フェルネル研究の基礎
  
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論文

 

もう一人のガレノス

ジャン・フェルネルのキリスト教プラトン主義的なガレノス解釈

 

“Alter Galenus” : Jean Fernel et son interprétation platonico-chrérienne de Galien

 

Early Science and Medicine, 10 (2005), pp. 1-35.

 

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見出し

 

 

              1. Introduction

イントロダクション

2. Les forces divines de la forme

形相の神的な力

3. Dieu le Créateur et  la formation du corps humain

              創造神と人体の形成

              4. La nature divine et céleste de l’âme

              霊魂の神的で星辰的な本性

              5. La notion de la « faculté »

              「力能」の概念

              6. La force formatrice et le divin artisan dans le sperme

              精液内の形成する力と神的な職人

              7. Le spiritus et sa chaleur innée

              精気とその内なる熱

              8. Les fonctions physiologiques et les causes occultes

              生理学的な働きとオカルト因

              9. La source de Fernel

           フェルネルのソース

              Conclusion

           結び

 

 

 

 

メイキング風景

 

2003. 1. 09

  今週はずっとフェルネルの翻訳をしています。

 

2003. 1. 15

  相変わらず、昼夜を通して翻訳をしていますので、この日記を含めた他のことは、おざなりです。

 

2003. 1. 19

 ああ、ついに今回焦点を当てている部分である第2書のラフ訳も、一応すべて今日でかたが付きました。ロンドンに帰ってきてから、ちょうど2週間かかったことになります。この作業は、けっこう苦しかったです。次は、幾つかウェルカムの図書館にある16世紀の書物 (メインは、偽アレクサンドロスの『問題集』とアヴェロエスの医学書)をあたらないといけないのと、そろそろワールブルグにあるマテリアルの入手にもかからないといけません。ま、今感じるところでいうと、フェルネルのライトモチーフは、反アヴェロエス主義ではないかと思っています。

 

2003. 1. 25

  ロンドン計画について、ここの所ずっと考えていることは、さてどの部分から次の作業を始めるか?ということです。明らかな言及のあるソースをほぼ確定した基本となる電子テクストは出来上がってます。ラフな訳も作りました。幾つかアタックすべき場所の候補はあります。問題は、それのどこから片付けて行こうか?ということです。

 

2003. 2. 1

  昨日、フェルネルのとある章の隠された典拠を発見しました。まだルネサンス期に出されたラテン語版をみた訳ではないので、どの程度かはっきりと言えませんが、この部分の議論はとある著作から、おそらく一字一句そのまま抜き出すか、それを上手く並べ替えて書き直しています。以前、ファン・ヘルモントを研究している時に、既にこういう経験をしましたが、ここまで一緒だと本当に驚きます。年末に見つけたことと言い、ルネサンス期の著作家の作品製作の仕方と言うか、操作の仕方 modus operandi には、いつもビックリさせられるとともに、それを見つけることに非常に魅力を感じています。

 

2003. 2. 2

  今日はそれ程集中できなかったのですが、昨日見つけたフェルネルの典拠を読み進めています。だいたい内容としては、至高原理について、天使とダイモンマテリアコスモス人間の本性について、神的摂理について、といったものがコンパクトにまとまっています。結構、面白そうでしょう?問題は、あと残り2ヶ月この点を推し進めるか、先に考えていた点を形にするか、優先順位をつけるのに困っています。

 

2003. 2. 7

  残り時間も少なくなってきたので、幾つかある候補のうち、小さ目のものの方を少し攻めてみることしました。ま、これは、研究ノートに毛の生えたようなものですが、少しやってみて、時間がかかりそうなら、もう一つ別のを優先するようにするつもりです。幾つかリェージュに置いてあるマテリアルが必要なので、やっぱり最終的には後回しになってしまうかな?という気もします。

 

