世界霊魂 アニマ・ムンディ
「世界は生きている」、つまり「世界は巨大な生き物である」という考えに由来するのが、「世界には霊魂がある」という理論です。この理論の枠組みで、世界に付与されているとされる生命の源泉が、「世界霊魂」(アニマ・ムンディ)となります。西洋の哲学史・思想史では、プラトンが対話篇『ティマイオス』のなかで提唱したものが、もっとも知られているものでしょう。この理論は、『ティマイオス』の伝搬とともに、アラビア世界をはじめ、世界各地で信奉されました。なかでもヨーロッパでは、12世紀のシャルトル学派、そしてマルシリオ・フィチーノによるプラトン主義の復興により、ルネサンス期のプラトン主義者たちのあいだで盛んに議論されます。18世紀からのドイツ・ロマン派にも積極的に受容され、19世紀ドイツの哲学者たちにも親しまれました。ここでは、新作論文「ルネサンス期における世界霊魂」の出版までの流れをまとめておきます。
“The World Soul in the
Renaissance,”
in World Soul: A History, ed. James Wilberding (Oxford: Oxford
University Press, 2021), 151-176.
「ルネサンスにおける世界霊魂」
ウィルバーディング編『世界霊魂:その歴史』(オックスフォード大学出版、2021年)所収。
Along with
the revival of Platonism, Renaissance Europe saw a surprising proliferation of
writings on the world soul, shaping one of the most impressive eras in the
history of this perennial theme. The current chapter focuses on key figures
such as Marsilio Ficino, Agostino Steuco, Giordano Bruno, Tommaso Campanella,
and Justus Lipsius. Presenting their major arguments, it shows the features of
their interpretations and eventual interconnections. Starting from
fifteenth-century Florence, it examines some important attempts to reconcile
the doctrine of the world soul with Christianity. More than 100 years later,
these attempts culminated in the work that revived Stoicism with a strong
Platonic flavor. A clue to understanding all this evolution is the belief in
“ancient theology” (prisca theologia)
promoted by Ficino and developed in the stream of Renaissance Platonism.
プラトン主義の復活とともに、ルネサンス期のヨーロッパは世界霊魂(アニマ・ムンディ)に言及する書物の驚くべき増殖を受けて、この伝統的な主題の歴史において、もっとも象徴的な時代を迎えた。本章では、マルシリオ・フィチーノやアゴスティーノ・ステウコ、ジョルダーノ・ブルーノ、トマーゾ・カンパネッラ、そしてユストゥス・リプシウスといった重要人物に焦点をあわせ、彼らのおもな主張を提示し、彼らの解釈の特徴とその相互関係を示す。15世紀のフィレンツェから出発し、世界霊魂の学説とキリスト教教義を両立させる重要な試みを分析する。これらの試みは1世紀後に、プラトン色の強いストア主義を復活させようとする著作でクライマックスに到達する。これらすべての展開を理解するカギは、フィチーノによって提唱され、ルネサンス・プラトン主義の潮流のなかで発展した「古代神学」の信念なのである。
1. イントロ
2. フィチーノ
3. アグリッパ
4. ステウコ
5. ブルーノ
6. カンパネッラ
7. リプシウス
結論
PDFは、こちらから無料ダウンロードできます。
日記の記述から
2021. 7. 14 水
6月初旬にアカデミアにアップしたアニマ・ムンディ(世界霊魂)論文は、なんと1ヶ月で閲覧数が430を超えていました。これは驚くべきスピードです。フィチーノからブルーノやカンパネッラ、リプシウスまでをあつかう伝統的なルネサンス哲学の枠組みですが、僕の作品のなかでは、もっともエラノスよりのテーマだと思っています。すべてのプラトン主義者に捧げます。
2021. 7. 13 火
今年は念願の世界霊魂論文と、苦労のわりに気に入っているゼンネルト論文が出ましたので、もうこれで良いかなと思っています。しかしガレノス論文の仕上げと、新しく依頼された汎心論についての論文を書かないといけません。後者は、ルネサンス学者のリチャード(ブルム)が、学術雑誌 Intellectual History Review で企画している特集号「汎神論と汎心論」への寄稿となります。年末が締め切りですので、9月以降に集中したいと思います。ジョルダーノ・ブルーノを中心に議論しようと決めています。
2021. 6. 4 金
アニマ・ムンディ(世界霊魂)論集はオックスフォード大学出版から出版されたわけですが、ハードカバーとソフトカバー、キンドル版が同時に出たことが素晴らしいと思っています。しかしブリルやスプリンガー、ラウトレッジと比較して残念なことは、それぞれの論文ごとに別個にダウンロードできるポータルがないことです。デジタル時代にしては、すこし遅れているかなと思います。
2021. 6. 3 木
先日に告知を出したアニマ・ムンディ(世界霊魂)論文のトラフィック(閲覧315、ダウンロード29)にもとづけば、僕の作品のなかでは人気があったフィチーノ論文を超えて、世界中でもっとも読まれる一本になるのではないかという予感がします。この論文の主人公もフィチーノですが、皆さん本当にフィチーノが好きなのですね!
