僕の本が出版されました!

 

 


ルネサンスの物質理論における種子の概念
マルシリオ・フィチーノからピエール・ガッサンディまで
 
Le concept de semence dans les théories de la matière à la Renaissance
de Marsile Ficin à Pierre Gassendi

 

Brepols, 2005.

 

Publié avec le concours de la Fondation Universitaire de Belgique

 

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メイキング風景

 

2002. 03. 26

  ついに、僕の本のフロッピーを編集部に出してきました。心配した文字化けは、ほとんど無いみたいです。やはりギリシア語はダメですね。それだけ別に対処しなければなりません。編集部では、マック仕様の Frame Maker というソフトを使うみたいです。Brepols 書店との契約書は後になります。今年中に出るよう最善の努力をすると言ってもらえました。ただし、索引は自分で作らなければなりません。世界各国の主要な学術雑誌に配るプレス用とは別に、10冊ほど著者コピーが貰えます。表紙の図版は最後に選べば良いそうです。取り敢えず、これから担当の Daniela が、版組みを始めます。どのくらいかかるでしょうか?版組みした校正刷りから索引をおこす訳です。

 

 

2002. 05. 27

ボスと久しぶりに対面しました。「ボイル全集の書評を早く書かないと、君の本を出さないよ」と、いきなり脅しが入りました。笑いながらも、これでけっこう本気だから怖いです。CNRS の結果を報告して、本の出版の作業状況を聞きました。国際科学史アカデミー叢書から今年出される本の三番目に入っているということで、だいたい10月〜11には、何とかなるだろうということです。もう一度、ボスが目を通して、間違いはそれほど無かったと言われたので、安心しました。夏のヴァカンスにどこにも行かず、去年の後半全部を費やして、心血を注いだものですから、ベストは尽くしました。それでも、結果を聞くまでは、怖かったです。校正インデックス作成のタイミングが気になったのですが、9月頃になるだろうとの事です。物事が順調に進んでいるので、嬉しい限りです。ボスは、僕の本が叢書の目玉になると考えているようで、非常に熱心なので、安心してお任せです。

 

 

2003. 2. 4

ついに、僕の本校正刷り前半分がロンドンに着ました。パリシーまでの章で350頁あります。ちょっと単純計算すると、全体ではちょうど600頁となりそうです。国際科学アカデミー叢書の70(新シリーズでは第33巻) という番号まで分かりました。ちなみに、発売元は、中世キリスト教史ではお馴染みのブレポスル書店です。まだまだいろいろ版組みの作業過程で出た問題を直すために、何回も何回も読み直さなければいけませんが、議論などは変えるつもりはありません。特に注意する点は、ウィンドウズ Word >マック Pagemaker へのファイル変換の際に起きやすい問題 (斜体字小型大文字、そして特殊外字)です。これは、これまでの日本向け原稿の経験から学んだことです。> しかしですね。こりゃ大変ですよ。とんでもない分量です。最近は、200頁で一冊にする人が多いのに、これは3冊分です。読むのも3冊分、校正するのも3冊分。やれやれ。

 

 

2003. 5. 8

  久々にボスに会ってきました。僕の本の進み具合について、短いながら主に話しをしました。インデックスは入れることになり、インデックス作りに入る前に、これから2ヶ月で校正を済ませることになります。これで、6月末までのメインの仕事が決まりました。ボスとの面会の後は、担当のダニエラと版組みの細かい点にいろいろ話をし、表の組み方を修正しました。こういう作業は、メールや電話よりも、パソコンの画面を一緒に見ながらいじくった方が百倍も速く作業が進みます。やはり、リェージュで作業するのが正解でした。ただし、彼女は9月末から産休に入ってしまうので、その前に全行程を終わらせなければなりません。この感じで上手く行けば、僕の本は秋に出そうです。

 

 

2003. 5. 9

 本のジャケットの背やブレポルスのサイトのカタログ用の売り文句も自分で考えないといけないようです。やっぱり、刺激的にしないといけないのでしょうかね?といっても、日本の本のオビとは、性格が異なるものですので、飛び道具ではなく、地に足のついたモノでないといけないでしょう。以下、ナレーションとして現在形だけで雛型を書いてみました。どうでしょうか?

 

ルネサンスの種子の理論は、中世スコラ哲学の実体形相の理論と17世紀機械論哲学の分子概念を結ぶ連鎖のミッシング・リンクである。古代ストア派の「ロゴイ・スペルマティコイ」や聖アウグスティヌスの「種子的理性」だけではなく、ルクレティウスの「事物の種子」の概念までを包含しているルネサンス型の種子の理論は、フィレンツェのプラトン主義者マルシリオ・フィチーノの形而上学的宇宙論中で誕生する。不可視の種子は、世界霊魂中にある理性から由来し、自然の事物の形相を質料中に生み出すのである。仏人医師フェルネルはフィチーノの理論を大学医学に導入し、一方でパラケルススは独自の解釈を『創世記』に語られる宇宙生成論の枠組み中で発展させる。この二人の理論に立脚して「種子の哲学」とでも呼べる体系を確立するのが、デンマーク人ペトルス・セヴェリヌスである。パラケルスス派の化学哲学者達によって、彼の理論は中世錬金術における「金属の種子」の概念と結びつきながら変容し、17世紀前半の物質理論に甚大なインパクトを与える。実のところ、化学者ファン・ヘルモントや原子論者ガッサンディは、セヴェリヌス経由の種子の概念を下に、それぞれの物質理論を築いていく。こうして、ルネサンス型の種子の理論は、粒子論的な解釈を与えられることで、古代原子論では説明し得なかった諸問題に答えを与えるものとして科学革命期の物質理解に大きな影響を及ぼすのである。

