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初期近代の生物学 (Biology) に関する良書を集めるコーナー
日本における初期近代の生物学の歴史研究は基本的に間違った土台の上に築かれています。なぜかと言うと、生物学史研究の上で20世紀の最も重要な Jacques Roger の著作やその他の重要な貢献を果たしてきた数々の仏語の文献を読んだこともない人々が築き上げてきたものだからです。また、17世紀後半に活躍した生物学者の多くはイタリア人ですが、そういったイタリアの科学者を研究したイタリア語で書かれた優れた文献が多いことも状況を悪化させることに貢献しています。このコーナーでは、そういった間違った歴史研究を修正して行くための重要な良書を徐々に収めて行こうと思います (ちょっと兆発的過ぎるかな?)。>
姉妹編コーナー「メディカ」もよろしく
新刊
その1
『デカルトからライプニッツまでの生物モデル』
Francois Duchesneau, Les modèles du vivant de Descartes à Leibniz,
Paris, Vrin, 1998.
その2
『不可視の世界 : 初期近代哲学と顕微鏡の発明』
Catherine Wilson, The Invisible World :
Early Modern Philosophy and the Invention of the Microscope,
Princeton, Princeton UP, 1995.
その3
『生命の概念の歴史』
Andre Pichot, Histoire
de la notion de vie, Paris, Gallimard, 1993.
その4
『一個の科学史のために』
Jacques Roger, Pour une
histoire des sciences à part entiere, Paris,
Michel, 1995.
これまでに発表された論文を集めた論集です
その5
『マルッチェロ・マルピーギ:解剖学者そして医師』
Domenico Bertoloni Meli (ed.), Marcello
Malpighi : Anatomist and Physician, Firenze, Olschki,
1997.
その6
『フランチェスコ・レディ:近代科学の一主導者』
Walter Bernardi & Luigi Guerrini (eds.), Francesco Redi : Un protagonista
della scienza moderna, Firenze, Olschki,
1999.
その7
『生の仕組み:17世紀における顕微鏡』
Marian Fournier, The Fabric of Life : Microscopy
in the Seventeenth Century, Baltimore, Johns Hopkins UP, 1996.
その8
『生命のカタチ:霊魂の末期アリストテレス主義的な理解』
Denis Des Chene,
Life’s Form : Late Aristotelian Conceptions of the Soul,
デニスの『生命のカタチ:霊魂の末期アリストテレス主義的な理解』
Denis Des Chene, Life’s Form : Late Aristotelian Conceptions
of the Soul, Ithaca, Cornell UP, 2000 は、イエズス会を中心とするルネサンスのアリストテレス主義者の霊魂論に見られる生命概念を取り扱ったもので、この種の本としてはパイオニア的な立場をしめるものです。著者自身はデカルト学者としての関心から、イエズス会士を中心に分析対象を選んでいますが、パドヴァの伝統には殆ど触れませんし、スカリゲルの影響を色濃く受けたアルプス以北の状況も扱われていません。もう一つの問題点は、デニスは哲学者だけを取り扱うのですが、生命についての議論を追うために不可欠だと思われる医学教育を受けた自然哲学者のアイデアの分析がない点です。しかし、基本的に原典テクストに密着した分析を展開し、非常に多くのラテン語の引用とその英訳を提供しています。2次文献が足りない気がしますが、参照するべきマテリアルが少ないということでしょうか?いや、むしろ探せばパドヴァ霊魂論のコ―ナーに挙げたようなものがいろいろあると思うのですが。
その9
『初期近代哲学における動物発生の問題』
Justin E. H. Smith, The Problem of Animal Generation in Early Modern Philosophy,
その10
『中世とルネサンスにおけるアリストテレスの動物』
Carlos Steel et al. (eds.), Aristotle’s Animals in the Middle Ages and
Renaissance, Louvain, Leuven UP, 1999.
その11
『アリストテレスの動物学とルネサンスの注釈家たち』
Stefano Perfetti, Aristotle’s
Zoology and its Renaissance Commentators (1521-1601), Louvain, Louvain UP, 2000.
