隠れた名著
  
 
 
その1
  
キャスリーン・アホーネン著
『ヨハン・ルドルフ・グラウバー : 17世紀の化学におけるアニミズム』
K.W.F.Ahonen,
Johann Rudolph Glauber : A Study of Animism
in Seventeenth-Century Chemistry.
(Ph. D. dissertation), University of Michigan, 1972. 300pp.
  
   
    どうしてこういうことになるか分りませんが、グラウバーの「キミア」(錬金術=化学)思想を扱った数少ない研究の中では、一番グラウバー自身のテクストを詳細かつ正確に読みこんだ研究なのですが、歴史上まったく黙殺されてしまっているという博士論文です。著者は、Dictionary of Scientific Biography のグラウバーの記事まで書いています。それなのにあのディーバスでさえ本書の存在を知らなかったみたいです。「アニミズム」と関したタイトルが良くなかったのかも知れません。何の事はない、「汎生気論」とか「Hylozoism」とか呼ばれる物質が生きていると言うことを前提にしてる哲学のことで、文化人類学や心理学で言うところの「アニミズム」のことではありません。「錬金術」というタームを使うのを避けた節があります。つまり、製作された時代からするとプレ・ディーバス時代に属するかもしれないですね、まだ「キミア」がれっきとした歴史研究のテーマ足りえることの認識が薄かった時代に生まれた書物です。従って、作者は、「キミア」理解のためにW.パーゲルやA.G.ディーバスなどの歴史的手法でなく、ミルチャ・エリアーデなどの文化人類学的な文献を頼りにしています。そのような細かい欠点があろうとも、本書は、グラウバーのキミア思想を最も良く調べ正確に分析した歴史研究の博士論文であることを保証します。僕の博士論文の中でも何度か強調しましたが、17世紀の「キミア」の研究家の全てにとって本書は有用であり重要です。本書の名誉回復に一役買おうと思っている次第です。
 
   
         
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