヴァで学んだクロアチア人医師の著作の分析でした。まだ英語での発表は慣れてないのでしょう、モノトーン過ぎて辛かった。
最後に元気なダリオの発表で締めでした。バルセロナでも聞いた話で、まだ結論は模索中ですが、だんだん出来あがってきたような気がします。16世紀後半のヴェネツィアにおけるペストの流行と水星の出現との絡みでパンフレット文献を見ていくものです。来年はサバティカルなので、本の執筆に集中するとのことで、楽しみです。
2014. 6. 5 木
今日から英国遠征です。日曜の夜に帰ってきます。そのあいだネットへの接続は制限されると思われます。10時発の電車でブリュッセルに向かい、11時に到着。英国行のユーロスターは13時に出ます。2時間でロンドンに到着。今は早くなりましたが、英国側はトンネルばかりで車窓は楽しくありません。10分ほど歩いて、ロンドン時代に通いつめたユーストン駅へ。そこから初めてヴァージン鉄道にのってコヴェントリ―という町まで1時間。駅で指定されたようにタクシーに乗り、18ポンド払って宿舎に到着しました。なにもない森を抜けたところに広がるのは、シェクスピアばりの古城と16世紀風の建物ばかりのすごい場所です。ここは、なんなのでしょう!
科研費プロジェクト『キリシタンの世紀』を中心とした活動により、学習院に関連する記述も多くなってきましたので、それらをまとめるコーナーをつくりました。題して、BH@学習院です。
この新しいマシンにしてから、じつは仏語、独語、伊語のチェッカーが入っていません。自分自身は、最近は英語でしか書かないので問題はなかったのですが、編集中のガファレル論集の作業でポカをしました。複雑な問題にいたらないことを祈ります。
2014. 6. 4 水
明日から日曜まで、英国に行ってきます。久しぶりです。ウォリック大学のルネサンス研究所で行われる占星術についてのワークショップです。しかし、なんだかプログラムを見てみると、2時間半ほど休みなしで続けるのではないか?という悪い予感がするのですよね。
ヨシ君は去年会ったときに、初期近代の終末論に興味があるといっていましたが、ぜひともアイデアに終わらせずに研究を進めて欲しいと思います。期待しています。
7月の国際シンポジウムのためのポスターの原案がきました。クレアの会心の出来です。細かい表記などの最終確認をしてから、印刷所に回します。今回は、たんに会場のまわりに貼ったり、国内に配ったりするだけではなく、ハヴァードやケンブリッジ、オックスフォード、ウォーバーグなど世界の名だたる研究所に、このポスターを送って掲示してもらうという計画を持っています。おそらく、このようなことを実行した人々は日本にいなかったと思うのですよね。
2014. 6. 3 火
来年3月にベルリンで行われるルネサンス学会に、パネル「変成、消化、想像」 Transmutation,
Digestion and Imagination の企画を提出しました。錬金術における変成という概念と、生命との関係を探ります。審査の結果を待ちます。男女3名ずつ6人の発表者がいて、あつかうテーマのおおよその年代順に並べてみました。後半が3人とも今回が初めての参加なので少し心配ですが、それなりに僕も過去にRSAに貢献してきたので、その点を勘案してくれるでしょう。
Session 1:
Joel Klein, Daniel Sennert, Transmutation,
and the Catholicum Libavianum
Elisabeth Moreau, Libavius
on Digestion and Transmutation
Hiro Hirai, Imagination, Maternal Desire
and Embryology in Thomas Fienus
Session 2:
Didier Kahn, Early Modern Experiments on Palingenesis
Jo Hedesan,
Genesis and Transmutation: The Religious Background of the Universal Solvent
Alkahest
Ashely Inglehart,
Robert Boyle on Semina, Transmutation, and the Generation of Life
このなかには、2名の博論生も入っています。やはり、博論を書いているときから海外の会議に発表しにいくところは、言語的に有利だということを差し引いても、学問にたいするスピリットと基礎体力の違いを感じますね。このギャップが埋まらないかぎりは、真の意味での国際化というのは難しいかなというのが僕の正直な気持ちです。
2014. 6. 2 月
ガファレル論集の出版に向けて、20万円ほど出版助成を調達しないといけません。一口で3千円から寄付を募ります。本はゲマ論集と同様にローマのセラ書店から出版されます。お名前は本に印刷(匿名も可能)され、出版された本を一冊進呈いたします。ご希望があれば、サインもつけます。知のプロダクトを世界に発信する作業に賛同者を募ります!> ちなみに、本はおそらく定価30ユーロ前後でしょうから、イタリアからの送料などを含めても、円安のいま3千円というのはまったく損のない数字だと思います。
パリの
C さんが、430ユーロを出してくれました。これは大きい。
K
君が1万円を寄付してくれました。真の学問にたいする愛があります。
大阪の
K 君が200ドルを寄付してくれました。これまた、学問への愛ですね。感謝。
N
さんが30ドルを寄付してくれました。感謝です。
2014. 6. 1 日
今週の作業でガファレル論集の作業はおおいに進展し、年内に出版できるかなと思っています。ただし、来週のウォリックでの占星術についての会議から帰ってきたら、短めでもいいので論集のイントロを書かないといけません。
このガファレル論集は、2009年にフラッドとガッサンディの論争についてのシルヴィによる長大な論文の編集をジェルマーナの雑誌のために手伝ったことをきっかけに着想し、寄稿者を選別してコンタクトをとり、寄稿をしてもらいました。比較的にすぐに原稿をよこしてくれた人もいれば、ピーターのように病気でなかなか原稿が来なかった人もいます。結局のところ口約束だけで音沙汰のなかった人もいれば、最後の最後に飛び入り的に入ってきたものもあります。全体像が見えてきて、編集をはじめようかとした矢先に、去年はケガをして1年ほどさらに作業が遅れてしまいました。最初のころに寄稿してくれた人々からは、再三の催促をもらい苦労しました。編集作業は集中的にこなせば1週間でできたわけですが、それは後から見てみればということで、途中では何とも先も見えず、なかなかに難産だったわけです。
明日からは、気分を転換して発表原稿をつくらないといけません。基本的には星辰医学の論文の要点を20分にまとめるだけなので、それほど大変ではないとかなとは思っています。