BH@学習院
学習院女子大学の根占献一先生が代表をつとめる科研費プロジェクト『キリシタンの世紀』の海外研究協力員となり、
2013年の夏に1か月ほど学習院女子大学で招聘研究員をつとめました。その後にもいろいろ学習院女子と
関連ある活動をおこなってきました。それらをまとめておく頁をつくります。
2013年
2013年4月から2016年3月までの3年間の予定で、文部省の科学研究費『西欧ルネサンスの世界性と日本におけるキリシタンの世紀』 (基盤B、代表者・根占献一、1250万円)の研究プロジェクトがスタートしました。学習院女子大学に本部をおく、日本におけるルネサンス学の国際化を進める大型プロジェクトであり、僕も計画の構想段階からアドヴァイザーとして深く関与しています。国際的な学術界における学習院女子大学のプレゼンスを強調することを、念頭においた計画となっています。
同時に、根占先生を会長とし、僕が事務局をつとめる新しい学会 Japanese Association for Renaissance Studies (JARS) を設立し、その本部を学習院女子大学におくこととしました。これにより、米国ハーヴァード大学のルネサンス研究所をはじめとする世界のルネサンス学関係の研究機関の多くが所属するルネサンス学会(RSA)において、学習院女子大学の存在がひろく知られることとなりました。
つづいて2013年7月15日か8月21日まで、学習院女子大学の国際コミュニケーション学科の客員研究員として迎えていただくこととなりました。同時に応募した法人学習院の招聘賞を受賞し、渡航費と宿泊費を負担していただきました。
この滞在期間中の7月18日に、国際コミュニケーション学科の特別授業の枠内で、「ルネサンスの科学と魔術:マルシリオ・フィチーノの役割と影響について」という一般に開かれた講演を行いました。学習院女子大学のたくさんの学生さんに聴講していただき、その熱心さに驚かされました。また、学外からも、立教大学の歴史学の小澤実准教授のゼミ生一堂をはじめとする多くの人々が来聴されました。
7月22日に行われたもう一つの特別授業では、国際コミュニケーション学科の根占ゼミに所属する学生の皆さんに、イタリア文化と学術世界、そして世界における近年のイタリア学の広がりについて僕の海外での研究生活の経験を基礎にした授業をおこないました。こちらは、ゼミ生だけのものでしたが、学生たちの真剣さに感銘をうけました。
この招聘期間中のもう一つの山場は、7月20日に学習院女子大学で行われた第1回目の国際シンポジウム「西欧ルネサンスとキリシタンの世紀」の開催と運営でした。日本をふくめた4か国から8人の国際的な活動を広げる研究者が一堂に会したもので、延べにして70名の学内外からの聴講者を集め、熱心な議論が展開されました。すべてを英語で行ったことも、国際コミュニケーション学科との連携企画として画期的なことだったのではないかと思います。
この招聘制度のなかで行われた様々な授業や学術イベントは、研究者としてだけではなく、じかに学生たちと授業をとおして交流することで教育者として個人的にも学ぶところの大きい経験でした。このような機会を与えていただいた、法人学習院の招聘制度に深く感謝しています。
2013年末の一時帰国時には、12月23日に科研費プロジェクトの枠内で年末研究会「ルネサンスの知のコスモス:都市、人間、自然」を学習院女子大学で開催し、先進的な研究発表がなされました。夏期招聘期間を中心とした研究にもとづく僕の発表も、5本の報告のなかに含まれています。こうした活動をつうじ、学習院女子大学との結びつき、そして同学の国内・国外での評価に貢献できたことは個人的にも嬉しいことでした。
夏期招聘期間中の研究と12月23日の年末研究会での発表の成果を、論文「ルネサンスの星辰医学:占星術の変容から普遍医薬の探究まで」として『学習院女子大学紀要』第16巻(2014年)に掲載しました。国内の多くの専門家から高く評価されたことは、嬉しいかぎりです。この20年間、英語、仏語、伊語をとおして海外での著作の出版と学術雑誌での研究論文の発表を中心とした活動を行ってきた自分としては、2002年の岩波書店の雑誌『思想』に掲載した論文以来の邦語でのまとまった作品となりました。発表の場を与えてくれた『学習院女子紀要』に、深く感謝しています。
2014年
昨年同様、2014年の7月14日から8月30日まで、学習院女子大学の国際コミュニケーション学科の客員研究員となり、根占教授と共同研究「キリシタンン世紀におけるアリストテレス主義の諸問題」を遂行することとなりました。
また、7月19−20日には第2回の国際シンポジウム「アリストテレス主義伝統とキリシタンの世紀」を開催する予定で、現在その準備を行っています。今回は日本を含めた4カ国から12人の研究者による発表が予定されています。前年の経験を活かしつつ、より大きな規模で国際シンポジウムを学習院女子大学で行えることは、同学の国際的なプレゼンスをさらに高めることに大きく貢献し、国内における評価もさらに高めることでしょう。
招聘期間中は、根占教授と週一回の割合で定例の研究会を学習院女子大学で行うことを予定しています。日本各地から、賛同者が参加される予定です。
以下は、7月の国際シンポジウムのポスター原案です。これを国内だけではなく海外のルネサンス学の主要な研究所に配布します。学習院女子大学の名前が世界各地に掲示されることは、同学の国際的な知名度を上げることにも貢献することでしょう。