2003. 2. 8

  昨日始めたことをもう少し押しています。だいたい最初のアタックで当たりが付けられるところはクリアしましたが、それ以上は、どうやらリェージュのマテリアルを使わないと無理そうです。ということは、一先ず棚上げと言うことにしかなりません。ま、このテーマは、リェージュでゆっくりやります。

 

2003. 2. 9

  昨日、小さ目の方は、これ以上限られた時間では延ばせないな、と見切りがついたので、小手先の細工をせず、真正面からフェルネルのガレノス解釈を扱う方へと矛先を切り替えました。     

 

2003. 2. 12

   少しオフィスを留守にするので、気が付く範囲で片付けなければならないものを片付けています。フェルネルのガレノス解釈に関する部分をまとめています。1月に大雑把に通して訳した第2書から、細かいことは後で総チェックするとして、だいたい欲しい部分を集めているといった感じです。

 

2003. 2. 19

   ロンドン計画は一年限でフェルネルについて1〜2本論文を書くということでしたが、ま、種蒔きのプロセスだと思っていました。実は最近、数本の論考と研究ノートを数年かけてまとめ、一冊の本にしようと考えるようになりました。もう既に章立ても、だいたい決まっています。あとは実現を目指して、一本一本こなして行くだけです。まだ青写真の段階ですから、章立ての詳細を語るには時期尚早だと思いますが、仮タイトルは、『フェルネル研究:事物の隠れた原因への眼差し』と、研究対象となる彼の著作の題をもじったものにしようと思います:

 

Etudes fernéliennes

 

Regards sur les causes cachées des choses

 

なお、ロンドンで現在取りかかっている論文の題は、「《もう一人のガレノス》:フェルネルの他とは違うガレノス解釈 “ ‘Alter Galenus’ : l’interprétation de Galien pas comme les autres de Jean Fernel ” で行こうと思っています。

 

2003. 2. 24

  先週から土日の間の作業で、今取りかかっている「もう一人のガレノスAlter Galenus 論文は、ぼんやりと、それぞれの部分の輪郭が見えてきました。もう少しこのままバラで読み込んで、要らない部分を削ぎ落として解釈をシャープに出来たら、一つにまとめてストーリーを作って行きます。

 

2003. 2. 25

  午前中は、まだ「もう一人のガレノス」に取りかかった後、ブラジル・カフェで昼食を取るよう誘われていたので、それに付き合った後、午後はプランを練ることに終始しました。早く帰って、続きをフラットでと思って、ディスケットにデータを落としたのですが、そのディスケットを持ち帰るのを忘れるというマヌケな事態とあいなりました。

 

2003. 3. 1

  週末にメンテナンスのためにネットワークがダウンするとは知っていたし、前にも何回かそういうことはありましたが、ネットやメールができないだけで別にこれといった被害はなかったのです。が、今回は違います。オフィスのマシンが開きません。ネットワーク用のケーブルを外してもダメです。図書館に持っていって独立して使う時には、ケーブルなしでも普通に動くのに、今日はダメです。う〜ん、何ということ。Windows NT という OS は本当にバカです。こうなるとは思わず、フェルネルのファイルをフロッピーに落としていなかったので、紙にプリントしてある原稿にボールペンで手を加えることぐらいしか出来ません。非常にもどかしい。しかも、どうせ後で全て打ち直さなければなりません。大きな変更がある時点の推敲は、絶対マシン上が効率的です。週末の間、この作業は何も出来ません。今、非常にノッているところだったのに。

 

2003. 3. 3

  「もう一人のガレノス」論文は、だいぶ形になってきました。全部つなげると、だいたい普通の学術雑誌の印刷フォーマットで25〜30頁です。今は、議論を整理して、要らないものを出来るだけ削ぎ落とす作業をしています。後での確認用にノートの形でラテン語原文が沢山付けてあるので、まだ本格的なコメンタリーを行っていない段階で、こんなに分量が多くなるのですが、確認が出来次第に必要最小限まで切って行くつもりです。

 

