ファン・ヘルモント協会
Van Helmont
Society
17世紀前半にフランドル (現在のベルギー) で活動したヤン・バプティスタ・ファン・ヘルモント Jan Baptista Van Helmont (1577-1644) は、「火の傍らの哲学者」という称号で知られています。主著 『医学の曙』 Ortus
medicinae の初版は、アムステルダムのエルツェヴィア書店から1648年にラテン語で出版されました。以降、英語、独語、蘭語、仏語にも全訳あるいは部分訳されています。著者の死後出版の本書には、1624年にリェージュで出された小著『スパ鉱泉についての補遺』なども再録されています。それ以外に殆ど出版物のない彼の思想の表に出された部分はほぼ全て、この『医学の曙』の中にあると言っても良いのかも知れません。学問、宗教、自然、生命、医学など多岐にわたる話題が収められています。
ファン・ヘルモントは本邦では未だ余り知られていない人物ですが、17世紀半ばから18世紀末にかけての西欧の自然・物質・生命観に巨大なインパクトを与えた人物であることは明らかです。ロックもライプニッツもファン・ヘルモントを読んでいます。しかし、彼の思想は、単なる科学思想史上の問題ではありません。その影響は、敬虔主義やゲーテやノヴァーリスといったロマン主義とも密接に結び付いてます。彼のような人物の影響を全く無視して書かれた、これまでの啓蒙主義一辺倒の18世紀文化思想史は、書き換えられなければならないものなのです。
その1
協会設立準備の特別企画
ファン・ヘルモントの主著『医学の曙』の英訳版
(1662年)のコピーを配布する企画が進行中です。B4紙で約500枚分の複製料が、費用となります。詳しくは、こちらまでメールにてお問い合わせください。 |
その2
吉本秀之 「ラテン語原典と英訳版における収録論考リスト」
以下、各論考は、Y5、といった記号で表記します。
Y =
Yoshimoto、数字はリスト内の論考番号です。
2003. 9. 7 日
『医学の曙』の各国語版の内容比較作業が現在、吉本さんのサイトで進んでいます。ラテン語版、英語訳の後、ドイツ語訳の分析途中ですが、オランダ語版が先にアップされました。ブリュッセルの王立図書館に仏語訳があるような気配なので、10月を過ぎてから時間のある時を見計らって、複製を出来ないか探りを入れたいと思います。
その3
日本語で何が読めるのか?
A.
G.ディーバス 『近代錬金術の歴史』 (平凡社、1999年)、272-350頁。
A.
G.ディーバス 『ルネサンスの自然観』
(サイエンス社、1986年)、209-217頁。
『キリスト教神秘主義著作集16 : 近代の自然神秘思想』 (教文館、1993年)
『医術の曙』のドイツ語訳からの重訳による3論考
(Y3、Y4、Y5)
「著者の告白」「いかなる学問を学んだか」「学問をいかに探求すべきか」を所収
その4
2006. 4. 1
*注記
19世紀ベルギーのファン・ヘルモント研究家達から、現代の
W. Pagel、R. Halleux、W.R. Newman 等の専門家が示す通り、ファン・ヘルモントの名前は、普通のオランダ語圏の人名の場合と異なり、いかなる場合であっても
Van がともない
V は大文字となります。逆に、形容詞の形
(Helmontian
など)
では、Van
は落ちます。つまり、ファン・ヘルモントの名前における
Van は、既にオランダ語における前置詞の意味を半ば失い、苗字の一部となっているのです。仮に、このプロセスがさらに進んだ場合は、Vanhelmont
という形になります
(Du
Chesne が時折
Duchesne と表記されるのと似ています)
が、実際にはそこまで行っていない中間的な位置にあるものです。旧低地地方の人間の姓名の表記は、かように複雑です。例えば、Van
der Meuse と
Vandermeuse は、別人
(別の家系)
であることもあるのです。