ごくごく個人的な「本」日記
2016年8月
2016. 8. 31 水
昨日のチェックしたジオコスモス計画からスピノザをあつかう第7章を、もう一度見直して第5版としてお返ししました。この章は、短いながら『テクストの擁護者たち』につながるもので、文献学や歴史学の立場からもとても興味ぶかいものです。もともと難しい内容の議論だとは思うのですが、だいぶこなれて読みやすくなりました。いろいろ考えさせる思考の糧となっています。面白いですよ!
あと残りはライプニッツについての第8章のみとなりました。今日明日はゲストがBH本館にくるので作業は無理でしょうが、今週内に仕上げられれば良いかなと思います。
2016. 8. 30 火
次号のメルマガをドロップしました。今回は、今年5月にパリでおこなわれた 『ボッティチェリ 《プリマヴェラ》 の謎』 の著者クリストフ・ポンセ氏へのインタヴュの後篇です。ドキュメンタリー番組 『マルセイユ・タロットの謎』 の制作話からはじまって、ボッティチェリの関与の可能性、そしてフィチーノの哲学との結びつきへと話は展開していきます。9月2日の配信です。乞うご期待!
ジオコスモス計画からスピノザをあつかう第7章をチェックしました。基本的には、言葉のくり返しや、なくてもよい語の削除、言い回しの重い部分、たまに混ざってくる古風な表現、本全体での統一性などをみています。なぜこれほどまでチェックするのかと疑問に思われるかもしれませんが、この一連の作業の良し悪しがプロダクトの品質に決定的なかたちで出てくると思います。おそらく、ここまでキッチリとみる出版社や編集者は現在では少なくなっているのではないでしょうか?
2016. 8. 29 月
ずっと温度もさがり、いつもどおりの高原の夏となりました。ここのところ集中的につづけているジオコスモス計画から、昨日チェックした第6章をじっくりと読みなおして、第5版として送りだしました。残っているのは、第7章と第8章です。
そろそろ次号のメルマガも忘れずに準備しないといけません。なんにしましょうかね?パリのクリストフのインタヴュの後半にしましょうか?> 午後に下訳を準備しました。明日もういちど推敲してドロップします。
オックスフォード大学出版からでる予定の世界霊魂についての論集へ寄稿するのですが、その要旨を書かないといけません。9月15日を締め切りとしてもらいました。フィチーノからはじめて、リプシウスでしめる予定です。そのあいだについて、どういう人物の、どのテクストを分析するのか、もうすこし練りたいと思います。
2016. 8. 28 日
昨日の夜にはげしい雷雨があったせいか、気温がすこし下がり過ごしやすくなりました。今日は、ジオコスモス計画から第6章をチェックしました。2つほどクリアしないといけない疑問点があります。明日もう一度見直しして送りだします。
2016. 8. 27 土
ひきつづきジオコスモス計画から第5章のチェックをしました。とにかく猛暑との闘いです。夜にもう一度読みなおして、お返ししました。第5版となります。残りは3章分と結論です。あともう少しというところまできました。今月中に終わるでしょうか?