2003. 3. 6

  今日は、ついに結論部を書いてみました。といっても、全体のまとめですから、レジメ的おさらいです。第1回目ですから、最後の分析内容の意味と今後のパースペクティヴを示す部分は、徐々にと思っています。昔から、序論結論を書くことは苦手としています。テクストの分析の方が好きです。結論の方は、あまり印象的な書き方が出来ず、いつも機械的に要点をまとめるに留まっています。

 

2003. 3. 7

  医学史では、calor innatus という概念があります。良く生まれながらに得る熱という意味で、「生得温熱」とか、訳されるようです。innatus というのは、あるものに生まれながらに内在しているという意味です。従がって、普通は人なり動物が生まれながらに持っている熱と理解されていると思います。フェルネルでの大きな違いは、人や動物にとって innatus なのではなくて、体内にある精気 spiritus にとって innatus であるという点です。

 

  チェック用に脚注内に残しておいた大部のラテン語のテクストを、思い切ってザクザクと切り落としました。ま、読み間違いのないことを祈っています。一度少なくなったところで、議論される各概念に関する参考文献の情報を盛り込んでいきます。結論部は、今のままでも良さそうです。後は、イントロダクションを考えないといけません。今日いろいろ書いてみたのですが、まだまだ練ることが必要です。

 

2003. 3. 8

  今日は、昨日いろいろ思い切って削ぎ落とした脚注内のテクストの替わりに、いろいろな参考文献の情報を盛り込みました。要領は、多すぎず&少なすぎず、です。しかし、だいぶ形になってきました。全体的な分量は変わらないですね。2次文献に関しては、リェージュのマテリアルで確認した方が良いものが幾つかありますし、プルーフ・リーディングもリェージュに帰ってからとして、今の段階では、幾つか残っている確認事項をチェックすること、そして、イントロダクションと結びの句を書くことです。明日は、イントロ作りに集中しましょう。イントロ、ドン!

 

2003. 3. 9

  昨日言った通り、「もう一人のガレノス」論文のイントロを書こうと思っていたのですが、脚注の整理その他の作業で終わってしまいました。ここのところは毎日、新しいヴァージョンを紙に打ち出して、家に帰ってから夕飯の後にベットに寝転がりながら朱を入れ、次の日に変更点をマシンに入力する、という作業を繰り返しています。

 

2003. 3. 10

  推敲を重ねてはいませんが、一応イントロは一丁上がりました。これで、全体がほぼ出来た訳です。気が付いたら、夜の9時を廻ってました。これからフラットに帰ります。まだ、フランス語のプルーフ・リーディングと引用文の翻訳のチェックをしなければなりませんが、一応カタチだけはイッパシのものになりました。もう、あまり残りの日数がないので、この段階でヴィヴィンアンに見せてコメントをもらおうか、迷ってます。

 

2003. 3. 11

もう一人のガレノス」論文の方は、ほぼ出来上がりに近いものとなりました。仏語とラテン語訳のチェックをしてもらう前の状態ではありますが、ロンドン在の残り日数があるうちに、ヴィヴィアンに見せてコメントをもらおうという方向に気持ちが傾いてます。廊下であったら、切り出したいと思います。

 

2003. 3. 12

  今日は、3時にヴァールブルグの入り口で、僕のフィチーノ論文を英訳してくれた編者のヴァレリーさんと会いました。80年代からフィチーノの書簡集を英訳出版しているグループの一人です。英国のルネサンス学会にも、顔が利く感じです。今書いている「もう一人のガレノス」論文をその機関紙 Renaissance Studies に出すよう強く薦められました。今回のは、哲学よりは医学に大きく傾いているし、仏語で書いているので、意中の雑誌は他にあると説明しましたが、じゃ、そこには仏語で出して、Renaissance Studies 誌にも英語のリライト版を作って出しなさい、と薦められました。そうですね、そのオプションは十分考慮に入れたいと思います。忙しい人ではありますが、書いたモノを見せればチェックしてくれそうです。

 