その12
『生きる事物:1600-1800 の有機的作用モデル』
Tobias Cheung, Res Vivens: Agentenmodelle organischer Ordnung, 1600-1800,
Freiburg, Rombach, 2008
霊魂論との関係から
その1
『デ・アニマ:16-17世紀のアリストテレス的霊魂論の受容』
Sascha Salatowsky,
De anima: Die Rezeption der
aristotelischen Psychologie
im 16. und 17. Jahrhundert, Amsterdam,
Grüner, 2006
その2
『認知から知識までの可知的種:ルネサンス期の議論、末期スコラ主義、そして近代哲学における可知的種の抹消』
Leen Spruit,
Species Intelligibilis from Parception
to Knowledge: Renaissance Controversies,
Later Scholasticism and the Elimination
of the Intelligible Species in Modern Philosophy,
その3
『霊魂の科学:16-18世紀』
Fernando Vidal, Les sciences de l’âme, XVIe-XVIIIe siècles,
Paris, Champion, 2006.
古典書
その1
Henri Daudin,
『リンネからジュシュ-まで:植物学と動物学における分類の方法と系の概念』
De Linne à Jussieu : méthodes de la
classification et idée de série en botanique et en zoologique
(1740-1790),
Paris, F. Alcan, 1926.
『キュビエとラマルク:動物学的類と系の概念』
Cuvier et Lamarck : les classes zoologiques et l’idée de série animale (1790-1830),
2 vols, Paris, F. Alcan, 1926.
この2文献、実は、アーサー・ラヴジョイの『大いなる存在の連鎖』と
ミッシェル・フーコーの『言葉と物』のもとネタです。
その2
Emile Guyenot,
『17-18世紀における生命の科学 :進化の概念』
Les sciences de la vie aux XVIIe et XVIIIe siècles : l’idée d’évolution,
Paris, A. Michel, 1941.
その3
Emile Callot,
『16世紀における生命の科学の再生』
La renaissance des sciences de la vie au XVIe siècle,
Paris, PUF, 1951.
その4
Karl E. Rothschuh,
『生理学の歴史』
Geschichte der Physiologie,
Berlin, Springer, 1953.
その5
Georges Canguilhem,
『17-18世紀における反射の概念の形成』
La formation du concept de reflexe aux XVIIe et XVIIIe siècles,
Paris, PUF, 1955.
これは、現在邦訳(法政大学出版)があります。
その6
Jacques Roger,
『18世紀のフランス思想における生命の科学』
Les sciences de la vie dans la pensée française du XVIIIe siècle,
Paris, A. Colin, 1963; 2nd ed.
18世紀と謳ってますが、実際は16-17世紀も大変細かく分析しています。
生物学史の永遠の金字塔。最近英訳されました。
その6-2
『熱と生命:動物熱の理論の発展』
Heat and
Life : The Development of the Theory of Animal Heat,
その7
Howard B. Adelmann,
『マルチェロ・マルピーギと発生学の発展』
Marcello Mappighi
and the Evolution of Embryology,
5 vols, Ithaca, Cornel UP, 1966.
その8
Thomas S, Hall,
『生命と物質の概念:一般生理学の歴史研究』
Ideas of Life and Matter : Studies in the
History of General Physiology, 600 B.C.-1900 A.D,
Chicago, Chicago UP, 1969.
これは、邦訳されているのでコメントは省略です。
その9
Audrey B. Davis,
『英国(1650-1680)における循環生理学と医化学』
Circulation Physiology and Medical
Chemistry in England 1650-1680,
Lawrence (Kansas), Coronado, 1973.
その10
Theodore M. Brown,
『機械論哲学と「アニマル・エコノミー」』
The Mechanical Philosophy and the
"Animal Oeconomy",
New York, Arno, 1981.
その11
Francois Duchesneau,
『啓蒙の世紀の生理学:経験主義、モデル、そして理論』
La physiologie
des lumières : empirisme, modèles et théories,
Den Haag, Nijhoff, 1982.
その12
Ilse Jahn & al. (eds.),
『生物学の歴史:理論、手法、機関...』
Geschichte der Biologie : Theorien, Methoden, Institutionen...