2021 5. 31 月
あとから気がついたのですが、世界霊魂論集に寄稿した僕の新作「ルネサンスの世界霊魂」は、通算で42本目の海外論文となりました。水星逆行期に入っているせいだからなのか、校正が反映されないという予期しないハプニングがありましたが、議論自体には問題ないので、ぜひともお楽しみください。
それでも試行錯誤して、校正ゲラに反映されていなかった微調整の5か所を埋めこみました。完璧ではないですが、素人の作業としては及第点ではないでしょうか。修正稿をアカデミアにアップしたあとに、ツイッターにつづいて、ほとんど可動していないFBの個人アカウントにも告知の投稿をしました。いまのところ、リンクのトラフィックは140となっています。
2021. 5. 30 日
ついに世界霊魂論集が到着しました。こちらです。なかなかの本に仕上がっています。しかしマジマジとみていたら、なんと!僕が送った校正指示が反映されていません。しかし微調整といった程度だったので、このさいですから許しましょう。> PDF 内のテクストを編集したいと思ってアドビのアプリを試したのですが、レイアウトが崩れたり、文字化けしたりしてイマイチですね。
2021. 5. 13 木
ここのところ落ちつきがない原因のひとつは、オックスフォード大学出版の『世界霊魂』論集が5月18日の世界発売となっており、もう残すところ5日を数える段階に入っているからです。僕にも、この日に寄稿者コピーが送りだされる予定です。到着までに何日かかるでしょうか?ところで、この本には寄稿者割引はあるのでしょうか?契約書を確認してみたいと思います。
2021. 4. 23 金
『世界霊魂』についての国際論集は、すでに出版社の専用頁ができていました。これに連動した動画もつくってあります。そしてBH内に専用頁を開設しました。こちらです。もしかしたらと思って調べてみたら、アマゾンにもデータが入っていました!
2021. 3. 15 月
コーペンヘイヴァ―版やスコット版、そしてフェステュジエール版を駆使して、ついに『ヘルメス文書』からの引用を見つけることができました。これはなかなか難しかったです。忘れていたのですが、いつのまにか仏訳のフェステュジエール版は4冊中の3冊まで入手していました。前回の世界霊魂についての論文でも、気がついていれば苦労しなくて済んだのですね。
2021. 2. 18 木
アニマ・ムンディについての論集で一緒になっていうアラビア学の権威ピーター・アダムソン氏と、ツイッター上でやりとりました。最近になって、世界の一流の研究者たちもツイッターを使いだしているので、こうして直接に交流できるところが良いですね。
以前からフォローしてもらっているフィチーノ研究の貴公子デニス・ロビショー君と、はじめてツイッター上でやりとりをしました。ちょうど彼もダレルと一緒に準備している、フィチーノの宇宙論についての雑誌特集号のゲラが届いたという話から、僕のリチェティ論文に言及しているというので、世界霊魂についての新作のゲラを送りましょうという流れになりました。
「発散気」 effluvia 概念の専門家シルヴィアにも、昨日のうちに世界霊魂についてのゲラを送っており、お世辞でしょうが、とても喜ばれています。僕の論文では、「世界精気」 spiritus mundi が「流れ出す」
effluere とフィチーノが表現するものを、若きカンパネッラが利用している様子が示されているので、彼女にとっては利用価値が大きいだろうと思います。
2021. 2. 16 火
予定よりも1週間ほど遅れて、今朝になって世界霊魂についての論集全体の校正刷りが送られてきました。まだ中身はチェックしていませんが、レイアウトやフォントはブリルのものよりも美しいかも知れません。同時に、書影もお披露目されたようです。本の全体像が見えましたので、速報として短い動画をつくりました。こちらです。
同時に、待たせていたイアンブリコス研究の権威フィナモアさんに、依頼されていた論文審査評に世界霊魂についての僕の新作論文の校正刷りをつけて提出しました。審査員としての僕の匿名性は守れなくなってしまうのですが、今回は特例的に先行研究の成果を利用するという点で、学問の進歩にとっては良いことだと思います。
2021. 2. 10 水
世界霊魂論文の校正ゲラは、1週間ほど遅れるという連絡がありました。とりあえず審査評に手を入れなおしました。あとはプルーフ・リーディングをしてもらうのが残っています。
昨晩、馬場さんとの対談「ヴンダーカマー(驚異の部屋)と百科全書主義!?」を収録しました。あいにく僕の機材の調子が良くなかったようで音声に難があるのですが、馬場さん側には問題ありません。収録し直すほどでもないので、このまま2月12日(金)の21時にプレミア公開します。併設される同時チャットで馬場さんも皆さんの声に応えますので、ぜひとも遊びにきてください。チャンネル登録して、お待ちください!