2003. 3. 14

ウェルカムの医学史研究所が入っているビルの前の信号待ちで、反対側にヴィヴィアンがいました。こっちへ渡って来るのを待って、原稿の第一稿が、仏語と羅語訳のチェックを残して出来たのだけれど、もう残すところ2週間しかないので、一度見てコメントをしてくれないか聞いてみました。あらら、今忙しいのだよねとは言いますが、OKしてくれました。ということで、幾つか細かい点を付け加える作業をし、それをプリント・アウトして彼の郵便受け(ピジョン・ホールと言います)に入れました。

 

2003. 3. 15

  ヴィヴィアンに「もう一人のガレノス」論文の第一稿を渡してから、曖昧なままで残しておいた、一つ気になっていた件を図書館に確認に行きました。そうしたら何と、とんでもないことを発見してしまいました。この件を本格的に盛り込むとなると、大きく書き換えが必要です。というより、大幅に紙幅も増やす必要があるでしょう。別件として、もう一本を書けば良いのですが、今の原稿にせっかくの発見を反映できないのは残念です。中間を取って、この発見を扱うオマケの短いセクションを入れることにしました。とにかく残っている時間で、このテクストをマシンに打ち込むことを決意して、その作業に午後中いっぱい取りかかりました。小型のフォリオ版で20頁分あり、今日は4頁分打てましたから、このペースで行けば一週間で何とかなりそうです。ちなみにテクストの羅語は、今まで扱っていたフェルネルの比べると非常に簡単です。

 

2003. 10. 30

  昨晩から、ロンドンで書き上げて寝かしたままになっていたもう一人のガレノス論文のプルーフ・リーディングを始めました。まだ取りあえずイントロだけですが。これから1週間は、昼は索引作り、晩はガレノスという久しぶりの昼晩の並行作業で行きます。

 

2003. 11. 9

  やっとのことで、もう一人のガレノス論文のプルーフ・リーディングを終わらせました。時間がかかりましたね。ついでに、もう少し具体的に内容が分かるように、「もう一人のガレノス:ジャン・フェルネルによるガレノスのキリスト教プラトン主義的解釈“ “Alter Galenus” : interprétation platonico-chrétienne de Galien par Jean Fernel ” というふうにタイトルを変更することにしました。僕の本の索引作りが終わってから、細かい部分の微妙な修正を施すために、まだ少し手元に置かなければなりませんが、それが終われば、この春から約束しているところへ投稿したいと思います。

 

2003. 11. 15

 もう一人のガレノス論文は、2〜3週間かけて、もうちょっと細かいところを入念にチェックした方が良いだろうと思うようになりました。それから、昔読んだだけで、論文執筆中にロンドンで再び目を通せなかった2次文献も、一通りおさらいしておく方が無難だなという感じです。

 

2003. 11. 19

  さらに!年明け早々の4日から6日のどこかで、E. Honma さんと澤井君を交えて、ガレノスに関する医学史の勉強会を開けないかと考えています。ガレノスにも詳しいカルキディウス研究者の土屋さんにも声をかけたいと思います。僕のもう一人のガレノス論文を下に、ガレノス医学とキリスト教信仰の調和の可能性をフィチーノ流のプラトン主義の目を通して見るというフェルネルの方法について話したいと思います。もちろん、参加したい方はどなたでも歓迎ですので、遠慮せず連絡下さい。霊魂デミウルゴスの概念を中心に、モーゼの教え世界霊魂、そして魂の転生が、いかにガレノスのテクストと折り合うのか?といったぶっ飛びのお話です。

 

2003. 11. 24

  午前中にヴィヴィアンの論文「初期ルネサンス医学における霊魂の解剖V. Nutton, “The Anatomy of the Soul in Early Renaissance Medicine”, in G. R. Dunstan (ed.), The Human Embryo : Aristotle and the Arabic and European Traditions, Exeter, Exeter UP, 1990 を読んだのですけれど、いろいろ得るものがあるのと同時に、ヴィヴィアンの判断に修正をせまる点が幾つかあるので、もう一人のガレノス論文の価値がさらに増した感じがしました。

