『天地創造の神の御業について』講読グループ
De opere Dei creationis
講読グループ形成の流れ
2001. 12. 11 火
夕方遅くにイタリアから書留便で荷が届きました。何と、半ばあきらめていた Helisaeus Röslin の『天地創造の神の御業について』 (De opere Dei creationis, Lecce, Conte, 2000) のラテン語原典 (Frankfurt, 1597年) のファクシミリ・リプリントです。コペルニクスやティコに次ぐ世界体系を表現している書として宇宙論史で近年話題になっていますが、実はこれデンマーク人パラケルスス主義者ペトルス・セヴェリヌスの強烈な影響を受けたパラケルスス主義的な宇宙論とコペルニクスのそれを融合させたという類まれなる奇書です。
2001. 12. 16 日
火曜日に届いた Roeslin
の『天地創造の神の御業について』 De opere Dei creationis (Frankfurt,
1597) は、それぞれ数行からなる124の命題で構成されている50頁ほどの短い論考です。旧約聖書のモーゼの『創世記』と16世紀のコスモロジー(コペルニクス・新プラトン主義・パラケルスス主義・カルヴァン派新教の入り混じったもの)のインタラクションを探るには非常に面白い本です。といっても、文面自体はそれほど難しい議論をしている訳ではありません。全て数行の断片ですから議論自体はこんがらがっていません。僕の本の準備と『ミクロコスモス』の作業が一段落して少し落ち着いたら、ネット上で講読出来ないかな?と思っています。伝統的な学問カテゴリーが上手く当てはまらない「オルタネイティブ」という感じの16世紀の不思議な知の世界が手づかみで体験できるのではないでしょうか?参加希望を募りましょう。どのくらいの人がやりたいと思うのでしょうか?基本的には、多様なバックグランドを持つ人達でワイワイ・ガヤガヤと出来れば良いのではと思っています。(初期近代の精神史&ラテン語の)初心者歓迎で行きましょう。
2001. 12. 17 月
昨日募集した De opere Dei creationis 講読グループの一番乗りは神戸の田辺さんです。5~10人居れば良いなと思っていますので、皆さんも締め切りになる前に臆せずどしどし参加してください。ラテン語&16世紀のメンタリティを勉強したい人にお勧めです。講読グループ用のプラット・フォームになる頁を作っておきましょう。これは、本当に勉強したい人のための空間です。
2001. 12. 18 火
恥ずかしい話ですが、講読の字は一部変換が間違ってました。すみません。九州に居る平岡君も講読参加だそうです。二番手です。
日榮さんも De opere Dei creationis 講読に関心ありとのことですが、ラテン語が分からないからどうしようか迷っているようです。氏以外でも、訳出したものがウェブに出るのかな?と思っている人が多いと思います。詳しいことは決めてませんでしたが、成果を『ミクロコスモス』2号以降に載せるなら、公開頁に載せることはないでしょう。おそらく参加者にだけ公開という感じになると思います。例のごとく、進み具合は逐一日記上で話題になるとは思います。「関心あるけれど受身で良いや」という人、ご注意を。今は、どのように進めるかといった詳しいことよりも、何人ぐらい参加希望者が居るのか?を知ろうとしている段階ですから。
はっきり言うと、個人的には「せっかくの機会だからもっと勉強してもらいたい」と思える人達は居るのです。でも、僕から直接に参加を促すというのもヘンですから、ラテン語や16世紀人達のメンタリティを勉強したい人の自発的な参加を待ちます。初心者歓迎ですから、臆せず、どうぞ。一緒に学びましょうというのが基本姿勢です。自分の読む順番が回ってきたら怖いと思っている人が居るかもしれないので言っておくと、順番回し読み方式は取らないつもりです。実際に取り組むコアなメンバー以外は、聞いてる(見てる)だけでも良いです。ご安心を。
イギリスの Leeds 大学で中世のアウグスティヌス修道会系の説教集について博論を書いている赤江君という人からコンタクトがありました。De opere Dei creationis 講読に参加したいとのこと。もちろん大歓迎です。ラテン語バリバリ全開の本格派 medievalist 登場でワクワクしております。参加者層の幅が広がりました。
2001. 12. 19 水
中世後期のフランシスコ会の終末論&錬金術に関心を持っておられる在ローマの大橋さんも De opere Dei creationis 講読に参加希望を出されました。これで5人です。かなりヴァラエティに富んだメンバー構成となってきました。もうちょっと人数が欲しいですね。特に16世紀関係者は居ませんか?
