サマーセミナーの各講義の内容紹介です
 


Professor Dr. Ian Maclean (Oxford)
- The University of Padua (8/1)
 16世紀のパドヴァ大学医学部の状況について、歴史的背景、主な登場人物、講義、出版物、学生数、博士号獲得数、近隣大学との関係等パドヴァに関するありとあらゆるテーマが概説されました。皆さんの質問も鋭いものが多く、若手と言ってもレヴェルは高いですね。ただ、どういうアウトプットをこれから数年にかけて出してくるかは、別問題です。大学制度史的な側面が強いので、僕はむしろ聞く事に集中しています。
     
- Semiology (8/2)
 病気の兆候を知るために「症候」 Symptoms を「記号」 Signature として読み取る理論が、16世紀には発達します。Semiology とは、そういった病気に関する記号の読み方の学問だそうです。知りませんでした、というか Maclean 教授が医学史家としては始めて提唱しているというのが実情です。ガレノスの病気記号論が元となっていて、記号と言っても、現代の「記号論」とは全く関係ありません。また、もうちょっとルネサンスを勉強している人は、パラケルスス派の「徴」 Signature の理論を思い浮かべるかもしれませんが、それともかなり異なる知の体系です。現代の医学で言うところの「症候」に関する知識の体系だと思って下さい。
 
     
Dr. David Lines (Munich)
- The Institutional Context of the Teaching of Natural Philosophy and Medicine in Italian Universities of the Renaissance, woth Special Reference to Padua
 Maclean 教授の授業に続いて、Lines 氏が16世紀のパドヴァ大学医学部の状況を探るために制作しているデータ・ベースのデモンストレーションとその分析がありました。主にどんな講義と地位、そして給料の統計です。
   

Professor Dr. Vivian Nutton (London)
- Ferrara and Medical Humanism (8/3)
 まず、16世紀のフェラーラ大学での医学部のようすを Nicolo Lioniceno の業績を中心に新たに興ったギリシア医学の人文主義的運動を描きました。なかなかハッキリとした声で講義をするエネルギッシュな人でした。
  
- Renaissance Anatomy (8/4)
 ヴェザリウスの業績をしっかりとした人文主義ギリシア医学復興運動の文脈に載せて描く、なかなか素晴らしい講義でした。
  

Professor Dr. Nancy Siraisi (New York)
- The University of Bologna (8/7)
   16世紀のボローニャ大学とその医学部の状況について説明する講義でした。明日の方が楽しみです。シライシ氏は、旦那さんが日本人のれっきとしたアメリカ人で、Oh dear!を連発するする人です。ラテン中世・ルネサンス医学史研究のアメリカでの世界最高峰の人です。
  
- Fernel, Argenterio, Cardano: three mid-century medical 'heretics' (8/8)
  いや、まさに、この日の議論に、大参加しました。というより、何かにつけて僕の意見が求められたというのが実際です。シライシ氏をさておいてと言う感じでちょっと気が引けましたが、ま、良かったです。講義自体は、どちらかと言うと、僕の得意なテーマなので、それほど新しい知見が得られたと言うものではありませんでした。
 

Dr. Gillian Lewis (Oxford)
- The Medical University of Montpellier in the Sixteenth Century: a Fresh Look at the Evidence (8/10)
  南仏にあるモンペリエ Montpellier 大学は、パリ大学医学部と並んで16世紀のフランスの医学教育の一大中心地でした。今日から2回にわたってこのモンペリエでの医学の状況についてがセミナーのテーマです。Gillian Lewis 博士は比較的無名の女性の研究者で、講義内容もそれまでの人達に比べそれほど優れているとは感じませんでした。
 
- Materia Medica and Natural History in Montpellier: Questions of Intellectual Property (8/11)
  この日は、講義と言うよりも、16世紀の博物学関係の美しい大型本を沢山に動員してコメントを加えるというものでした。
 
 
Professor Dr. Heinz Schott (Bonn)
- Basel (8/14)
    16世紀のバーゼル大学医学部とパラケルススについて。あまり、詳しくなったという印象を受けました。
 
- Paracelsus und das Konzept der "natuerlichen Magie" (8/15)
    結局、パラケルスス著『パラグラヌム』からの抜粋を読みつつ註解を加えると言うもので、ドイツ語を解するパラケルスス学の初心者には良かったかもしれません。 
 

Dr. Sachiko Kusukawa (Cambridge)
-Varieties of Illustration in Sxteenth-Century Materia medica  (8/14) 15:00
    スライドを多用したルネサンス本草学におけるイラストの意義について
 
Prof Dr. Thomas Ruetten (Princeton)
- Hippokratismus 1530-1645 (8/17)
    ヒポクラテスの著作の中でも、特に『Oath』がいかに人文主義的医学に受け入れられたかについての講義でした。
- Helmstedt (Workshop) (8/18)
    16世紀後半に設立され19世紀の初めになくなってしまった典型的なプロテスタント主義的大学である Helmstedt 大学の医学部の状況についての軽い講義で、余り役に立たなかったと言うのが実情です。
 
 
PD Dr. Michael Stolberg (Muenchen)
- Medizin in Wittenberg (8/21)
- Gynaeologie (8/22)
 
Dr. Laurence Brockliss (Oxford)
- The University of Paris (8/24)
- Therapeutics: The Rediscovery of Balneology (8/25)
 
 

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