新刊案内
その2
ベルンハルト・ハーゲ著
『中世錬金術 : アイデアとイメージ、ゾシモスから
パラケルススまで』
Bernhard Dietrich Haage,
Alchemie im Mittelalter : Ideen und Bilder -
von Zosimos bis Paracelsus.
Artemis, Zurich, 1996. 284pp. 50 illust, +index, ISBN
3-7608-1123-x
遅ればせながらやっとのことで、話題の Haage 氏の中世錬金術の本を入手しました。最近出た
Figala 氏の錬金術辞典の基本文献表に入っていたので気になっていたのですが、ようやく見つけました。スイスのあまり聞かない出版社から出ているので、もしかしたら発行部数が少ないのかもしれないです。著者は、1970年代後半から活動している人のようですが、今まであまり聞いたことがありませんでした。内容の方は、錬金術の心理学・エソテリスム趣味的な研究方法を退ける、批判的歴史研究の
R.Halleux 学派の影響を強くうけた感覚で仕上げられています。W.R.
Newman の研究成果も既に吸収されています。中世錬金術にテーマを絞った数少ない研究書であり、ギリシア・アラブ・ラテンの錬金術の最新研究の成果を考慮に入れた、手ごろな通観書として、その価値は高いと思われます。一般読者にも専門家にも役に立つツールです。特に、「水銀-イオウ」の2原質の情報について詳しいです。近年邦訳された
Holmyard の『錬金術』とパースペクティヴの面では近いかもしれませんが、40年前のモノよりは、まず、こういった、最新文献にあたるべきでしょう。文献表・脚注はしっかりしていますので、各テーマごとに専門文献にさかのぼる糸口を容易に与えてくれる作りになっています。ドイツ語の堪能な方翻訳しませんか?もちろん僕がお手伝いします。
主な内容は、以下の通りです。
前書き Vorword p. 7-
中世錬金術の全体像
Mittelalterliche Alchemie im Ueberblick p. 9-62.
錬金術とは? Was ist Alchemie ?
化学 vs. 錬金術 Chemie versus Alchemie
錬金作業 Das alchemische Werk
錬金術の基本原理はアリストテレス自然哲学のなかに
Die Grundlagen der Alchemie vorwiegend in der Naturphilosophie des Aristoteles
元素理論 Die Elementenlehre
パラケルスス Paracelsus
パラケルスス以後 :錬金術とエソテリスム Nach Paracelsus
: Alchemie und Esoterik
錬金術の実践 Die alchemische Praxis
錬金術的イメージとシンボル Alchemische Bilder und
Zeichen
中世の科学体系中における錬金術の位置 Die Alchemie
im mittelalterlichen Wissenschaftsystem
錬金術の歴史概観 Geschichte der Alchemie im Ueberblick
錬金術文献 Alchemische Literatur
ヘレニズム期エジプトにおける西洋錬金術の始まり
Die Anfaenge abendlaendischer Alchemie im hellenistischen Aegypten
p. 63-108.
神秘と錬金術 Mysterium und Alchemie
初期錬金術の実践 Praxis der fruehen Alchemie
ヘルメス・トリスメギストス Hermes Trismegistos
パノポリスのゾシモス Zosimos von Panopolis
「ウロボロス」シンボルについて Das Ouroboros-Symbol
アレクサンドリアとビザンスにおける錬金術
Alexandrinische und byzantinische Alchemie p. 110-113.
アラビア錬金術
Arabische Alchemie p. 114-142.
ジャービルとゲベル文書 Dschabir und das Corpus Gabirianum
ラ-ゼス Rhazes
アヴィセンナ Avicenna
『哲学者の群れ』 Die Turba philosophorum
イブン・ウマイル Ibn Umail
ヨーロッパ中世における錬金術
Alchemie im europaeischen Mittelalter p. 143-200.
12世紀ルネサンスにおける錬金術 Alchemie in der Renaissance
des 12. Jahrhunderts
13世紀における錬金術 Alchemie im 13. Jahrhundert
ラテン・ゲベル Geber latinus
パラケルススとパラケルスス主義者 Paracelsus und die
Folgen
補足
Anhang
脚注 Anmerkungen p. 201-235.
一次文献表 Textausgaben p. 237-240.
二次文献表 Untersuchungen und Nachschlagewerke
p. 241-257.
事項索引 Sachregister p. 259-270.
固有名詞索引 Namenregister p. 271-284.
Critical Remarks! 脚注(全部で805個で量的にはまずまず)は後ろにまとめるより、各ページ下において欲しかったですね。詳細な事項索引はありがたい限りです。しかし、アレクサンドリアとビザンスにおける錬金術が4ページしかないのには驚きました。比率でいうと、「概観・エジプト・アラブ・ラテン
= 5・4・3・6」 と言うところです。14世紀と15世紀のラテン中世の秋の錬金術の成熟期が薄いのが特に残念です。
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