BHではいろんなことが話題になるので、多様な人に見ていただいてますが、人心を惑わすためにパラノイアになってあっちこっちにわざと話題を振っている訳ではありません。それらは微妙なバランスで有機的に絡まっていて、全体で一つの織物(テクスト)をなしています。しかし、人間とは不思議なもの。一見して、自分の関心があることとは遠いと思いこむと、実は非常に深い関係があったとしても、全く目を向けようともしなくなってしまいます。もちろん、何でも関心を持てば良いという訳ではありませんが、まさにこの「実は関係が深いのに一見関係なく見えるもの」を見過ごしてしまうことほど勿体ない事はありません。この辺のフィーリングの欠如は、研究者にとっては致命的です。
2001. 12. 20 木
「ノストラダムス研究室」の田窪さんも De opere Dei
creationis 講読に参加希望を出されました。これで6人です。16世紀のメンタリティに興味のある方は順調に増えてきてますが、自分の研究上もっとラテン語を学ばないといけない人たちの参加がまだまだ望まれます。BHメイト諸氏は、どうしたのかな?みんな妙に怖がっているのではないでしょうか?繰り返しますが、初心者歓迎ですよ。
2001. 12. 22 土
桑木野君も De opere Dei creationis 講読に参加希望です。待ってました。大歓迎。
2002. 01. 05 土
プラハ帰りの木村さんも De opere Dei creationis 講読に参加希望です。もともと、ラテン語をいつかは勉強しなくてはいけないと思いつつも、なかなか良い機会が得られなかったということです。大歓迎です。これで8名です。楽しく行きましょう。他の皆さんも、本当はラテン語の知識がなくてはいけないのに機会がなかったという方、お決まりの古典古代のキケロとかカエサルではなく本当の16世紀のテクストで勉強したいという方、絶好の機会を逃さないで下さい。
2002. 01. 09 水
De opere Dei
creationis 講読会、もうちょっと参加者が居た方が良いな?と思って、科学史MLと中世の自然学MLにお知らせを出しました。反応があるでしょうか?本家本元のヘルメス通信にも出しましょうね。それから、LHのE. Honma
さんも参加です。歓迎です。
みなさま ひらい@BHです。 BH (http://www.geocities.co.jp/Technopolis/9866/) 主催でのラテン語原典講読会を計画しています。 題材は
Helisaeus Röslin 著『天地創造の神の御業について』 De opere Dei creationis (Frankfurt:
Andreas Wechel, 1597) という小著で、それぞれが数行からなる124の命題で構成されています。旧約聖書の『創世記』に記された天地創造の過程を注解するために書かれたもので、コペルニクス型の天文学、パラケルスス主義宇宙論、プロテスタント神学の要素が入り混じっている不思議な書物です。初期近代 (15-17世紀) の Intellectual History 研究の文脈で近年注目を集めています。 対象は、16世紀の精神史 Intellectual History (思想史・文化史)に関心があってラテン語初級(意欲があれば、初めてでも構いません)であれば、誰でもOKです。ネット上で、大体3月くらいからスタートする予定です(その前に進め方やテクストのことなどに関して説明があります)。ま、気楽にワイワイと楽しくやれれば良いかなと思ってます。関心がある人は僕まで直接メールください。 平井 浩 Centre d’histoire des sciences, Université
de Liège |
2002. 01. 10
菊地原君も De opere Dei creationis 講読会に参加希望です。カゼをこじらせているみたいで心配です。
2002. 01. 13
これから講読会で読むDe opere Dei
creationis の巻頭にあるシンボル図版「世界のピタゴラス的紋章」を取り込みました。3層構造の典型的なキリスト教新プラトン主義世界観で、一者=最高善たる神からの流出と人間を中心に据える homocentrica
の概念を見せていますが、その周りを取り巻く自然界の構造には、水銀・硫黄・塩の三原質によるパラケルスス主義的な要素もしっかり現れています。本書には、これとは別にコペルニスクやティコの天文学を説明した図版などもありますが、それらは別の機会にしましょう。というより、それらをみるのは講読会参加者の特典にしましょう。
講読会で読む『天地創造の神の御業について』の著者 Helisaeus Röslin がどういう人物なのか少しフォローしておきましょう。アルザス出身のパラケルスス主義者で、『天地創造の神の御業について』はフランクフルトで1597年に出版されています。宇宙論史の文脈では、コペルニクス主義を議論していて、ジョルダーノ・ブルーノと共にティコとケプラーの間に入る人物として注目されています。『天地創造の神の御業について』は、ルドルフ2世の従兄弟で、ケルン大司教兼リェージュ司教・公国君主であったバーヴァリア家のエルネストに献呈されています。エルネストは、従兄弟である皇帝ルドルフと同じく錬金術・ヘルメス学に傾倒していて、最初のパラケルスス全集出版の財政支援をします。もちろん関心を共有するルドルフとも緊密な関係にありました。ルドルフやエルネストのような最新科学技術と文芸の保護者であったルネサンス末期の王侯君主の宮廷は、欧州の各地に生まれつつあった各種の学術アカデミーと共に、新しい知の形成には最も有効に作用したマトリクスであった訳です。