2021. 2. 9 火
本来なら昨日には世界霊魂論文の校正ゲラが送られてくる予定でしたが、どうしたものかと思っています。校正だけなら、ゲラが到着するまで気長に待てば良いのですが、先日も言及した審査評にくわえるために雑誌編集長を待たせているからです。
2021. 2. 1 月
これからの予定としては、まずは2月前半でガレノス論集への寄稿を微調整することと、2月8日に到着する予定の世界霊魂についての論文の校正をし、2月後半でドイツの国際会議で発表したゼンネルトについての発表原稿を論文化する作業があります。こうして予定をならべてみると、かなり忙しくなるのが分かりますね。
2021. 1. 28 木
ジェイムスから連絡がきたのですが、世界霊魂(アニマ・ムンディ)論集の校正ゲラは2月8日に送られてくるようです。最初の予定よりも1週間の遅れといったところでしょうか。昨日の審査評に関連して、このゲラを論文の著者にも届けて参考にしてもらいたいと思うのですが、上手くいくでしょうか?雑誌の編集長はオーケーだといっています。あとはジェイムスの許可が必要です。
2021. 1. 12 火
先日のエフルヴィアの件が気になって、シルヴィアの作品を幾つか読みました。論調としては、カンパネッラにはないけれど、ギルバートに言及があるのが最初ということになっています。これでは1936年の Chalmers の有名な論文から、それほど大きく歩を進めていません。僕の考えでは、フィチーノからカンパネッラにつながるラインが重要です。今年5月にいよいよ出版される予定の新作論文「ルネサンスにおける世界霊魂」では、じかに言及しているわけではないですが、関連を覗うことができるだろうと思います。
2021. 1. 2 土
オックスフォード大学出版で準備されている世界霊魂(アニマ・ムンディ)についての国際論集への寄稿にかんして、ベルリンに住んでいる編者ジェイムスに、編集校の修正点を1カ所だけ伝えました。これで版組に入り、1月末に校正ゲラが届く予定です。論集の出版は5月末になります。
フィチーノの有名なバーゼル版全集(1576年)は、Officina Henricpetrina から出版されたと印字されています。創業者の
Heinrich Petri と息子たちの共同作業なので、officina がついているのでしょう。僕は、セヴェリヌスの『哲学的な医学のイデア』(1571年)と同様に、Sixtus Henricpetri によるものだと思っていました。ところが、パリのフランス国立図書館のデータでは、Adam Henricpetri によるものとなっています。調べをすすめると、Heinrich
は1569年ごろまで活躍し、そのあとは息子の Sebastian と Sixitus が実質的な作業をしていたようですが、出版自体は Heinrich
Petri の名義でも良いようです。
2020. 12. 28 月
世界霊魂(アニマ・ムンディ)についての論集は、オックスフォード大学出版から刊行準備が進んでいます。クリスマス直前に、編者ジェイムスから編集校一式が送られてきました。なにか変更点があれば、1月3日までに知らせてくれということです。今日やっとのことで僕の原稿をチェックできましたが、細心の注意をはらって編集されている気がします。これといった間違いは見つかりませんでした。渡されているスケジュール表によれば、1月末から2月初旬にゲラ校正があるようです。
2020. 9. 30 水
今日は、オックスフォード大学出版から世界霊魂(アニマ・ムンディ)論文のための出版契約書が送られてきました。PDFをプリントして署名し、スキャンして論集編者のジェイムスに送りかえしました。いや〜、論集の作業も着々と進んでいる感じですね。ガレノス論集もオックスフォード大学出版からなのですが、そちらは自動の署名機能がついた契約書だったことを覚えています。同じ出版社でも、部局によってやり方がだいぶ異なるのですね。
2020. 9. 14 月
ベルリンのジェイムスから嬉しい連絡があり、世界霊魂(アニマ・ムンディ)論集の原稿一式は、シリーズ編集長のライプニッツ学者クリスティア・メルサー氏からゴーサインをもらい、正式に受理されて本づくりがはじまるようです。寄稿陣には、アラビア学者のピーター・アダムソン氏をはじめ、一流どころが結集している感じです。