2016. 8. 26 金
昨日のつづきでジオコスモス計画から第3章と第4章を、じっくりと読みなおして送りだしました。ともに第5版です。大熱波がきているのでマシンの前で作業するのはツラいのですが、この週末のあいだになんとか第5章と第6章をアタックしたいと思います。
2016. 8. 25 木
気温が30度近くまで上昇して、クーラーのない室内も非常に暑くなったのですが、なんとか集中してジオコスモス計画から第3章と第4章をチェックしました。ラテン語からの引用をひとつ、じっくりと見なおさなければなりませんでしたが、どちらの章もだいぶ整ってきました。明日、もう一度とおして読みなおしたいと思います。
このあたりで最終稿にしましょうといって送りだした第2章が、すぐに帰ってきましたが、また新しいエレメントをくわえた再変更です。全体の作業がおしてしまうので、年内に出版というのはもう無理かなという感じになってきました。
2016. 8. 24 水
すっかり回復したクニ君は、ランチの後にリェージュをあとにしました。明日の朝のフライトで帰国の予定です。
2016. 8. 23 火
だいぶクニ君も良くなってきたのか、幾つか残っていた本をスキャンしたいと言いだしました。まあ、そのくらいに回復してきたということでしょう。夕飯にピザを食べにいって、ヨシ君と国際会議を企画したらという話をしました。「見えざる敵たち」
“Invisible Enemies” というメイン・タイトルで、初期近代の宗教・哲学・科学が交錯するフィールドについてライプニッツやベイルを中心に、ヨーロッパの風光明媚なところ(コモ湖畔を想定しています)で来夏に開催するのです。まずは、口上を考えるところから出発です。
2016. 8. 22 月
昨晩は夜半にクニ君が病気になったようで、38度の高熱があります。大事をとって、今日の19時発の帰国便はキャンセルし、明日の様子をみつつ体調を整えてから帰ることとなりました。まあ、水曜日のフライトならヨシ君と再合流できますので、それが良いのかも知れません。
2016. 8. 21 日
ブルージュで国際会議に出席していたクニ君とヨシ君が、12時にリェージュに着くので駅まで迎えにいきました。そしてBH本館にて、前もって原稿をチェックしておいたスキャンダラス計画からの第2章について、注意すべき点を説明しました。13時にはじめて、17時には終わったと思います。僕個人としてはロジックが追えるようになっており、注の書式もほぼ無傷だったので、1年におよぶ山籠もりの成果がだいぶ出ていると伝えました。
改良すべき点として、同じ単語を連呼するのを避けることや、自然な言葉を選ぶといったことがあります。また、ほぼ毎段落で「Bである。なぜならAだからだ。」という論述がくり返されるのですが、これはあまりに機械的なので、「AだからBだ。」という自然な順番に変更するように促しました。あまりにアルカイックな「而して」などと書かなくなったのは、おおきな成長です。
2016. 8. 20 土
昨日新しいキンドル版をリリースしたことにともなって、これまで出しているタイトルのジャケット写真を、ヘルメスで統一していたものから、いろいろ個性のあるものに変更しました。徐々にカタログ上でも反映されていくと思います。けっこう時間がかかりました。
2016. 8. 19 金
今年5月にパリのクリストフにインタヴュした内容の前半をメルマガで配信しましたが、それに加筆して BH キンドルの久々の新作としてリリースしました。ニコラ・コンヴェル版を復刻した背景、そしてマルセイユ・タロットの大アルカナの22枚とフィチーノの哲学がどのように関係しているのかに迫っています。コチラです!
2016. 8. 18 木
二日ほど根を詰めたので、今日はゆるくいきます。
来春のルネサンス学会は、シカゴで開催されます。応募していた「錬金術とドイツのキミア革命」と「日本におけるイエズス会の翻訳と翻案」という2つのパネル企画が採択されたという通知がきました。とくに前者に参加するアマデオ君とエリザベスは、ここのところ連戦連勝です。
2016. 8. 17 水
今日は数日前に送られてきていたスキャンダラス計画のための第2章をチェックしました。1年間も山籠りして研きこんだだけあって、僕でも途中でとん挫せずに議論を追えるようになっています。最終節などは、とても面白い議論です。まだポエムのように、同じ単語の連呼のクセが抜けきってはいませんが、全体としては大きく前進したと見て良いでしょう。たとえば20頁の原稿で50回も哲学と叫ばなくても、教えとか試みとか主張といった具合に工夫はできるはずです。とにかく日曜日に関係者一同が、BH本館に集合して話しあう予定です。
2016. 8. 16 火
今日は昨夜にチェックしたジオコスモス計画の序章と第1章を、もう一度じっくりと見直しして送りだしました。つづいて夕方には、第2章の作業に入りました。この段階で、「その」と「こと」が異様に多いことに気がつきました。序章と第1章にも同じ問題があります。う〜む、どうしましょうかね?
