自然魔術とカバラ
 
 
 
その3
 
『ヘルメス主義とカバラ』
 
Francois Secret,
Hermetisme et Kabbale.
Bibliopolis, Napoli, 1992.
146pp. Indexなし ISBN 88-7088-266-7  Price : ***** Lira (*** Euro)
 
 
    僕の知る限りでは、まだ恐らく著作や論文が一篇も邦訳されたことがないスクレ氏は、それでも『ルネサンスのキリスト教的カバラ主義者』(1964年・第2増補版1985年)や『ギー・ル・フェーヴル・ドゥ・ラ・ボードリのエソテリスム』(1969年)、『ギョーム・ポステル再訪』(1998年)などの著作で、ルネサンス期のキリスト教的カバラ主義者やエソテリスム関係の思想家、そしてヘルメス主義者の発掘のために多くの業績を残しており、ずっと地味ですがフランスにおけるイェーツ的な存在です。
    本書は、ルネサンス期のヴェネツィアのヘルメス主義者フランチェスコ・ジョルジ (Francesco Giorgio) のカバラ思想についてのモノグラフィです。浩瀚な『世界の調和について』(De harmonia mundi)(1525年)の著者であるこの人物は、一般にあまり知られていませんが、かの有名なピッコ・デラ・ミランドーラとネッテスハイムのアグリッパの二人のカバラ主義者を結ぶ隠れた重要な糸となっています。ある意味では、アグリッパの『オカルト哲学』(1533年)のメインの典拠と言っても良いかもしれない。イェーツは、『魔術的ルネサンス』(邦訳1984年)の中で(53-63頁)、日本では、伊藤博明氏が『神々の再生』(1996年)で少しだけ(例えば325-327頁)この人物に触れています。
    錬金術の歴史に起きて、特にジョルジは、ルネサンスのプラトン主義者によって尊ばれたカバラを錬金術と明確に結び付けたことで、ルネサンス期の錬金術のエソテリスム的な思弁的側面への傾斜を加速させたという特徴的な役割を果たします。本書では、特にその「カバラ的錬金術」のテーマに焦点があてられています。  
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