2020. 8. 20 木
今日はポルピリオスについての文献の読みにもどりました。僕も寄稿した世界霊魂(アニマ・ムンディ)についての論集を企画したジェイムスの論文を2本ほど読みました。彼はプロティノスの宇宙論だけではなく、発生論にも興味をもっていることに気がつきました。宇宙論に発生論という組みあわせに、対象とする時代はまったく異なりますが、僕と関心の領域は大きく重なります。僕に論集への寄稿の依頼があったのも、なんだか分かる気がします。
2020. 8. 13 木
2016年にヨーロッパからアメリカに活動拠点を移して以降、どちらかというとインパクトある媒体に作品を発表するように仕事を絞ってきました。新作としては、ルネサンス期の世界霊魂について、そして初期近代におけるガレノス医学についての2本の論文をどちらもオックスフォード大学出版から予定されている論集に寄稿しています。世界霊魂は2019年の春、ガレノス医学は2020年の新春に論文化の作業をおこないました。
2020. 3. 16 月
遅ればせながら、『アニマ・ムンディ(世界霊魂)』論集の寄稿へのジェイムスのフィードバックを勘案して、微調整した原稿を送りだしました。変更部にはマーカーで色をつけてあるので、それらを彼のマスターコピーに反映させていただければ良いかと思います。面倒な作業でしょうが、全体で数か所なのでやってくれると思います。
2020. 3. 15 日
オックスフォード大学出版から予定されている論集『アニマ・ムンディ(世界霊魂)』について、アップデートがありました。編者のジェイムスは4月半ばには、すべての原稿を編集部に送りだしたいということです。ここから外部審査があるのか、そのまま版組に入るのかは分かりません。審査がある場合は、どうなるか分かりませんが、夏休み明けにはフィードバックがあって、修正した原稿を秋に出して版組に入るのでしょう。そのまま版組なら、夏休みまでに校正刷りが届くのかも知れません。どちらにしても、今年の年末か来年の前半には出版されるのではないでしょうか?
2019. 11. 27 水
オックスフォード大学出版の件が2つも春先にあり、結局のところ世界霊魂の原稿だけつくれたので、ガレノスの方は放置していました。編者から連絡があり、今年末までにできるか聞いてきました。もうダメだと思っていたので、これは助かりました。11日のセミナーでの僕の発表後の期間で原稿を仕上げたいと思います。
2019. 9. 5 水
『ブックガイド』にも寄稿していただいた中西さんのお薦めをうけて、5月27日に注文していた本が発送の知らせのないまま、昨日パリから届きました。ちょうど1週間です。本体36ユーロに送料20ユーロがかかりましたが、オシゴトで必要ですので仕方ありません。とうとう僕自身も、Cerf 書店の Sources Chrétiennes シリーズの一冊を入手することになりました。以前にも書きましたが、ルーヴァン大学の神学部図書館には全巻が揃っているので、ベルギーにいるときはそこで閲覧すれば良かったのです。
味気のない質素な表紙の本で、1985年に出版された教父キュリロスの『ユリアノス反駁』の第1巻です。ギリシア語と仏語の見開き対訳で、第1書と第2書が収録されています。ミーニュ版にない章立ての区別は、この版から始まったのですかね?どこにも説明がありません。
2019. 9. 4 火
教父キュリロスの不思議なところは、他では入手できないポルピュリオスやヘルメスの断片を記録しているところです。ルネサンス期のステウコは、そういうことからキュリロスの証言を利用します。そして気がついたのですが、キュリロスに注目するモレスキーニをはじめとする文献学者たちもステウコに言及するという、ナイスな往還がなりたっています。それだけでも興味ぶかいのですが、もっとスゴイことも発見してしまったので、ますますステウコ熱が僕のなかで高まっています。
ただ残念なのは、夏から冬にかけてまったくの別件であるコロンビア計画に集中しないといけないので、この件はいったん放置しないといけないことです。せっかくの素晴らしいアイデアも、機会を逃して放置しておくと、自分のなかで熱気が冷めてしまうのですよね。以前にもライプニッツで論文が書けそうだったのに、お蔵入りとなってしまいました。