 

 

2003. 5. 10

  昨日、一日の校正作業でどこまで進むかテストしてみました。テクストを読みながらで50頁、その後は集中力が鈍ったので注だけに切り替えて120まで行きました。しかし、僕としては原稿提出時に完璧をきしたつもりでしたが、編集のダニエラが手を加えたところに、いろいろ間違いや曖昧な箇所が多くあります。特に、同じ章で一度出たレフェランスに関しては、著者 (年号) の形式を採用していましたが、それが全て、op cit 形式に変えられています。しかし、替え方が統一されていません。これでは、どれが取るべき方法か分らないので、一度きっちり話し合って確認した上で、やっていった方が良さそうです。

 

 

2003. 5. 12

僕の本の校正作業を進める上で確認しなければいけない点を担当のダニエラと議論しました。当面の疑問点は解決しました。これで、先に進めることが出来るでしょう。また、問題が出れば、また相談しに行きます。今日はその後、注の部分だけを校正していきました。パリシーの章までの前半320頁が終わりました。最後の方は、集中力が途切れ気味でしたから、また日を改めて目を通さなければなりませんが、それほど大きな問題はなくなりました。頻出する複数巻組みの Thorndike 『魔術と精密科学の歴史』と Partington 『化学の歴史』の表記をどうするか (辞典類のように特別な省略形を新たに導入するか) 迷ってます。

 

 

2003. 8. 23

  僕の本の校正作業は次の段階に入っています。この木曜、金曜と、担当のダニエラの横に張り付いて、出来上がる修正校のチェックをしています。しかし、彼女、妊娠9ヶ月目なので、お腹の大きさは尋常ではないです。いつ産気づいてもおかしくない状態だそうで、横で作業していると何だか、ちょっと怖い感じもします。僕としては、本の作業が終了してから産気付いて欲しいのですが、こればかりは自然の成り行きですから、こちらの都合の良いようには行かないでしょう。運が悪いと、作業の真っ只中で突然来るかもしれません。> 表紙カヴァーの図版も、ほぼ決まりました。

 

 

2004. 11. 17

  来た、来た、来た〜!!ついに、ついにですよ、僕の本も印刷所に入ったということで、ブレポルス書店のカタログに紹介ページが復活しました。来年2月公刊の予定で、値段は約60ユーロです。1万円くらい行ってしまうかな?と思っていたので、少し安心しました。最後の最後で、血迷ってブリル書店に乗り換えて、定価2万以上にならなくて良かったと思います。

 

 

2005. 1. 17

  取り敢えず、懸案となっている僕の本の下刷りのチェックに行って来ました。この段階のものを著者自身がチェックする制度が日本の出版界に存在するのか知りませんが、欧州では良くあることみたいです。40頁くらいで束になった小冊子が幾冊も積み重ねられて、ハードカヴァーはかかっていなく、それぞれの冊子も糸ではなく、ホチキスだけで綴じられていますが、実際の本になる本当に直前の姿で、実に感動モノです。白黒コピーの状態ですが、カヴァー図案の入ったジャケットも見ることが出来ました。ボルドー会議に間に合うか気になったので聞いてみたのですが、この段階からは作業は速く、だいたい2〜3週間でモノが出てくるのではないか?ということです。純粋に編集側の人事の都合とはいえ、ここまで丸々3年も待たされた挙句の果ての3週間ですが、短いようで永遠(アイオーン)のように長く感じるかもしれません。ジャケット用に叢書全体で統一されたフォーマットに僕の選んだ図版がマッチするか心配だったのですが、なかなかです。さすがは、銅版画の神様テオドール・ド・ブリー

 

 

2005. 2. 23

 ボルドー会議僕の本を持って行けないか、あるいは少なくとも宣伝用のパンフレットなどは用意してくれるのか、出版元のブレポルスに質問する手紙を昨日送ったのですが、今日すぐにメールで編集部長から返事が来ました。それによると、おお!今週の月曜日に既に僕の本はプレス機を出て、ほぼ公刊された状態に入ったそうです。そのうち、僕の分もウチに届くとのこと。こ、これは、素晴らしい

 

 

2005. 2. 26

  おお!ついに僕の本が来ました。午後になったので、もう今日は来ないなと諦めていたのですが。感動です。> 伝統的な布張り+紙ジャケットではなく、老舗ブリル書店同様に最近流行の一体成型になっています!表紙イラストは有名な17世紀初頭の天才銅版画家テオドール・ド・ブリーが、ロバート・フラッドの傑作『両宇宙誌』(オッペンハイム、1617年) のために製作した連作のうちの一枚で、天地創造の最初に神の御言葉フィアット(「光あれよ」 Fiat Lux の「あれよ」 Fiat :旧約聖書『創世記』1章3節) が世界の種子として蒔かれ、そこからフェニックスの形をした光が飛び出す模様が描かれたものです。このポエジーが分かる人全てに捧げます。時差の関係で、日本の人たちは皆寝てしまったようで、最初のリアクションはローマの大橋さんからでした。いつも感謝です。続いて2番目は、ピサの桑木野君でした。Grazie ! Spero che il tuo libro lo segua subito. さらに、吉本さん、サンキュです。BHファンは、フランス語が読めなくても、僕を応援するつもりで是非一冊お買い求め下さい。

 

 

 

 

 

 

 


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