2002. 01. 14
早速、「ノス研」の田窪さんが画像ファイルを変換してくれましたので、900kb から一気に33 kb になりました。これならダウンロードも簡単でしょう。感謝です。昨日、重すぎて開けられなかった人、もう一度トライしてみてください。今度はすんなり行くはずです。さらに図像内の各要素について簡単な説明をつけました。
ラテン語MLその他各地で行われているラテン語テクストの講読会は、やっぱりキケロとかカエサルのお上品な古典ラテン文学ばかりみたいですね。しかも、世界の一流文献学者によって確立された校訂版をきれいな活字で印刷した現代のテクストを使っているのでしょう。でも、初期近代を研究する皆さん、実際16世紀の本を手に取る機会があれば分かりますが、ことはそう容易ではありません。初期活版印刷による書物のクセを身につけておかなくてはなりませぬ。そういう意味では、上級者の集まり16世紀研究会で読んでいるカルダーノと初級者のためにBHでこれから読む『天地創造の神の御業について』は、実際の16世紀の本のファクシミリ・リプリントを使うので、変形活字や省略形など実践的な訓練がつめること請け合いです。16世紀研究者で、ラテン語を課題として抱えていながら、こういう機会をみすみす逃す人の気が知れません。
2002. 01. 15
De opere Dei creationis 講読会に東外大の瀧谷君、ココデの山本さんと横井さんが参加されました。ベルリンの岩田君と札幌の望月さんも参加希望です。
2002. 01. 16
講読会テクスト『天地創造の神の御業について』の冒頭にあるシンボル図版「世界のピタゴラス的紋章」のインパクトは非常に大きいようです。いろいろな反響をもらってます。雑誌『アロマトピア』の編集長も講読会への参加希望を出されました。大歓迎です。みんなで楽しくやりましょう。3月スタート予定です。今、参加希望者は18名です。そろそろ打ち止めにしましょうか?
2002. 01. 17
3月から講読会で読む『天地創造の神の御業について』を書いた Helisaeus Röeslin についての少ないながらの基本文献を挙げておきます。
生涯について --- P. Diesner,
“Leben und Streben des elsässischen Arztes Helisaeus Röslin (1544-1616)”, Elsass-Lothringisches
Jahrbuch, 14 (1935), pp.115-141. --- P. Diesner,
“Der elsässische Arzt Dr. Helisaeus Röslin als Forscher und Publizist am
Vorabend des dreissigjährigen Krieges”, Jahrbuch der Elsass-Lothringischen
wissenschaftlichen Gesellschaft zu Strassburg, 11 (1938), pp.193-215. --- M. List,
“Helisaeus Röslin”, Schwäbische Lebensbilder, 3 (1948), pp.468-480. 宇宙論史 --- D. Tessicini,
“Bruno e Roeslin: sulla presenza della Theoria nova coelestium meteoron
del De immenso”, Bruniana & Campanelliana, 4 (1998),
pp.475-487. --- M. A. Granada,
El debate cosmológico en 1588: Bruno, Brahe, Rothmann, Ursus, Röslin,
Napoli, Bibliopolis, 1996. --- M. A. Granada,
Sfere solide e cielo fluido: momenti del dibattito cosmologico nella
seconda metà del Cinquecento, Napoli, La Cità del Sole, 2000. キミア & パラケルスス主義 --- G. Zanier,
“Uranologia spagirica e motivi gnostici in Helisaeus Röslin”, in G.Zanier, Medicina
e filosofia tra ’500 e ’600, Milano, FrancoAngeli, 1986, pp.37-60. |
2002. 01. 24 木
De
opere Dei creationis 講読会には、新潟の山田さんと千葉の山田さんが参加希望を出されました。歓迎です。かなり参加人数も膨らみましたので、もうこれで、完全に打ち止めです。