から届きました。ちょうど1週間です。本体36ユーロに送料20ユーロがかかりましたが、オシゴトで必要ですので仕方ありません。とうとう僕自身も、Cerf 書店の Sources Chrétiennes シリーズの一冊を入手することになりました。以前にも書きましたが、ルーヴァン大学の神学部図書館には全巻が揃っているので、ベルギーにいるときはそこで閲覧すれば良かったのです。
味気のない質素な表紙の本で、1985年に出版された教父キュリロスの『ユリアノス反駁』の第1巻です。ギリシア語と仏語の見開き対訳で、第1書と第2書が収録されています。ミーニュ版にない章立ての区別は、この版から始まったのですかね?どこにも説明がありません。
2019. 9. 4 火
教父キュリロスの不思議なところは、他では入手できないポルピュリオスやヘルメスの断片を記録しているところです。ルネサンス期のステウコは、そういうことからキュリロスの証言を利用します。そして気がついたのですが、キュリロスに注目するモレスキーニをはじめとする文献学者たちもステウコに言及するという、ナイスな往還がなりたっています。それだけでも興味ぶかいのですが、もっとスゴイことも発見してしまったので、ますますステウコ熱が僕のなかで高まっています。
ただ残念なのは、夏から冬にかけてまったくの別件であるコロンビア計画に集中しないといけないので、この件はいったん放置しないといけないことです。せっかくの素晴らしいアイデアも、機会を逃して放置しておくと、自分のなかで熱気が冷めてしまうのですよね。以前にもライプニッツで論文が書けそうだったのに、お蔵入りとなってしまいました。
2019. 6. 29 土
次号のメルマガの原稿を推敲して、ドロップしました。今回は、前回にひきつづき新作論文「ルネサンスにおける世界霊魂(アニマ・ムンディ)」の後半を翻訳しました。このテーマは僕にとって非常に大事なもので、長年にわたって温めてきたものですが、なかなか思いきって歩を踏みだせないでいました。今回の寄稿依頼によって、背中をポンとおされたかたちです。配信は7月2日になります。どうぞお楽しみに!
2019. 6. 28 金
そろそろメルマガの準備をしないといけません。今回は、アニマ・ムンディ論文の後半(ブルーノ、カンパネッラ、リプシウス)となります。それからBH内にも世界霊魂についての専用頁を開設しないといけないでしょうね。
2019. 6. 27 木
ジェイムスのコメントについて簡単に対応できる部分は、昨日の作業で論文にとりこみました。そのままでは対応できない幾つかの部分は、彼の勘違いなどによるものなので、それらについての応答をコメントに書き込みました。要旨やキーワードといった残りのアイテムと一緒に送りだします。
2019. 6. 26 水
今日は、昨日届いたジェイムスのコメントを見ながら、いろいろ原稿を微調整しています。ルネサンス研究者には自明なことも、多くの人がすぐに分からない場合もあるので、役に立ちます。彼はプロティノス学者で、アリストテレスやストア派にも詳しいようですが、イアンブリコスなどの後期の新プラトン主義者や『カルデア人の神託』などに見られる奇妙なアイデア群には疎いのかも知れません。
フィチーノはその流れにあり、異なるものを類比でつないでいく傾向があるので、議論にある
A=B というものを、そのまま字義どおりに理解しない方が良い場合も多いのです。たとえば、彼が「精気は天界的な火」と主張したとして、天界のものが地上にもあるのが分からないと言われても、困ってしまいます。天界は字義どおりではなく、詩的な表現だと理解した方が良いでしょう。
2019. 6. 25 火
先週に提出した新作論文「ルネサンスにおける世界霊魂」の原稿にたいするコメントが、世界的なプロティノス学者でもある、編者のジェイムスから帰ってきました。もう読んだのですね!? 細かい部分はゆっくりと吟味するとしましょう。とりあえず、多分にお世辞でしょうが、彼の嬉しい言葉をがんばった自分へのご褒美として、ここに引用しておきます:
“I really enjoyed reading your chapter and I think it
will be a great addition to the volume! Thanks again for all the hard work. I’m
really happy to have this in the volume!”
