スピリトゥス研究のプラットフォーム
中世哲学研究の世界的な聖地であるベルギーのルーヴァン大学で、2023年12月中旬に開催される国際会議「精気:古代末期から初期近代までの物質と非物質の境界を描く」に招待されました。ここでは、国際会議をめぐる関連事項をまとめておきます。ちなみに、プネウマ・スピリトゥス・精気については基礎文献をあつめた「用語集」をご覧ください。
国際会議
「精気:古代末期から初期近代までの物質と非物質の境界を描く」
Spirit: Mapping the Boundaries of the Material and
the Immaterial from Late Antiquity to the Early Modern Period
(Louvain, December
14-16, 2023)
「医学と哲学のはざまの精気:ドメニコ・ベルタッキの『精気について』(1584年)」
“Spirits between Medicine and
Philosophy: Domenico Bertacchi’s De
spiritibus (1584)”
1 .イントロダクション Introduction
2. フィチーノ、フェルネル、パパレッラ Ficino, Fernel and Paparella
3. ベルタッキの『精気について』 Bertacchi’s On Spirits
3-1. 精気と霊魂 The Spirit and the Soul
3-2. 霊魂の座あるいは乗り物 The Seat or Vehicle of the Soul
3-3. 精気はアイテール的なのか? Is the Spirit Ethereal?
3-4. 霊魂の道具 The Instrument of the Soul
4. むすび A Brief Conclusion
国際会議までの流れ
2023. 12. 18 月
火曜日までにということなので、旅費の払戻しのための書類をルーヴァンに提出しました。1200ドルを超えてますが、アメリカからなので仕方ありません。よろしくお願いします。
そのほかの領収書を整理しています。招聘先は現地までの旅費と現地の宿泊費は出しますが、現地入り前のブリュッセルの宿泊などはカヴァーされないので、科研費が助かります。ただし今年度分はそろそろ枯渇しそうなので心配です。
2023. 12. 17 日
6時には目が覚めてしまいました。昨日のうちにホテルから駅に移動する方法を考えていたので、スムーズに予定より一本速い電車で空港に向かいました。チェックインまで少し待ったあと、荷物を預けて出国手続きをすませ、空港の免税店でアントワープのエリクシルを入手しました。フライト自体は定刻どおりにニューヨークに到着し、そこから電車で家に向かいました。
2023. 12. 16 土
国際会議は昨日で終わったのですが、もともとは今日も日程が入っていたので、帰りのフライトは明朝になります。非常にスローな動きで一日を過ごしています。
2023. 12. 15 金
2日目の今日は朝から夕方までプログラムが詰まっています。最初の発表は、フィンランドの神学研究者ペッカ・カルカイネンによる「初期ルター派における人間の精気」“Human Spirit in Early
Lutheranism” でした。ラテン語テクストを中心にメランヒトンまでのルター周辺の神学者たちの
spiritus についての言説を集めてくれていて、とても勉強になりました。
2本目は僕の発表で、上手くいったと思います。ベルタッキの議論を追っていくものなので、聞いているだけでは難しいところもあるかも知れませんが、宇宙論的な次元が論争をまき起こし、それにたいするベルタッキの反応を示せたのではないかと思います。つづいて3本目はエリザベスの発表で、ゼンネルトについてまとめていましたが、博論からの話で目新しいものではなかった気がします。
ランチをはさんで、午後の一本目はクリストフによる「初期近代原子論者における精気」“Spirit in Early Modern
Atomists” で、ブルーノ、ヒル、バッソン、マグネン、ガッサンディという初期近代の原子論者における精気をめぐる言説を見ていくものでした。話しっぱなしではなく、論文にして欲しいところです。
残念ながらサラ・ハットンによるコンウェイ夫人についての発表は病欠のために聞けず、最後に遅くなってギリギリで駆けつけたマッテオ・ファヴァレッティによる「ヴォルフとライプニッツにおける純粋な精気」“Wolff and
Leibniz on Pure Spirits” で、天使をめぐる議論が中心を占めていました。