 

2003. 11. 28

  もう一人のガレノス論文のための2次文献のおさらいは、終わりました。ラテン語の読みを再確認する次の段階に入りたいと思います。これが終われば、完成です。

 

2003. 12. 5

  もう一人のガレノス論文におけるテクスト読みの再チェックをしないといけないのに、なかなか手につきません。他の細かい点は昨日の例のように徐々に処理しているのですが、肝心要の作業を前にして、帰国準備などのために気分が散漫です。> と書きつつ、何とか食いついて、最初の3分の1に達しました。その後、図書館に行って、今度はヒポクラテス文書の『肉について』という著作について調べています。その出だしには、アイテールなどが出てきて、非常に宇宙論的であることで知られ、アリストテレスに影響を与えたとも言われています。> 本書についての研究ならびにルネサンス期における言及など、何か知っている人は教えて下さい。

 

2004. 1. 6

  1時半に御茶ノ水の順天堂病院正面入り口にあるエスカレータのところで参加予定者全員と待ち合わせしました。皆さん、約束通り時間きっかりに集合していただきました。9人ですね。セミナーは、大教室を使ったもので、暖房が入っていなくて寒かったですが、さらに酒井シヅ教授を含めた順天堂勢も3人加わり、全員で12人となりました。内容は、僕の「もう一人のガレノス:フェルネルによるガレノス医学のキリスト教プラトン主義的解釈」の約1時間、そして解剖学講座の坂井教授の「ガレノス、ヴェザリウス、解剖学」の1時間、教授が会議で1時間ほど席を外している間に、希望者は実際の人体解剖の模様を観察できるというオマケもあり、アマデオ君を含む4人が参加しました。僕を含めた残りの6人で、発表に対してのディスカッションをしていると、皆さん戻って来ましたので、その後は懇親会へと流れ込み、9時ごろまでワイワイガヤガヤと楽しかったです。新しく買ったデジカメでその模様を取ったのですが、新しいマシンに移行できてからアップしたいと思います。

 

  もう一人のガレノスは僕としては入魂の一本で、もとの論文の出来上がりに満足なのですが、実際にそこから読み原稿を起こしての7枚で1時間ちょいのレクチャーも上出来だったと思います。ま、レジメなしで原稿を読み上げる欧州伝統スタイルに慣れていない人には、大変だったかも知れませんが、なかなか盛会でした。

 

2004. 1. 12

  こちらに帰って来て、まず当面しなくては行けない事は、もう一人のガレノス論文を投稿できるまでに完成させること (6日の順天堂での発表でもお分かりの通り、議論自体は出来上がっていますが、細かい部分の詰めが残っています) と、去年から吉本さんと始めた共同研究のために、とあるテクスト全体をパソコンに打ち込むことです。後者の作業は、この新しいマシンのキーボードに慣れるために、ちょうど良いかも知れません。

 

2004. 2. 11

  もう一人のガレノス論文のチェックは、一応考えていたところまで来ました。今度はもう一度、変更した部分のプルーフ・リーディングをしてから、ラテン語のプロに訳を見てもらいます。その後、幾つか付け加えた文献のチェックをし直して、投稿しましょう。もう書き出してから丸一年が経過する訳ですから、どんなに細心の注意を払っているといっても、いい加減に区切りをつけないといけません。

 

2004. 2. 12

  午前中、もう一人のガレノス論文の最終チェックをした後、午後は久しぶりに大学図書館へ行ってきました。溜まっていた文献データのチェックをし、アヴェロエスアヴィセンナ関係は結構リェージュにあることを確認しました。特にアヴィセンナ『霊魂論』の校訂版があるところがラッキーです。そして、お気に入り『哲学史辞典Historisches Wörterbuch der Philosophie で、霊魂とアニムス霊魂の転生についての項目をチェックしました。ラテン語の animus を使ったのは、意外にもルクレティウスであるとことを知りました。ウェブ上では、ユング心理学の概念の説明ばかりで、古代や中世、そして初期近代の用法について知りたい場合は障害が多いです。どなたか良い資料を知っていたら、教えてください。