2019. 6. 22 土
すこし夏らしい気候のところにきました。オックスフォード原稿のための要旨やキーワード、文献表を準備しています。週明けに提出する予定です。
2019. 6. 19 水
とりえず、原稿の本体を論集編者の James Wilberding に提出しました。今回の論文では、プロティノスがカギとなりますので、世界的なプロティノス学者に、まず原稿を読んでもらえることは嬉しいですね。あと数日で、要旨とキーワード、文献表のためのマテリアル、そして著者紹介を提出しないといけません。ふう。
2019. 6. 18 火
昨日の書式指定をみていて気がついたことに、オックスフォード大学出版では、中世、ルネサンス、宗教改革、啓蒙などの時代区分を大文字化しないということです。つまり middle ages、renaissance、reformation、enlightenment
になるということです。これは、けっこう驚きました。この点については、哲学よりも歴史学で議論が進んでいるということです。
2019. 6. 17 月
いまごろになって、論集の書式指定が届きました。もらったかどうか、ずっと不確かでした。内容をチェックしていますが、最初からシカゴ方式にしてありますので、おそらく問題ないでしょう。図版やアルファベット以外の文字も使ってないですし、それほど気にする部分はないような気がします。
2019. 6. 10 月
まだプルーフ・リーディングがつづいています。
2019. 6. 9 日
ほぼできあがった原稿をプルーフ・リーディングしてもらっています。
2019. 6. 8 土
なんとか火事場の作業で、ピンチを脱しました。ラテン語とイタリア語の原文はありませんが、もとの議論を大幅に改編することなく、要らない枝葉末節を削りとることで、なんとかギリギリの8000語におさめました。ふう。
2019. 6. 7 金
これでほとんど完璧だというところまで到達し、8000語の上限にたいしても大丈夫だと思っていたのですが、あれれ!?文字数カウントのチェックボックスに注がふくまれていません。こればマズイと思いつつ、おそるおそる調べてみると、案の定の11000語となっています。ああ、これはショックです!急いで注内のラテン語とイタリア語を切ったのですが、それでも10000語を切ったところです。
いろいろ思案した挙句、議論は大幅に短くできないので、2次文献を大幅に切り込む羽目になりました。その後もいろいろ工夫して、なんとか8000語まで落としました。しかし、なんという初歩的なミスでしょう。これで議論のバランスが崩れていないかチェックするために、もう一日ほど必要となりました。
2019. 6. 6 木
総仕上げのために、紙にプリントアウトして全体のバランスや、引用のためのラテン語やイタリア語をチェックしました。問題に思っていた点はほとんど潰せたので、あともう一回とおして読みなおしてからプルーフ・リーディングしてもらいます。
2019. 6. 2 日
ずっと探していたポルピュリオスの断片221は、1525年のフランチェスコ・ゾルツィの前に、じつはベッサリオンが引いていることを見つけました。彼の著作は1469年となります。しかし、同時に探しているアスクレピオスの断片24は引いていないので、ベッサリオンの著作を見ただけでは、ステウコの議論にはなりえません。おそらく彼は、まずベッサリオンかゾルツィの議論に出会い、そこから実際に教父キュリロスのギリシア語の手稿を参照したのではないでしょうか?
2019. 5. 30 木
長いなが〜い暗闇のトンネルを、小さなランプひとつもって歩きつづけるような、そんな缶詰の作業が終わり、英語の新作論文「ルネサンスにおける世界霊魂」をほぼ完成させました。そうです、世界霊魂(アニマ・ムンディ)です。オックフォード大学出版局から出される論集に寄稿するものですが、あとは細部の微調整が残っています。
僕としては長年にわたって扱ってきた愛着あるテーマなのですが、ルネサンス期の全体を一人で担当するとなると、議論するべき内容の多様性があまりに大きく、あちらの大家やこちらの大家の顔が浮かび、さすがに尻込みして、なかなか着手できないでいました。「ライターズ・ブロック」というやつです。
思い切って「えいや!」と、あつかう人物を象徴的な数人に絞ることにしました。そのおかげで、議論も四方八方へと散漫とならず、全体的にリズムのある流れとなったのではないでしょうか?フィチーノ、アグリッパ、ステウコを扱った前半部分のラフな邦訳版を、明日に配信される予定のメルマガでお送りします。
2019. 5. 28 火
最後にくわえたリプシウスについての部分をふくめて、全体の流れを調整しています。だいぶ完成に近づいてきました。まだイントロと結びをつけてないのですが、かなりのチャレンジだった割には、本体のできは良いように感じられ、嬉しい気分です。以下のような構成になっています。
1. イントロ
2. フィチーノ
3. アグリッパ
4. ステウコ
5. ブルーノ
6. カンパネッラ
7. リプシウス
結論
2019. 5. 27 月
今日は、最後にリプシウスについての部分をだいたいのカタチにしました。全体をあわせると7000語ということで、リミットの8000語にはおよばないものの、だいぶ良い感じの分量になってきました。あとは全体の議論を整え、イントロと結論をつければ8000語に近いものになるのではないでしょうか?やっとのことで、長いトンネルの出口が見えてきました。
2019. 5. 26 日
今日は結局のところ、丸一日がかりの缶詰作業でステウコについての部分だけ、なんとかカタチにできました。ちょっと最初に思ったよりも手ごわかったです。まだ枝葉末節に議論がひろがっているので、すこし刈りこみをしないといけません。ま、全体をつなげたときにしようかと思います。明日は、ブルーノについての部分にいきます。
先日もここで書いたように、大事なところでステウコが依拠するアレクサンドリアのキュリロスというギリシア教父がいます。『ユリアノス反駁』という著作で、彼はヘルメスやポルピュリオスの超レアな断片をあつめています。まさに、その部分をステウコは使うのです。ユリアノス専門家の中西さんに、この著作の標準的な版について教えてもらいました。感謝!