この会議からの出版物として Early Science and Medicine 誌での特集号にすることを、国際会議の主催者であるダヴィデは狙っているようです。論文化するために半年くらいの十分な時間をいただけると嬉しいです。
2023. 12. 14 木
午後1時の集合で簡単なランチをいただきつつ、参加者たちと歓談したあと、2時から国際会議が開始されました。最初は、ガレノスの翻訳を精力的に進めているピーター・シンガーによる「ギリシア・ローマの哲学と医学における神と物質のはざまにある精気」 “Pneuma
between God and Matter in Greco-Roman Philosophy and Medicine” です。霊魂の乗り物であるオケーマの話が結構でてきたので、論文となって読むのが楽しみな一本となりました。彼は僕が寄稿している『ガレノス必携』の編者でもあります。
2本目は、イスラム学者のエルフィラ・ヴァケルニヒによる「フナインの『医学問題集』とその注解者たちにおける精気」“The
Spirits in Hunain’s Medical Questions and Its Commentators” でした。 つづいて、マリレナ・パナレッリによる「ガルボのディーノによる身体的な精気にたいする医薬の作用」“The
Action of Medicaments on Bodily Spirits according to Dino del Garbo” で、彼女はチャールズさんの学生のようです。
1日目の最後は、マテュー・クレムによる「1300年ごろの北イタリアの医学哲学における生命精気」“The
Vital Spirit in Northern Italian Medical Philosophy ca. 1300” という発表で、アーバノのピエトロとその注解者トリジャーノにおける精気についての発表で、発生論に注目することから星辰の影響についての議論が重要な位置をしめていました。
こうして全部で4本の発表があり、質疑では4回とも僕が最初に質問をしました。医学史の発表がつづいたかたちですが、2日目になるとルター派の議論やルネサンス・プラトン主義の影響についての僕の発表もあるので、哲学・神学の側面も出てくるかと思います。
しかしルーヴァンの研究者の層は厚いですね。古代末期の新プラトン主義と中世のアリストテレス主義については、すごい知識をもったポスドクや院生がゴロゴロしています。
2023. 12. 13 水
やっと時間ボケなく眠ることができました。今日はカラダを休めて、明日からの国際会議に備えたいと思います。
2023. 12. 12 火
今日はブリュッセルからルーヴァンに移動して、国際会議用の宿舎に入りました。会議自体は木曜の午後からなので、休息しつつ、おとなしくパワポの準備などを進めたいと思います。発表原稿はできています。
結局のところ、夕方まで部屋のなかで作業を断続的につづけました。パワポ、書類、書類。そのあとにイルミネーションはどうだろうとかと思い、旧市街に出てみました。市庁舎の電飾がすごいことになっていました。それから中央図書館前の広場に向かうと、クリスマス・マーケットが展開されています。25年もベルギーに住んだ割には、ルーヴァンの様子を見ることはなかったなと感慨ぶかく思いました。
2023. 11. 29 水
ベルギーのルーヴァンでの国際会議のための発表原稿は完成しましたので、関連する文献をチェックしています。とくに「疑念から確信へ:ガレノスの自然精気の概念化と解釈における諸相」Julius
Rocca, “From Doubt to Certainty: Aspects of the Conceptualization and
Interpretation of Galen’s Natural Pneuma,” in Blood, Sweat and Tears: Changing Concepts of Physiology from Antiquity
into Early Modern Europe, ed. Manfred Horstmanshoff et al. (Leiden: Brill,
2013), 629-659 という論文は、あまり知られていない気もしますが、すごい力作でした。
この論文は自然精気と銘打っていますが、生命精気と動物精気もあつかい、ガレノスによる素描から後代における定式化までの過程を追っています。とくに古代アレクサンドリア、そしてフナインの役割に光を当て、これまでガレノス主義をめぐる記述で曖昧だった部分が明確になりました。革命的です。ギリシア、イスラム、ラテンと3つの文化圏を横断する論考で、素晴らしいの一言につきます。
矢口さんが邦訳したフナインの『問題集』や、橋爪さんが訳した『イスラーム医学』を読んだ方々も、もうすでに読んでいるかも知れませんが、もしまだなら、おススメです。