2016. 8. 15 月
ベルギーは祝日です。午前中に折りたたみ自転車を引きとる人が来ました。そのあとはジオコスモス計画のための初出一覧と後書きをみました。これは手直しというよりも、まだ意見をいう段階です。固有名詞があまりに多すぎるとか、分量が多いとかいった次元です。かぎられた紙幅の邦語の本で、知りあいの(日本語を読まない)外国人の名前を羅列するのは、あまり意味がありません。
テレジオ論文を提出する約束の日ですので、最終的な見直しをしています。今回はパラティノ・リノタイプをフォントとして採用したギリシア語のアクセント表示が、先方でもうまく出るか気になります。> そろそろ時間となるので、送りだしました。
夜になってから、ジオコスモス計画の序章と第1章をチェックしました。明日にもう一度じっくりと読みなおして、お返ししたいと思います。
2016. 8. 14 日
ジオコスモス計画のための結論をチェックしました。ひとつ残っていた大きな問題は解決したと思います。第7版としてお返ししました。
2016. 8. 13 土
ジオコスモス計画のための文献表が来ました。午前中をかけて半分くらいみましたが、まだ問題が多いので、どうしましょうか?困りましたね。
博論生のエリザベトが空の旅行カバンとともに、スキャン済みの本たちを受けとりに来ました。重かったでしょうが、かなりの数を引きとっていきました。彼女もアメリカ行のヴィザがとれたので、来週にはフィラデルフィアに向かって出発します。まずは、クレアのところにヤドカリしてアパートを探すことになります。
2016. 8. 12 金
偽パラケルスス会議のときにジェニーが編者となっている、ケンブリッジ国際会議からのキミアについての論集のための契約書にサインしました。出版を決めていたアッシュゲイト書店がラウトレッジ書店に吸収合併されてしまったので、この論集は後者から出版されるそうです。そう遠くないうちに校正刷りがくることでしょう。しかし年内の出版は、ちょっと怪しいでしょうね。もとの会議が2011年ですから、この論集もまた焦げついています。
豪華論集 『ルドルフ二世と錬金術』 の英語版の出版も、編者イヴォは今年の早いうちにといっていたのですが、すでに8月となっているので、これまた年越しとなってしまうかも知れません。悲観的な予想をすると、それが現実になってしまう気がするので良くないのですが。
そうえいば、ナンシーさんの80才を記念する論集も、去年の11月にその後の経過を聞いて以来、ウンともスンともいってきません。そうこうするうちにナンシーさんは85才になってしまいます。なかなか難しいものです、論集は。
2016. 8. 11 木
共同作業チームの管理者権限を付与してもらって、やっとドロップ・ボックスのビジネス版から脱出することができました。丸2日かかってしまいました。最初に届いた招待メールを読みもせずに同意してしまったのが失敗でした。なにが一番の問題かというと、ビジネス版ではそれまでの個人アカウントがチームに吸収され、別個の個人アカウントをつくることになりますが、そのときに最初のアカウントの容量の大半はビジネス版にもっていかれて、個人用は2ギガしかもらえないことです。これでは、さすがに少なすぎます。個人用を大きくするために、さらに別の契約を結ばないといけないのは変な話です。統合されてしまうスペースと個人用にとっておけるスペースを、こちらで自由に調整できれば問題ないのでしょうが、それはできないのだと思います。
逸見さんと桑木野君に教えていただいたデータをもとに、百科全書主義についての新コーナーを開設しました。18世紀の百科全書の運動よりも前の、とくにルネサンス・初期近代ではどういう動きがあったのかアプローチするためのプラットフォームです。まだ最初の一歩にすぎず、これから充実させていきます。
2016. 8. 10 水
クレアからテレジオ論文のプルーフ・リーディングが帰ってきました。さらに2か所ほど微調整して、その部分だけ見なおしてもらっています。これで完成でしょう。英語では先進的な研究がほとんどないので、結局のところテレジオがルネサンス期の自然哲学に占めている位置はひろく理解されてない感があるので、そんな状況に一石を投じられるだろうと思います。もとの伊語版ですでに本場イタリアの人々のリアクションは試してあるので、その点についても問題ないでしょう。
最初にカラブリアでの国際会議で発表したのが2008年、その論集がイタリアで出版されたのが2012年、そして今回の英語版が、おそらくは今後1〜2年後には出ることになるので2018年と見積もっても、10年のタイムラグがあります。それでも、2年前の米国科学史学会での発表でテレジオのセクションを挿入してエッセンスは投入してあり、ビル(ニューマン)が良い反応をみせてくれたのが印象に残っています。
2016. 8. 9 火
ジオコスモス計画の欠けている図版がドイツを経由して届きました。今回はライプニッツの写真です。手稿の写真を載せるのはシリーズでは最初となりますし、初期近代の著作家の手稿など見たことない人が多いでしょうから、なかなか価値あるものとなったかと思います。あと残りは一点、ステノの初期作品である博士論文のタイトル頁です。これは残存するものが、世界で2点しか確認されていない非常にレアなものです。
この作業の流れで、ドロップ・ボックスのビジネス版に連結することになったのですが、なにを間違ったのか、作業とは関係ないデータのすべてがリンクされてしまったのでリンクを外そうとしているのですが、管理者権限がないとダメということで、先方にお願いするしかありません。とほほ。
2016. 8. 8 月
午前中は、BHサロンのメンバー K さんの論文について1時間半ほど指導しました。果敢に海外進出を目指すこころざしが熱いですね!