2019. 5. 25 土
週末ですが缶詰で作業をつづけています。今日はついにフィチーノについての部分を、それなりのカタチにできたので良しとしましょう。明日はステウコに戻ります。上手くいったら、ブルーノにも戻れるかも知れません。なんだか遠くにぼんやりと出口が見えてきました。
時間はないのですが、アグリッパについての小さなセクションを設けることにして早足で分析をしました。基本的には、『オカルト哲学について』(ケルン、1533年)の小さな章で議論しているので、その部分を使います。
2019. 5. 24 金
午前中は昨日の部分の仕上げをおこないました。ラテン語の読みの細かいところなどをチェック。午後は、『プラトン神学』から大事なところを読みなおしています。
2019. 5. 23 木
今日は昨日に引きつづき、フィチーノについての作業をしています。新しいテクストを読んでいます。去年のルネサンス学会で発表したカンパネッラについての論考が役だっています。
2019. 5. 22 水
ステウコの部分はある程度のかたちになったので、フィチーノについての作業に移りました。フィチーノから議論をはじめますので、あとの部分に上手くつながるように手際よくまとめないといけません。
2019. 5. 20 月
もうちょっと足腰を固めておこうと思い、あやふやだった部分を調べるためにギリシア教父のひとり、アレクサンドリアのキュリロスの『ユスティアノス反駁』について調べていました。三位一体の考えを異教徒ももっていたのだという主張のために、『ヘルメス文書』の断片をいくつか収録していますし、ポルピリオスにも言及しています。
しかしキリスト教父のことを調べるためには、ルーヴァン大学の神学部の図書館が、これまで僕の使ったことのある図書館のなかで、もっとも充実していました。そこでしばしば使っていたマテリアルに、パリの Cerf 書店から出されている仏語による見開き対訳のシリーズがあります。これは、ギリシア教父にしてもラテン教父にしても非常に充実しています。
2019. 5. 19 日
以前からやってみたいと思っていたテーマがあって、じつはブルーノとも深く関係しているのではないかと思えるようになりました。というのも、彼の哲学の特徴のひとつとされる部分の元ネタのようなものを見つけしまったのです。これをもっと調べたいけれど、いまは他の締め切りがあるのでできません。うう。
これまでにも何度もあったのですが、つぎの研究のテーマを見つけて放置しておくと、忘れてしまうのですよね。2001年ごろにも、ライプニッツで半年くらい没頭していたテーマがあったのですが、別のテーマのためのロンドンでの滞在がきまって流れてしまいました。
2019. 5. 18 土
ブルーノの部分はだいたいの姿が見えてきたので、一旦ここで止めておいて、つぎはステウコの議論をまとめることにしました。彼のテクストにとりくむのは今回がはじめてですが、う〜ん、なかなかBH的な関心にビシビシと反応する内容です。これはシビレます。もっとじっくりと時間をかけて読みたいマテリアルですが、今回は時間が足りません。>あらかじめ目星をつけておいたところを拾い読みしていましたが、見逃していた大事な部分が分かったので、そこに集中することにしました。
2019. 5. 17 金
伊仏語による見開き対訳の全集から、2016年に出された『原因・原理・一者について』の第2版を入手しました。これは、1996年の初版のイントロを、190頁を越えるトマス・ラインカウフによるイントロに置きかえ、補注も大幅に充実しており、本全体でも460頁が870頁の大冊に変容しています。初版をもっている人でも、こちらの乗りかえる必要があるでしょう。
この本の助けを借りて、いま作業している原稿のブルーノについての部分をまとめることができました。短い準備の時間でしたが、なかなか良い話の展開になっていると思います。これは嬉しい。のちのこの部分を拡大して、単独の論文とすることも見えてきました。
2019. 5. 12 日
