『天地創造の神の御業について』
De opere Dei
creationis
シンボル図版
「世界のピタゴラス的紋章」
Signaculum mundi pithagoricum
これから講読会で読むDe opere Dei
creationis の巻頭にあるシンボル図版「世界のピタゴラス的紋章」を取り込みました。3層構造の典型的なキリスト教新プラトン主義世界観で、一者たる最高善としての神からの流出と人間を中心に据える homocentrica の概念を見せていますが、その周りを取り巻く自然界の構造には、水銀・硫黄・塩の三原質によるパラケルスス主義的な要素もしっかり現れています。本書には、これとは別にコペルニスクやティコの天文学を説明した図版などもありますが、それらはまた別に機会にしましょう。というより、それらをみるのは講読会参加者の特典にしましょう。
I. Mundus archetypus 始原的世界 Deus 神 Jehova エホヴァ(神の名) Bonum infinitum 無限の善 II. (Mundus) angelicus 天使的世界 Bonum finitum 有限の善 III. (Mundus) aethereus エーテル的世界 Bonum finitum 有限の善 IIII. (Mundus) elementaris 元素的世界 V. (Mundus) infernalis 地獄 Malum - Satan 悪−サタン |
Homo 人間 |
Coelum 天 Mercurius 水銀 Angeli 天使 Stellae 星辰 Aer 空気 Meteor 気象 Aves 鳥 Plantae 植物 Aqua 水 Pices 魚 Metalla 金属 Sal 塩 Terra 土 Bestia 動物 Sulphur 硫黄 Lapides 石 Chaos カオス Ignis 火 Inane Procellae 嵐の無 Tenebrae : Abyssus 闇淵 |
基本的に伝統的な自然界の四元素は、宇宙論的順に上から火、空気、水、土というふうに並列している四つの領域ですが、パラケルスス主義では、火が元素から外され、天空 firmamentum に置き換えられます。ここでは、新プラトン主義的な3層構造 (超天界・天使の座、天界・星辰の座、地上界・自然物の座) の宇宙の下に煉獄が設けられていて、そこに火が置かれています。この「地獄の火」というアイデアは、その後、地学的な地下中心火の概念と結びついて、ルドルフ宮廷の中心的な錬金術師センディヴォギウスによって「ゲヘナ Gehenna の火」と呼ばれます。
なお、この図版のヴァリアントは、1618年にミカエル・マイアーの翻訳・編集した錬金術書のコンピレーション中の15世紀の英国人錬金術師 Thomas Norton の作品 Ordinall of Alchemy に挿入され有名となったようです。