『天地創造の神の御業について』講読グループ

 

De opere Dei creationis

 


 

初心者歓迎。16世紀の摩訶不思議な知の世界へ

 

 

BH主催のラテン語原典講読会

 

 

テクストは、Helisaeus Röslin の『天地創造の神の御業について』 (De opere Dei creationis, Lecce, Conte, 2000) で、ラテン語原典 (Frankfurt, 1597) のファクシミリ・リプリントです。それぞれ数行からなる124の命題で構成されている50頁ほどの短い論考で、旧約聖書の『創世記』と16世紀のコスモロジー(コペルニクス・新プラトン主義・パラケルスス主義・カルヴァン派新教の入り混じったもの)のインタラクションを探るには非常に面白い本です。しかし、文面自体はそれほど難しい議論をしている訳ではありません。全て数行の断片ですから議論自体はこんがらがっていません。伝統的な学問カテゴリーが上手く当てはまらない「オルタネイティブ」という感じの16世紀の不思議な知の世界が手づかみで体験できるのではないでしょうか?

講読会は、多様なバックグランドを持つ人達でワイワイ・ガヤガヤと出来れば良いのではと思っています。初期近代の精神史&ラテン語を勉強したい人の自発的な参加を待ちます。初心者歓迎で、一緒に学びましょうというのが基本姿勢です。自分の読む順番が回ってきたら怖いと思っている人が居るかもしれないので言っておくと、順番回し読み方式は取らないつもりです。ラテン語をいつかは勉強しなくてはいけないと思いつつも、なかなか良い機会が得られなかったという人、お決まりの古典のキケロとかカエサルではなく本当の16世紀のテクストで勉強したいという方、絶好の機会を逃さないで下さい。

 各地で行われているラテン語講読会のテクストは古典ラテン文学ばかりで、世界の一流文献学者によって確立された校訂版をきれいな活字で印刷した現代の版を使っています。でも、初期近代を研究する皆さん、初期活版印刷による書物のクセを身につけておかなくてはなりませぬ。実際の16世紀の本のファクシミリ・リプリントを使うので、変形活字や省略形など実践的な訓練がつめること請け合いです。初期近代の思想史&文化史研究者で、ラテン語を課題として抱えていながら、こういう機会をみすみす逃す人の気が知れません。3月スタート予定です。

 

 著者 Röslin  は、アルザス出身のパラケルスス主義者です。『天地創造の神の御業について』では、コペルニクス主義を議論していて、ジョルダーノ・ブルーノと共にティコとケプラーの間に入る人物として宇宙論史の文脈で注目されています。テクストは、ルドルフ2世の従兄弟でケルン大司教であったバーヴァリア家のエルネストに献呈されています。彼は、皇帝ルドルフと同じくヘルメス学に傾倒していて、最初のパラケルスス全集出版の財政支援をします。もちろん関心を共有するルドルフとも緊密な関係にありました。Röslin についての基本文献を挙げておきます。

 

生涯について

--- P. Diesner, “Leben und Streben des elsässischen Arztes Helisaeus Röslin (1544-1616)”, Elsass-Lothringisches Jahrbuch, 14 (1935), pp.115-141.

--- P. Diesner, “Der elsässische Arzt Dr. Helisaeus Röslin als Forscher und Publizist am Vorabend des dreissigjährigen Krieges”, Jahrbuch der Elsass-Lothringischen wissenschaftlichen Gesellschaft zu Strassburg, 11 (1938), pp.193-215.

--- M. List, “Helisaeus Röslin”, Schwäbische Lebensbilder, 3 (1948), pp.468-480.

 

宇宙論史

--- D. Tessicini, “Bruno e Roeslin: sulla presenza della Theoria nova coelestium meteoron del De immenso”, Bruniana & Campanelliana, 4 (1998), pp.475-487.

--- M. A. Granada, El debate cosmológico en 1588: Bruno, Brahe, Rothmann, Ursus, Röslin, Napoli, Bibliopolis, 1996.

--- M. A. Granada, Sfere solide e cielo fluido: momenti del dibattito cosmologico nella seconda metà del Cinquecento, Napoli, La Cità del Sole, 2000.

 

キミア & パラケルスス主義

--- G. Zanier, “Uranologia spagirica e motivi gnostici in Helisaeus Röslin”, in G.Zanier, Medicina e filosofia tra ’500 e ’600, Milano, FrancoAngeli, 1986, pp.37-60.

 

 

シンボル図版「世界のピタゴラス的紋章

 

講読グループ形成の流れ

 

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