今日はブルーノから離れて、フェルネルの弟子筋によるラテン語の短い論考(1570年が初版だといわれています)を写経しながら読みました。基本的に批判的なもので、議論も面白味に欠けます。なんでも入れられるわけではないので、これはパスしましょう。以前から読まないといけないと思っていたものなので、チェックした意味はあったとは思います。
2019. 5. 11 土
一昨日から、ブルーノの『原因・原理・一者について』をゆっくりと再精読しています。19世紀の哲学史家たちは、彼をスピノザの先駆者だと誤解し、現代における復活に大きく寄与したようです。たしかに彼の普遍知性の議論は、トマス・アクィナスによるアヴェロエス論駁やライプニッツの論考ともつながる系譜にあるといえるかも知れません。内容は難しいですが、哲学科の学生たちにもっと読まれるべきでしょう。>
『ルネサンス・バロックのブックガイド』では、アダム君がこの部分をうまく紹介してくれています。
ところで、イタリア語を普通に読める知識人が当時のパリやロンドンには多かったと、幾つものブルーノ関係の文献に出ているのですが、ほかのイタリアの著作家については同様な記述を見かけません。これは、どういうことなのでしょうか?
ここで1年半が経過
2017. 10. 19 木
世界霊魂についての国際会議が、ドイツのボフム大学(どうやらデュッセルドルフの近く)で計画されています。この会議をもとに、オックスフォード大学出版から論集が出版される予定です。どうやら日程は、2018年の11月29-30日になりそうです。
ここで1年が経過
2016. 10. 25 火
オックスフォード大学出版会から出される予定の論集 『世界霊魂』 についての計画書がきました。自分の担当部分をチェックし、くわえて略歴(ショート・バイオ)を提出しないといけません。ほぼ同時に並行して、ケンブリッジ大学出版から出される予定の論集 『プロティノスの遺産』 の契約書のためのアドレスを聞かれました。しかしふと思えば、この手の話題でルネサンスのことを書くときには、そうそうたるルネサンス学の大家ではなく、僕のところに依頼がまわってくるようになったのですね。両方とも、締め切りまでまだ1年ほどあるので、じっくりととり組みたいと思います。
2016. 9. 15 木
昨日送りだした世界霊魂についての寄稿の要旨ですが、「グレイトだ」とリアクションがありました。基本的には4部構成で、最初に第1部でフィチーノをあつかい、つづいて第2部でフィチーノのフォロワーとして幾人かを通過し、パトリッツィやブルーノに流れこみます。第3部では自然学者・医師たちの場合としてカルダーノとフェルネルから、そのフォロワーたちを追いかけます。最後の第4部でリプシウスをあつかいます。
2016. 9. 14 水
プルーフ・リーディングしてもらった世界霊魂についての寄稿の要旨を送りだしました。リアクションを待ちます。
2016. 9. 13 火
今日は、ちょっと遅れている世界霊魂についての論考の要旨を書きたいと思います。だいたい400〜500語といわれています。> あまい希望もふくめて、ながらく扱いたいと思っていた著者と著作をならべていったら、それだけで500語になりました。クレアにプルーフ・リーディングしてもらって提出します。この寄稿が収録される論集は、あのオックスフォード大学出版から出される予定です。哲学のコンセプトという、いま話題のシリーズなのですよね。
2016. 8. 29 月
オックスフォード大学出版からでる予定の世界霊魂についての論集へ寄稿するのですが、その要旨を書かないといけません。9月15日を締め切りとしてもらいました。フィチーノからはじめて、リプシウスでしめる予定です。そのあいだについて、どういう人物の、どのテクストを分析するのか、もうすこし練りたいと思います。
2016. 2. 18 木
世界的に有名な古典学者の先生から、世界霊魂についての論集をオックスフォード大学出版から出したいのでルネサンスについての章を寄稿してくれという依頼がありました。このあいだのケンブリッジ大学出版から予定されているプロティノスの影響についての論集への寄稿の依頼につづいて2つ目のビッグ・ショットです。こちらの方面が良い流れとなっている感じがします。