百科全書主義研究のプラットフォーム
ディドロとダランベールによる『百科全書』 Encyclopedie の計画は、18世紀を啓蒙主義の世紀としたシンボル的な偉業です。それ以前の西欧のインテレクチュアル・ヒストリー(知の営みの歴史)における「百科全書主義」encyclopedism は、どういうものだったのか?とくにルネサンス・初期近代の状況にアプローチするためには、どうすればいいのか?という疑問にこたえるべく、研究のプラットフォームを開設します。百科全書主義とは、百学の連環を意味し「普遍知」sapientia universalis
という概念で語られたり、伝統的な「記憶術」ars memoriae
と絡めて語られたりもします。ここでは、18世紀学者の逸見さんと16世紀学者の桑木野君から提供していただいたデータを出発点にして、これから徐々に内容を充実させていきたいと思います。
重要人物
ゲスナー(1516-1565)
ツヴィングリ(1533-1588)
アルドロヴァンディ(1522-1605)
ブルーノ(1548-1600)
カンパネッラ(1568-1639)
アルシュテート(1588-1638)
コメニウス(1592-1670)
キルヒャー(1620-1680)
日本語で何が読めるのか?
フランコ・ヴェントゥーリ 『百科全書の起源』 (法政大学出版、1979年)
トム・マッカーサー 『辞書の世界史:粘土板からコンピュータまで』 (三省堂、1991年)
ジョナサン・グリーン 『辞書の世界史』 (朝日新聞社、1999年)
パオロ・ロッシ 『普遍の鍵』 新装版 (国書刊行会、2012年)
メアリー・カラザース 『記憶術と書物:中世ヨーロッパの情報文化』 (工作舎、1997年)
フランセス・イエイツ 『記憶術』 (水声社、1993年)
ポーラ・フィンドレン 『自然の占有』 (ありな書房、2005年)
フランセス・イエイツ 『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』 (工作舎、2010年)
桑木野幸司 『叡智の建築家』(中央公論美術社、2014年)
逸見龍生編 『百科全書の時空:典拠・生成・転位』(法政大学出版会、2018年)
加藤聡 「科学事典の誕生と編纂:ジョン・ハリス『レクシコン・テクニクム』と王立協会をめぐって」 『思想』第1123号(2017年)、78-95頁
アン・ブレア 『情報爆発:初期近代ヨーロッパにおける情報管理術』 (中央公論新社、2018年)
基本中の基本
Cesare Vasoli, L’enciclopedismo del Seicento (Napoli:
Bibliopolis, 1978; repr. 2005).
『1600年代の百科全書主義』。コメニウスの普遍知についての著作の背景を描きだします。
Anthony Grafton, The Footnote: A Curious History
(Cambridge MA: Harvard University Press, 1999).
『脚注:奇妙な歴史』
Howard Hotson,
Commonplace Learning: Ramism
and its German Ramifications, 1543-1630 (Oxford: Oxford University Press,
2007).
『コモンプレイス型の学習:ラムス主義とドイツにおけるその広がり』
Ann Blair, Too Much to Know: Managing Scholarly
Information before the Modern Age (New Haven: Yale University Press, 2011).
『知るには多すぎて:近代以前の学術情報の整理』
Richard Yeo, Notebooks, English Virtuosi and Early Modern
Science (Chicago: University of Chicago Press, 2014).
『ノート、英国の博識者たち、そして近代科学』
基本論集
Anni Becq
(ed.), L’Encyclopedisme (Paris:
Klincksieck, 1991).
『百科全書主義』。中世から初期近代まで。
Franz M. Eybl et al.
(eds.), Enzyklopädien der Frühen Neuzeit (Tübingen:
Niemeyer, 1995).
『初期近代の百科全書』
Christel Meier
(ed.), Die Enzyklopädie im Wandel vom Hochmittelater bis zur Frühen Neuzeit (München:
Fink, 2002).
『前期中世から初期近代までの百科全書』。1996年のシンポジウムから。
原典アンソロジー
J. J. Berns & W. Neuber (eds.), Das enzuklopädische
Gedächtnis der Frühen Neuzeit (Tübingen: Niemeyer, 1998).
『初期近代における百科全書的な思考』。記憶論をめぐる原典の抜粋とドイツ語対訳集。
展覧会カタログ
Tous les savoirs du
monde de Sumer au XXe siècle (Paris:
Bibliothèque nationale de France, 1996).
『シュメール文化から現代のまでの普遍知』