自然魔術とカバラ
その2
『ルネサンスのキリスト教的カバラ主義者』
Francois Secret,
Les kabbalistes chretiens de la Renaissance.
Dunod, Paris, 1964. 第2増補版 Arche, Milano, 1985.
pp.395 +Index ISBN Price : **** Lire
これは、基本中の基本文献です。フランシス・イェーツの『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス主義の伝統』(1964年)と同年の出版です。キリスト教カバラ主義者については、これ以前にも、ブラウ著
『ルネサンスにおけるカバラのキリスト教的解釈』 (M.J.L.Blau, The Christian
Interpretation of the Cabala in the Renaissance. N.Y. , 1944.)というものがありますが、これはそれをはるかに上回っています。(この著作者については、もう1つの近作『ヘルメス主義とカバラ』(1992年)についての解説も参照してください。)
この分野においては、本邦でも既にゲオルグ・ショーレムの2つの重要な著作『ユダヤ神秘主義』(1941年>1985年邦訳)と『カバラとその象徴的表現』(1965年>1985年邦訳)が出版されていますが、これらは、カバラの本家ユダヤ思想の流れについての研究で、ルネサンス期に大流行したキリスト教徒の側面を総合的に追ったものではありませんでした。このギャップを埋めるのに必要なのは、ここで紹介する本書から始まった研究伝統なのです。そう言った意味で、本書は大変重要です。幾つかの点をこれまで批判されたところは、第2版でフォローされています。残念ながら、僕の手元にあるのは初版の方で、ここはそれを紹介します。
ちなみに、これは取っておきの情報なのですが、ルネサンス期フランスでのカバラを果敢に取りこもうとした文学的な錬金術の著作群は、ギヨーム・ポステルの伝統から生まれてきているもので、有名な中世の伝説的錬金術師とされるニコラ・フラメルの伝説を作り出した著作『象形寓意図の書』(1992年邦訳)もこの学派に属するベロアルド・ド・ヴェルヴィルの手になるのでは?と言うところまで現在の研究は進んでいます。
1. Les "ancetres" de la kabbale chretienne
p. 1-
キリスト教カバラの先祖
2. Les debuts de la kabbale chretienne en
Espagne p. 8-
スペインにおけるキリスト教カバラの始まり
3. Pic de la Mirandole et le milieu italien
de la kabbale chretienne
p. 24-
ピッコ・デッラ・ミランドーラとキリスト教カバラのイタリア・コネクション
4. Jean Reuchlin p. 44-
ヨハネス・ロイヒリン
5. L'age d'or de la kabbale chretienne en
Italie : L. Lazzarelli, M. Ficin,
Leon Hebeu, Augustinus Ricius,
Paulus Ricius, Augustinus
Giustinianus et Petrus Galatinus,
Gilles de Viterbe, Theseus
Ambrosius, J.A.Widmanstadius,
Franciscus Georgius Venetus.
p. 73-
イタリアにおけるキリスト教カバラの黄金期
: ラザレッリ、フィッチーノ、
ジュスティアーニとピエトロ・ガラティニ、ヴィテルブのジュリオ、テェゼウス
アンブロシウス、ウィドマンスタッド、ヴェニスのフランチェスコ・ジョルジ
6. Le developpement de la kabbale chretienne
en Allemagne p. 141-
ドイツにおけるキリスト教カバラの発展
7. La kabbale chretienne en France : J.Thenaud,
H.C.Agrippa, Paul
Paradis, Jean Cheradame,
Guillaume Postel, L'ecole de G.Postel :
Jean Boulaese, Guy et Nicolas
Le Fevre de la Boderie, Blaise de
Vigenere
p. 151-
フランスにおけるキリスト教カバラ
: テノー、アグリッパ、ポール・
パラディ、シェラダム、ギヨーム・ポステル、ポステル学派
(ジャン・
ブラーズ、ギーとニコラ・ルフェーヴル・ドゥ・ラ・ボードリー、ブレーズ・
ドゥ・ヴィジェネール
8. La kabbale chretienne en Espagne
p. 218-
スペインにおけるキリスト教カバラ
9. La kabbale chretienne en Angleterre
p. 229-
イギリスにおけるキリスト教カバラ
10. La kabbale chretienne et les reactions religieuses
: les convertis,
les catholiques, les reformes
p. 239-
キリスト教カバラと宗教界の反応
: 改宗者、カトリック、改革派
11. Kabbale chretienne et philosophie occulte
p. 288-
キリスト教カバラとオカルト哲学
12. La mode de la kabbale chretienne et le symbolisme
p. 306-
キリスト教カバラの流行とシンボリズム
13. La kabbale chretienne dans la premiere moitie du XVIIe
siecle.
p. 323-
17世紀前半におけるキリスト教カバラ
Conclusion p. 358
まとめ
Index des noms propres p. 363-
人名索引
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