自然魔術とカバラ
その4
『ライプニッツとカバラ』
Allison P. Coudert,
Leibniz and the Kabbalah.
[International Archives of the History of Ideas, 142]
Kluwer,
Dordrecht, 1995.
218pp. +Index ISBN 0-7923-3114-1 Price
**** Fl (**Euro)
著者は、イェーツとウォーカーの指導の下でワールブルグで勉強したという人で、1980年出版の『錬金術』と言う著作の評判はあまり良くありませんが、その後、キリスト教カバラ主義者の研究でメキメキと頭角を現してきました。特に、最近出版された、ファン・ヘルモントの息子でキリスト教カバラ主義者のフランシス・メルクリウスのことを研究した博士論文『17世紀におけるカバラのインパクト:フランシス・メルクリウス・ファン・ヘルモントの生涯と思想』(1999年)は圧巻です。この人物は、晩年のライプニッツと友好を深め、特にライプニッツの後期哲学の形成に大きく影響を与えたと考えられています。本書は特にこの二人の関係をつぶさに追ったもので、今までの伝統的なライプニッツ研究には無かった、そして、そういう硬直した伝統にはなかなか受け入れられにくいであろう、刺激的なテーマを扱っています。ライプニッツの後期の地球論と聖書(特に『創世記』)解釈の関係なども絡めて、非常にユニークで興味深い研究です。レディ・コーンウェイなどもふんだんに登場するので、17世紀後半の英国のケンブリッジ・プラトニズム(モアやカドワース)などに関心ある人にもお薦めです。もちろん、ジョン・ロック、ニュートンやボイル等の自然哲学者に興味のある人にも有効だと思います。なお、著者は近代の懐疑主義やヨーロッパにおけるユダヤ思想の権威である
R.H.Popkin 氏に認められていて、氏の企画した論集『ライプニッツ、神秘主義そして宗教』(1998年)にも参加しています。
本書で特に注目すべきなのは、ライプニッツの後期哲学の目玉である「モナド」の理論の典拠がファン・ヘルモント(息子)がライプニッツに伝授したもともとはファン・ヘルモント(父)の化学哲学の中の「種子の理論」にまつわるアイデアであるということです。こうなってくると僕がフィッチーノからファン・ヘルモント(父)やガッサンディまで研究した「ルネサンスの種子の理論」は、ライプニッツのモナドロジー(モナドの哲学)の源泉を与え説明するものとなってくるのです。
Introduction
p. 1-
イントロダクション
1. A Brief Historiography of Leibniz Studies
p. 15-
ライプニッツ研究の伝統の歴史学的考察
2. Van Helmont, Leibniz, and the Kabbalah
p. 25-
ファン・ヘルモント、ライプニッツ、そしてカバラ
3. Leibniz and van Helmont : Their Friendship
and Collaboration p. 35-
ライプニッツとファン・ヘルモント:彼らの友好と共同作業
4. The Kabbalah and Monads
p. 78-
カバラとモナド
5. The Kabbalah and Freedom and Determinism
p. 99-
カバラと自由、そして決定論
6. The Kabbalah and Leibniz's Thodicy
p. 112-
カバラとライプニッツの『弁神論』
7. Causation, Language, and the Kabbalah
p. 136-
原因性、言語、そしてカバラ
Conclusion p. 155-
結論
Notes p. 158-
脚注
Bibliography p. 203-
参考文献
Index p. 213-
索引
*** Allison P. Coudert Selected Bibliography ***
1975. "A Cambridge Platonist's Kabbalist Nightmre." Journal of
the History
of Ideas, 35, (1975), pp. 633-652.
1980. Alchemy : The Philosopher's Stone. Wildwood, London, 1980.
1992. "Henry More, the Kabbalah, and the Quakers." in R. Kroll
et al. (eds. ),
Philosophy, Science and Religion in England (1640-1700). Cambridge
U.P. Cambridge.
1994. "The Kabbalah denudata : Converting Jews or Seducing Christinans
?"
in R.H.Popokin & G. M. Weiner (eds.), Christian Jews and Jewish
Christians : From the Renaissance to the Enlightenment. Kluwer,
Drdorecht. pp. 73-96.
1995. Leibniz and the Kabbalah. (Archives internationales d’histoire
des
idees, 142), Kluwer, Dordrecht.
1998. "Leibniz and the Kabbalah." in Allison P. Coudert, R.H.Popkin
&
Gordon M. Weiner (ed. ), Leibniz, Mysticism and Religion. Kluwer,
Dordorecht, 1998. pp. 47-83.
1998. "Leibniz, Locke, Newton and the Kabbalah." in J. Dan (ed.
), The
Christian Kabbalah. Houghton Library, Cambridge,
1999. The Impact of the Kabbalah in the Seventeenth Century
: The Life and
Thought
of Francis Mercury van Helmont (1614-1698). Brill, Leiden.
自然魔術とカバラ
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