New Paracelsus Lounge
パラケルスス研究のラウンジ
その4
最近の研究動向
4
イタリア語圏
Paracelsica Italiana
伝統的には、それほどパラケルススに関する学術研究の分野での目立った貢献があったわけではありませんが、その状況も1980年代後半から大きく変わってきています。ドイツ中心主義に人は、ご用心を!パラケルスス研究も、ドイツ語だけできれば良いという時代はとっくに終わっています。
Julius Paulus のパラケルスス文献表(1996年)に記録されているイタリアにおけるパラケルススの著作の翻訳活動は、以下のようになります。
1. 『著作選集』
Scritti scelti. Milano,
1943.
2. 『パラグラヌム』
Paragnano. tr. Ferruccio
Massini, Torino, 1961.
パラ3部作の2番目。これは比較的早く翻訳されたのですね。
3. 『究極の魔術の教えに関する七書』
I sette libri dei supremi
insegnamenti magici. Roma, 1970. Roma, 1982.
1658年のラテン語版著作集からの翻訳
4. 『倫理的・政治的著作』
Scritti etico-politici.
tr. Nicolao Merker, Laterza, Bari, 1971.
5. 『パラグラヌム』
Paragrano. tr. Ferruccio
Massini, Laterza, Bari, 1973. Bari, 1984.
1961年の翻訳がポケット文庫に納め直されたものです。
6. 『惑星、ホロスコープ、まじない、薬』
Pianeti, oroscopi, scongiuri
e medicina. Napoli, 1974.
完全なエソテリスム趣味の偽パラケルスス文書からの翻訳です。
7. 『錬金術-魔術的著作 : 『妖精論』、『賢者の天』、『オカルト哲学』、
『賢者の石の処方』、『自然学者のチンキ』 』
Scritti alchemici emagici.
Trattato delle ninse, silsidi, pigmei, salamandre ed
altri esseri. Il cielo dei fiosofi, Sulla filosofia occulta. Manuale della
pietra
dei filosofi. La tintura dei fisici. Prefazione e note di Rene Schwaebe,
Genova, 1981.
エソテリスム趣味の偽パラケルスス文書からメインに集められた著作集。
8. 『惑える医師たちの迷宮』
Il labirinto dei medici.
Genova, 1982.
パラケルスス後期の医学思想を知る上で重要な正真の著作です。
9. 『事物の三原質の書』
Trattato delle tre prime
essenze delle quali e composito. Genova, 1986.
これは、フランス語や英語にも翻訳されています。
10. 『事物の本性に関する9書』
I nove libri sulla natura
delle cose. Genova, 1988.
偽か?と疑われていますが影響の大きかった著作です。
11. 『パラグラヌム』
Paragrano. Milano, 1989.
上記の Ferruccio Massini
訳との異同については不明です。
12. 『反・偽医師の書、七つの自己弁明』
Contro i falsi medici. Sette
autodifese. tr. M.L.Banchi, Laterza, Roma, 1995.
ここに来て、パラケルススのドイツ語が読める人の翻訳が出てきました。
ちなみに、以上の12の書物の中で、M. L. Bianchi 氏は、1、4、5,12しかカウントしていません。それ以外のものは、やはりエソテリスム趣味の偽パラケルスス文書に過ぎないからだと思います。従って、パラケルススの思想を知る上で大事な著作の中では、『パラグラヌム』と
『惑える医師たちの迷宮』、そして『七つの自己弁明』が、イタリア語圏の読者に特に与えられていると言えるでしょう。
パラケルススを扱った総合的な著作は、60年代から見れば、以下のようになります。
1.『パラケルスス、医師そしてマグス』
Francesco Parenti et al. , Paracelso medico e mago. Milano,
1962. 136pp.
2.『パラケルスス』
Segio Balossi, Paracelso. Pisa, 1966. 135pp.
3.『パラケルスス』
Gianfranco Draghi, Paracelso. Milano, 1967.
25pp.
4.『パラケルスス、一現象』
Robert-Henri Blaser, Il fenomeno Paracelso.
Ferrara, 1963. 37pp.
5.『パラケルスス、医師そしてマグス』
Antonio Miotto, Paracelso, il medico e mago.
Milano, 1971. 248pp.
(= 『パラケルスス、妖術師的医師』 Paracelso,
il medico stregone. Genova,
1988. 197pp.)
6.『パラケルスス、錬金術師、医師、マグス』
Pacisico Manolino, Paracelso : Alchimista, medico,
mago. Torino, 1974.
189pp.
7.『パラケルススの魔術的世界』
Franz Hartmann, Il mondo magico di Paracelso.
Roma, 1982 / 1987. 239pp.
8.『パラケルスス、伝記』
Giovanni Riva, Paracelso : Biografia essenziale.
Scandiano, 1986. 39pp.
9.『我、パラケルスス : 想像的自叙伝の分析』
Francesco Parenti et al. , Io, Paracelso : Analisi
di una autobiografia
immaginaria. Ravenna, 1988. 151pp.
10.『表現とイメージ : パラケルスス入門』
Giancarlo Zanier, L'espressione e l'immagine:Introduzione
a Paracelso.
Trieste, 1988. 102pp.
11.『パラケルスス』
Walter Pagel, Paracelso. Milano, 1989.
12.『パラケルスス : 医学の革命家』
Palmirani et al. , Paracelso : Un rivoluzionario
della medicina. Milano,
1993.
13.『パラケルスス入門』
Massimo Luigi Bianchi, Introduzione a Paracelso.
Roma, 1995. 176pp.
以上の作品が記録されていますが、mago と付くのは、みな売りのための文句でありエソテリスム趣味の文献です。比較的に大部の
Franz Hartmann の著作は、1980年にドイツで出されたヘルメス主義的オカルト思想の業書の一つです。本当の意味で学術的な動きは、ルネサンス期のオカルト思想の学術的歴史の研究家である
G.ザニエ氏の著作から始まります。といっても100ページ余りの小品です。次に重要なのは、パーゲルの『パラケルスス』の翻訳でしょう。フランスが1963年でしたから、26年遅れで紹介されたことになります。そして、今現在一番活発にパラケルススの研究で論文を発表しつづけているのが、M.
L. ビアンキ氏です。また、同氏は、イタリアで今まで最も読まれているパラケルススの著作『パラグラヌム』の
Sudhoff のドイツ語版のコンピュ−タ解析による詳細なインデックス Lessico
del Paragranum di Theophrast von Hohenheim detto Paracelsus - I :
Indici. (Lessico intellettuale europeo, 47), Ateneo, Rome, 1988 も出しています。
以上のような流れを踏まえた上で考慮した時、ある意味でイタリアにおけるパラケルスス研究の一大分岐点となったのは、1993年12月にローマのゲーテ学院(Goethe
Institut)で行われたイタリア及びドイツの精鋭研究者を一堂に集めた記念すべきパラケルスス国際シンポジウムです。その模様は、論集として出版されました。
*Istituto Paracelso (ed.), Atti del convegno internazionale
su Paracelso: Un esame critico del pensiero di Paracelso collocato nella
sua dimensione storica. Edizioni Paracelso, Roma, 1994. 「補足」
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