その13
Walter Bernardi,
『胚の形而上学:マルピーギからスパランツァーニまでの生命の科学と哲学』
Le metafisiche dell’embrione : scienze della vita e filosofia da
Malpighi a Spallanzani,
Firenze, Olschki, 1986.
その14
Francois Duchesneau,
『細胞理論の誕生』
Genèse de la théorie celluraire,
Paris, Vrin, 1987.
その15
Mirko D. Grmek,
『最初の生物学革命:17世紀の生理学と医学についての論考』
La première révolution
biologique : réflexions sur la physiologie et la médecine du XVIIe siècle,
Paris, Payot, 1990.
デカルトと生物・医学
デカルトに関しては最近の研究動向のセレクションです
その1
G.A. Lindeboom,
『デカルトと医学』
Descartes and Medicine,
Amsterdam, Rodopi, 1979.
その2
Richard B. Carter,
『デカルトの医学思想:「精神-身体」の問題への有機的な解決策』
Descartes' Medical Philosophy : The
Organic Solution to the Mind-Body Problem,
Baltimore, Johns Hopkins UP, 1983.
その3
Annie Bitbol-Hesperies,
『デカルトにおける生命原理』
Le principe de
vie chez Descartes,
Paris, Vrin, 1990.
さらに詳しくは、E. Homna
氏のサイトLHの
デカルトと医学の頁を参照下さい。
ハーヴェイ
パーゲル以降のハーヴェイ論のセレクションです
その1
Walter Pagel,
『ウィリアム・ハーヴェイの生物学的アイデア』
William Harvey's Biological Ideas,
Basel, Karger, 1967.
その2
Walter Pagel,
『ハーヴェイ再考』
New Light on William Harvey,
Basel, Karger, 1976.
その3
Jerome Bylebyl (ed.),
『ウィリアム・ハーヴェイとその時代』
William Harvey and his Age,
Baltimore, Johns Hopkins UP, 1979.
その4
Robert G. Frank, Jr.
『ハーヴェイとオックスフォード生理学者:科学的アイデアと社会的相互作用』
Harvey and The Oxford Physiologists :
Scientific Ideas and Social Interaction,
その5
Roger French,
『ウィリアム・ハーヴェイの自然哲学』
William Harvey's Natural Philosophy,
Cambridge, Cambridge UP, 1994.
発生学
その1
Jean Rostand,
『存在の形成』
La formation de l'être,
Paris, Hachette, 1930.
その2
F.J. Cole,
『生殖発生の初期理論』
Early Theories of Sexual Generation,
Oxford, Clarendon, 1930.
その3
A.W. Meyer,
『発生学の誕生』
The Rise of Embryology,
Stanford, California UP, 1939.
その4
Joseph Needham,
『発生論の歴史』
A History of Embryology,
2nd ed.
その5
Elisabeth B. Gasking,
『発生の研究 (1651-1828)』
Investigation into Generation 1651-1828,
Baltimore, Johns Hopkins UP, 1962.
その6
Jacques Roger,
『18世紀のフランス思想における生命の科学』
Les sciences de la vie dans la pensée française du XVIIIe siècle,
Paris, A. Colin, 1963:
その7
Howard B. Adelmann,
『マルチェロ・マルピーギと発生学の発展』
Marcello Mappighi
and the Evolution of Embryology,
Ithaca, Cornel UP, 1966.
その8
John Farrey,
『デカルトからオパーリンまでの自然発生論争』
Spontaneous Generation Controversy from
Descartes to Oparin,
Baltimore, John Hopkins UP, 1974.
その9
L.C.Palm &H.
A. M. Snelders) (eds. ),
『アントニ・ファン・レーウェンフック:デルフトの科学者の生涯と仕事』
Antoni van Leeuwenhoek 1632-1723 : Studies on the
Life and Work of the
その10
Walter Bernardi,
『胚の形而上学:マルピーギからスパランツァーニまでの生命の科学と生理学』
Le metafisiche dell'embrione : Scienze della vita e filosofia da
Malpighi a Spallanzani,
Firenze, Olschki, 1986.