2016. 8. 7 日
ついに本棚からの箱詰め作業は、ほぼ終了しました。あとはもう一箱分の雑貨をつめれば全体が完了です。
2016. 8. 6 土
午前中にもう一度、テレジオ論文の英語版をと読みなおして推敲しました。あとはクレアにプルーフ・リーディングしてもらって、週明けには編者のピエトロに提出したいと思います。タイトルは伊語版から変更して、「テレジオ、アリストテレス、ヒポクラテスのコズミック・ヒート」 Telesio, Aristotle and Hippocrates on Cosmic Heat としようと考えています。
2016. 8. 5 金
今日も集中して作業できて、なんとか長きにわたる宿題にメドがつきそうになりました。これはもう本当に去年の秋ごろからずっと、なんとなく気持ちとして重荷でした。テレジオ論文の第2弾の方は、もう少しじっくりと腰を落ちつけて仕上げたいのです。提出するべく原稿を、テレジオ論文の第1弾の英語版にさしかえて正解でした。明日あと一日ほど推敲しなおして、クレアにプルーフ・リーディングしてもらおうと思います。
2016. 8. 4 木
午前中はジオコスモス計画の結論の章を、再チェックしました。ただいま第6版です。また別件で、田邊さんとの編集作業も再開しました。
ついに今日は集中してテレジオ論集への寄稿の作成に入りました。出版された伊語のヴァージョンがもっとも完成度が高いので、まずは突貫工事で全体を英語になおしつつ、書誌スタイルを整えました。明日は、引用文の翻訳をしっかりと吟味したいと思います。
2016. 8. 3 水
そろそろ本当に気持ちを切りかえないといけないのですが、昨日のつづきでパラケルスス関係を調べていました。今日はいったんバーゼルから離れて、ズートホフ版全集の第13巻と第14巻を中心に探りをいれていました。副産物として、先週の発表を微調整しないといけないところを見つけました。忘れないうちに直しておきます。
2016. 8. 2 火
これから2週間は集中して、テレジオ論文の英語版を完成させないといけません。延ばしに延ばした締め切りの最終が8月15日です。> といいつつ、今日は朝にジオコスモス計画について話しあいをした後、昨日からの箱詰めのつづきをしました。まだ大きいのが2箱、小さいのが5箱ほど足りない感じです。必要な分量を予測するのは、なかなか難しいですね。
先々週からの流れでは、パラケルススのバーゼル時代の書き物について、いろいろ調べています。ここは成立年代が比較的にはっきりしているので、他よりも足場がしっかりしています。まずは1527年の夏学期からです。
De gradibus et compositionibus 『度数と調合について』
De modo pharmacandi 『調薬について』
Super Aphorismos 『ヒポクラテス「アフォリスム」注解』
De urinarium et pulsuum judiciis 『尿と脈の診断について』
De physiognomia medica 『医学観想学について』
2016. 8. 1 月
昨日の午後の帰還したわけですが、まだ気持ちは旅モードなのか、なんだか落ちつきません。> 午後には友人に手伝ってもらって、引越し用の段ボール箱を追加でさらに12個ほど入手してきました。これで足りるでしょうかね?まだかな?書籍はほぼすべて箱に入れ終わりました。あとはかさ張るものばかりです。
ああ、今回のメルマガを忘れていました!ということで、急いで偽パラケルスス国際会議で発表した入魂作「偽作者の書斎のなかへ:出版史にみる『事物の本性について』の誕生」を訳出してドロップしました。8月2日の配信です。今回は本当に準備がギリギリとなってしまい、十分に訳文の推敲はできませんでしたが、手に汗にぎるスリリングな展開が楽しめるかと思います。初期近代の本づくりや書籍のマーケッティングの視点からインテレクチュアル・ヒストリーに迫っています!