2023. 11. 25 土
どうも昨日は体調がイマイチで、思ったように作業することができませんでした。今日から巻きなおします。>
だいぶ集中して、ほぼ完成に近づいてきました。3400語ですから、35分前後で話せる感じです。持ち時間は50分ですから、質疑の時間も十分でしょう。結局のところ、医学と哲学の交錯を考えるということで、第1書に議論を絞ることにしました。
2023, 11, 24 金
数年前にマドリッドでの国際会議で、精気をめぐるルネサンスの論争について発表したのですが、発表原稿を論文にしなかったので、部分的に切りだせば導入部に使えそうです。それを加えても、粗削りの状態で3600語なので、40分に欠けるくらいの分量となりちょうど良さそうです。ということで、これから推敲をかさねて磨きます。
2023. 11. 23 木
今日は、ルーヴァンでの発表原稿の導入部の流れを練っています。フィチーノとフェルネルの話を中心にして、その後の精気についての議論がどのように展開したのかを、まとめたいと思います。
2023. 11. 22 水
午後は、昨日の作業のつづきとして、刈りこみを進め、3000語まできました。なんだか「医学と哲学のあいだにある精気」という発表原稿の本体は、第1書の議論だけで良いかも知れないなという気になってきました。あとは、イントロと著者以前の議論をまとめる部分をつけたせば、それで完成かも知れません。あと2週間もあれば余裕だなと見えてきました。
2023. 11. 21 火
今日は第1書の枝葉末節を切りおとす作業を進めました。ここだけで、6000語ほどあります。
2023. 11. 20 月
なんとか今日の頑張りで、第2書をラフにまとめることができました。明日からは、第1書と第2書から枝葉末節を切りおとして、それぞれのパートを1000語くらいに絞りつつ、発表原稿のかたちに近づけたいと思います。
2023. 11. 18 土
なんとか第1書の議論をまとめることができました。まだまだラフなもので、矛盾や不明瞭な点が多いのですが、なにが著者にとって重要なのか明確になってきたと思います。いったん終了して、つぎは第2書に入りたいと思います。3日くらいでなんとかしたいと思います。
2023. 11. 17 金
第1書の議論をまとめる作業をつづけています。あと1日で、最初のラフなまとめは終われるかと思います。
2023. 11. 15 水
そのあとは、いま遂行している作業のつづきとして、第1書の前半を読みくだして執筆をはじめました。議論が面白いところを抽出して、ラフにまとめていきます。明日は、第1書の後半で同様の作業を進めます。
2023. 11. 14 火
あとちょっとで、いま読んでいる第2巻も終わります。明日でしょうね。
2023. 11. 13 月
今日は、いま読んでいるテクストの第2巻の冒頭の4章分を読みながら訳しています。
2023. 11. 12 日
とりあえず、2週間のあいだにできるだけ国際会議のための発表原稿の作業を進めないといけません。
2023. 11. 11 土
国際会議の準備を進めているところですが、今日は朝から生配信があるので、スローな動きとなります。
2023. 11. 10 金
とてもラフなのですが、なんとか第1書を終えることができました。ルーヴァンでの国際会議までちょうどあと1カ月なのですが、間に合うか心配です。というよりも、良い切り口を見出せるかといった方が良いかも知れません。
2023. 11. 9 木
最初はいつも五里霧中なのですが、だんだんと著者のクセや好き嫌いなどが見えてくるものです。
2023. 11. 8 水
もくもくと昨日の作業のつづきをしています。淡泊な記述で、すみません。
2023. 11. 7 火
ラテン語を読んで、ラフに訳しています。じつは10年前に写経してあったテクストでした。
2023. 10. 2 月
12月のルーヴァン大学での国際会議では、スピーカーの人選から協力しているのですが、幾人か僕が推薦して選ばれた人たちのなかにはライアナもいます。今日は主催者から連絡があり、発表の論題と要旨、そして各人の滞在日程を聞かれたので、とりあえず滞在日程を知らせました。国際会議そのものは14日から16日ですが、12日に現地入りするので、運営側と調整をしないといけません。
2023. 8. 8 火
12月にルーヴァンで開催される国際会議のために、航空券を入手しました。すこし長めに滞在します。
12月7日 ニューヨーク – 12月8日 ブリュッセル
12月17日 ブリュッセル – 同日 ニューヨーク
2023. 4. 28 金
今年12月にベルギーのルーヴァンで開催される国際会議に招待されました。