 

2004. 3. 22

  もう一人のガレノス論文は、ラテン語引用文の仏語への翻訳をチェックしてもらっているのですが、最初に帰ってきた3分の1にやっと目を通すことが出来ました。殆ど問題はなく、僕にとっては非常に難しかった幾つかの部分も上手く解決してもらえました。ラテン語の問題と言うよりも、むしろ仏語の問題なのかも知れません。こればかりは、訓練されたネイティヴでないと分からないといったレヴェルの問題です。ま、これで安心です。残りが早く来ないかと待っています。急いでない、と言ってしまったので、ゆっくりやっているのだと思います。このチェッカーは高校のラテン語の先生で、大学生の時は古典学でもプラトン哲学を専攻していた人で、去年の夏から幾つか見てもらっています。

 

2004. 5. 18

  ずっと放っておいたもう一人のガレノス論文の最後の詰めを一日中していました。もう、これで投稿します。ストーリー自体は去年の春に出来ていたのですが、それから一年いろいろ中断があり&ゴニョゴニョと細部をいじったので、かなり時間がかかってしまいました。年始の順天堂ライヴを聞いて頂いた方にはお分かりだと思いますが、これは僕のアートの真髄を込めた入魂の一本です。

 

2004. 5. 20

  もう一人のガレノス論文の最後に、安易にヘルメス主義を唱えて盲目にイェーツを追従することを批判する一言を入れることにしました。

 

2004. 5. 25

  さて、もう一人のガレノス論文は、投稿しようと思っている雑誌の編集長に、完成したので去年の約束通り投稿しますが、郵送か添付のどっちが良いですか、と聞いてみました。コンタクトを取るのは一年ぶりですが、すぐに返事が来ました。ワードでの添付ファイルで良いということですので、もう一度だけ見直しして送りたいと思います。> 送ってしまいました。あとは野となれ、山となれ。

 

2004. 5. 28

  もう一人のガレノス論文を投稿した雑誌の編集長から、ファイルを無事受け取った旨の連絡がありました。今は審査のためのレフェリーを探しているそうです。審査プロセスは最長2ヶ月くらいかかるようです。ヴァカンス・シーズンなので幾分分かりませんが、7月末には結果は分かるでしょう。順調に行くとして、2004年度の出版物としてカウントされるでしょうか?この論文を審査できる人って、それ程多くないと思います。ルネサンスのことを知らないガレノス学者になるか、古典学としてのガレノスを知らないルネサンス医学史家となるか、どっちにしても中途半端です。同時にこの2つのカテゴリーをカヴァーする人はヴィヴィアンくらいしかいないと思います。でも、ヴィヴィアンは身内です。おそらくは、ガレノス学者と医学史家の2人の組み合わせになるでしょう。僕としては、さらに仏語圏のラテン語の非常に出来る人に、一字一句を厳しく吟味して欲しいと思っています

 

2004. 6. 1

  フェルネルを翻訳しているエディンバラのジョンにもう一人のガレノス論文の原稿を見せて、リマークをもらいました。この人は前にも書きましたが、医者上がりで70歳を越すのに非常に負けず嫌いです。今回は、どうしても分からないガレノスの loci を教えてくれと頼まれたので、答えのついでに出来たての原稿を送ったのでした。同じテクストを相手に仕事をしている人間に厳しい目で見てもらうことに間違いはありません。原稿が到着して早速にも目を通したようです。「全く、お前らクレヴァーな歴史家なんか…」と自虐的な愚痴をこぼしつつ、特にお前の論文はエクストリームリー・クレヴァーだと揶揄した末に、幾つかタイプミスを指摘してくれました。憎たらしいジジイと思いながらも、ま、悪意はないから許しましょう。

