隠れた名著
その14
サビーナ・フライトマン著
『ウォルター・チャールトン (1620-1707)、"ヴィルチュオーゾ"
その生涯と仕事』
Sabina Fleitmann
Walter Charleton (1620-1707), "Virtuoso" : Leben
und Werk.
Peter Lang, Franckfurt-Bern-N.Y., 1986.
478pp. ISBN 3-8204-9044-2 Price 47.1
Euro
本書の主題であるウォルター・チャールトンは、17世紀半ばの英国におけて、当時大陸での最新の科学理論であったファン・ヘルモントのキミアとガンサンディの原子論を紹介した人間として、また、無神論の激しい批判者として英国の精神史上大変重要視されてきた人物です。本書は、その決定版的な伝記と業績分析としての位置を持っていますが、なにぶん英語で書かれなかったので、今ひとつその重要性が理解されていません。これは、とっても良い本です。僕は、A.Clericuzio
氏が用いているところから、その存在を数年前に知りました。なかなか図書館に見つからず、かなりのレアだなと思っているところ、ひょんなことから出版社が分かり、早速直接に問い合わせたところ、まだ24冊残っていると言われたので、思いきって購入しました。ロバート・ボイル、ジョン・ロック、アイザック・ニュートンに興味のある人間にとってマスト・アイテムです。内容は、以下の通りです。
1. Einleitung p.1-
イントロダクション
2. Biographie p.3-
伝記
2.1. Walter Charleton -
eine biographishce Skizze p.3-
一伝記的スケッチ
2.2. Charleton im Umfeld
der englischen neuen Wissenschat (1635-1660)
p.14-
英国の新科学の文脈におけるチャールトン
2.2.1. Mitgliedschaft in wissenschftlichen Gruppen und Institut
科学的グループと組織との関係
2.2.2. "Solomon's House in Reality" : Entwuerfe zur Organisation
naturwissenschaftlichen Forschens und ihre Verwirklichung
「現実におけるソロモンの家」:科学研究の組織とその実現
のための計画
2.2.3. Walter Charleton - ein royalistischer Naturwissenschaftler
in "Commonwealth" und Restauration
チャールトン : コモンウェルスと王政復古における一王党派
自然科学者
2.3. Charleton in Frankreich
- Begegnung met der franzoesischen
Atomistik p.67-
フランスにおけるチャールトン:フランス原子論との関係
3. Werk p.82-
業績
3.1. Ueberblick ueber das
Gesamtwerk : Schaffensphasen auf dem
Hintergrund des Virtuoso-Ideals p.82-
業績全体の概観 :「ヴィルチュオーゾ」の理想像のバックグラウンド
3.2. Charleton und die Alchimie
p.95-
チャールトンと錬金術
3.2.1. Die Helomt-Trilogie
ヘルモント3部作
3.2.2. Auswirkungen der helmontischen Philosophie im spaeteren Werk
後期の著作におけるヘルモント思想の名残
3.3. Kosmologische und physicalische
Grundprinzipien p.120-
チャールトンの宇宙論的・自然学的な基本原理
3.3.1. Das Universum
宇宙
3.3.2. Das Atom als kleinster Baustein des Universums
宇宙の最小の礎石としての原子
3.3.3. Koerper : Koncretionen von Atomen
物体 : 原子の凝集
3.3.4. Zwischenbilanz : Mechanismus und Atomismus in Charletons Werk
小まとめ : チャールトンの仕事における機械論と原子論
3.4. "Theologisierung" der
epikureischen Philosophie p.212-
エピキュロス哲学の神学化
3.4.1. Atheismusvorwurf und Rechtfertigung Epikurs
無神論批判とエピキュロスの正当化
3.4.2. Physico-Theologie und Naturreligion
自然神学と自然宗教
3.4.3. Goettliche Vorsehung und Ordnung der Natur
神の摂理と自然の秩序
3.4.4. Unsterblichkeit der Seele
霊魂の不滅性
4. Schluss p.275-
まとめ
Anmerkungen p.284-
脚注
Literaturverzeichnis p.437-
参考文献表
と、素晴らしい内容なのですが、一つ大きな欠点は、Index
人名・事項ともども全く無い事です。また、文献表は、普段見なれない文献に溢れている貴重なものなのですが、省略記号を示す表なしに勝手に省略記号を使っているので使いずらいという欠点があります。それから、本書は、Aspekte
der englischen Geistes- und Kulturgeschichte シリーズの第7巻なのですが、その表紙は、英国国旗をデカデカとかたどったものでかなり下品なものです。「パンク」じゃないんですから、もっと気を使って欲しかったです。
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