ネーデルランド(低地地方)
メルカトル研究の入り口
Gerard Mercator (1512-1594) 。
言わずと知れたメルカトル図法の考案者&数学者。
メルカトルとは、あのメルカトル図法を考案したベルギーの人で、16世紀のアントワープで活躍した地図学者&数学者です。彼は、ジオ・グラファー(地理学者)だけでなくコスモ・グラファー(宇宙誌学者)でもあり、アストロラーベ(宇宙儀)も製作しています。最近の傾向としては、単なる地図製作者&地理学者メルカトルではなく、ルネサンスの万能人としての側面を強調した研究が増えています。この肖像画はあまり好きな方ではありませんが、他に見つからなかったので許して下さい。
基本文献のセレクション
メルカトルは、ベルギーのアントワープで出版業者 Christoph Plantin のサークルを中心に活動し、その製作した地図で一躍有名になります。晩年は、ドイツのデュイスブルグに活動拠点を移します。そういった関係で、彼についての文献は、フランス語、ドイツ語、オランダ語が乱れ飛びます。特に最近は、1994年の没後400年を記念した出版物が、主にドイツ語圏で相次ぎました。
1.新しめのモノグラフィー、論集、展覧会カタログ。
Le cartographe Gerard Mercator 1512-1594. Credit communal, Brussels, 1994.
『地図学者ジェラルド・メルカトル 1512-1594』、ブリュッセルの王立図書館で1994年に開かれた展覧会のカタログ。この辺から入ると分かりやすいと思います。オールカラーで当たり前のようにメルカトルが作成した古地図が沢山あり、古地図好きには堪りません。ハンディな厚さ(157頁)でオールカラーですから、フランス語が読めない人にもお薦めです。展覧会だから英語版も作ったのかもしれません?今は Waes という町にメルカトル博物館もあるそうで、ブリュッセルの王立図書館で開かれたこの展覧会は、そのオープン記念も兼ねているようです。
M. Buettner (ed.), Neue Weg
in der Mercator-Forschung: Mercator als Universalwissenschaflter. Brockmeyer,
Bochum, 1992.
『メルカトル研究の新傾向:万能人としてのメルカトル』
どうやら近年のメルカトル研究の推進力となっているのがこの人のようです。
M. Buettner, Zur Bedeutung
der Reformation fuer Mercator und dessen Neuausrichtung der Kosmographie/Geographie
im 16. Jahrhundert. Munich, 1994.
『メルカトルにとっての宗教改革の意味について、その16世紀のコスモ・ジオ・グラフィーとの関係』
M. Buettner & R.Dirven (eds.),
Mercator und Wandlungen der Wissenschaften im 16. und 17. Jahrhundert: Referate
des 1. Mercator-Symposiums, Duisburg, 8.-9. Maerz 1992. Brockmeyer, Bochum,
1993.
『メルカトルと16-17世紀の科学の変容』。デュイスブルグで行われた第一回メルカトル会議の論集。
M. Watelet (ed.), Gerard Mercator
cosmographe: Le temps d'espace. Fonde Mercator, Antwerp, 1994.
『宇宙誌学者ジェラール・メルカトル:空間の時代』。アントワープのメルカトル協会からの論集。
Gerhard Mercator: Europa und die
Welt. Duisburg, 1995.
『ゲルハルト・メルカトル:ヨーロッパと世界』。1994年にデュイスブルグの市立文化歴史博物館で行われた展覧会のカタログ。
R.H. Vermij (ed.), Gerhard Mercator und seine
Welt. Mercator-Verlag, Duisburg, 1997.
『ゲルハルト・メルカトルとその世界』。最新のメルカトルについての論集。
2.基本中の基本文献
H. Averdunk & J. Mueller-Reinhard, Gerhard
Mercator und die Geographen unter seinen Nachkommen, Gotha, 1904. reprint, Amsterdam,
1969. viii-188pp.
『メルカトルとその学派の地理学者達』。古いけれど復刻もされている基本書。
Antoine De Smet, "Gerard Mercator (1512-1594)
et les siences occultes." Scientiarum historia, 16 (1990), pp.5-10.
「メルカトルとオカルト科学」。これは、小品ですが、BH流セレクトです!
Antoine De Smet, Album Antoine De Smet.
Bruxelles, 1974.
『アントワヌ・デ・シュメット作品集』。偉大なるメルカトル学者の論集。主にフランス語の重要論文がつまったお得本。
R. Karrow, Mapmakers of the Sixteenth Century
and their Maps. Chicago, 1993.
『16世紀の地図製作者達と地図』。新しめの16世紀の『地図学』の歴史
Johannes Keuning, "The History of an
Atlas." Imago mundi, 4 (1947), pp.37-62.
「アトラスの歴史」
Johannes Keuning, "The History of Geographical
Map Projection until 1600." Imago mundi, 12, (1955), pp.1-24.
「1600年までの地図投影法の歴史」
Rodney W. Sherley, The Mapping of the World:
Early Printed World Maps 1472-1700. London, 1984.
『世界の地図化:初期の印刷世界地図』。さらに一般的な地図学の歴史。
Henry N.Stevens, Ptolemy's Geography :
A Brief Account of All the Printed Editions down to 1730. London, 1908.
『プトレマイオスの地理学:1730年までの全印刷版の概説』。プトレマイオスの『地理学』は、長いこと人々の地球観に影響を投げかけていました。
Fernand Van Ortroy, "L'œuvre géographique
de Mercator." Revue des questions scientifiques, 32 (1892), pp.507-571
& 33 (1893), pp.556-582.
「メルカトルの地理学的業績」。古いのですが、まとまった長尺の論文です。
Henri-Emmanuel Wauters, Histoire de l'ecole
cartographique belge et anversoise du XVIe siècle. Bruxelles, 1895.
『16世紀のベルギーとアントワープの地図製作学派の歴史』。これも古いのですが、ベルギー、特にアントワープにおける地図製作の伝統をまとめたモノグラフィ。マストです。
メルカトルによる北極の地図