 

2004. 7. 3

  もう一人のガレノ論文を投稿した雑誌の編集長から連絡がありました。審査結果はまだですけれど、彼の感触ではOKで出るのは来年5月の第2号ということです。う〜む、2004年度とカウントされることを目指したのですが、日本と違うのですから、イタリアの2〜3年という例もあるし、提出してから一年以内というのは、やっぱり無理ですな。連絡の目的は審査についてではなく、「古代から初期近代の物質と運動 Matter and Motion from Antiquity to the Early Modern Time という連続セミナーの枠組内で講義をしに来ないかというものでした。去年調べた感じでは、リェージュから3時間くらいでいける場所ですので、もちろん喜んで。ただし日程は、1月7日、2月4日、3月4日、4月1日のいずれかということで、ボルドー会議が3月17-19日に入っているので、どうしようか少し迷っています。

 

2004. 8. 23

  ウチに帰ってメールを開けたら、もう一人のガレノス論文の審査結果が届いていました。もう本決まりなので、この場で発表しても良いでしょう。じゃんじゃじゃ〜ん博論本の出版以降の僕のキャリアの方向性を占うことになる入魂作は、2005年度のアーリー・サイエンス&メディシン誌に載ります。添付ファイルにある審査評はまだ見ていませんが、編集長のメールの文面によると、本当に excellent かつ erudite、そして superb な一本をウチに出してくれたことは大いに誇り高く、心より感謝ということです。審査員の一人はボードに名を連ねているナンシー・シライシさんだったのじゃないかと何となく思います。それにしても、僕にとっては晴れの舞台への投稿で、単純に合格というのではなく極めて優秀ということで、これでまた世界のトップレヴェルに一歩近づいたことになり嬉しい限りです。いや、めでたい。今宵は祭りですな。

 

2004. 8. 25

  少し気分が落ち着いたところで、もう一人のガレノス論文の審査評を開けてみました。2人の覆面審査員の評が、合計A4紙で3頁にまとめられています。どちらも、エクセレントな論文なので基本的にはマイナーな点だけ、と言って幾つか微調整の提言が挙げられています。恐る恐る開けたのですが、簡単に料理できるような取るに足らないことだけです。これなら、スグに最終稿をフィードバックできますが、英語の要約を書かなければいけません。あと一点だけ最近フィチーノを読んでいて分かった点 (8月8日付)を何とか盛り込みたいのですが、どうしようかな?

 

2004. 8. 26

  ここ一週間というもの、バークベック会議の準備はおざなりになっています。このままでは不味いのですが、もう一人のガレノス論文に付けなければいけないアブストラクトを考えてみました。文字制限は特にないのですが、あまり長くしないようにしようと思います。

 

Inspired by the Christian Platonism stemming from the Florentine milieu, the French physician Jean Fernel developed his particular interpretation of Galen in his medico-philosophical work entitled On the Hidden Causes (Paris, 1548). By this attempt, he tried to give an answer to the serious and urgent need of reconciling the new Galen of Renaissance humanists with the Christian faith. The present study examines his strategy and method in the construction of this singular Galenism, namely around the questions of the Creator, formative force, the soul and its instruments. And through the analysis of his notions of spirit and its innate heat, the very target of Fernel’s anti-materialist criticism is revealed.

 

2004. 8. 27

  ちょっと不躾ですが、これまで10年間ESM誌に掲載された全ての論文と比べて、もう一人のガレノス論文の出来を、お世辞抜きにどう思うか編集長に聞いたのですが、返事が来ました。折角ですから、以下に少し引用します:

 

Your essay is really excellent, also compared with other pieces we print. It is very solid in its scholarship, new in its intellectual contribution, thorough in the way it covers the sources, precise in its linguistic mastery of the sources, elegant and at times ironical in its style, and has just the right length. So I think you have all the right to be proud of this.

 

2004. 9. 8

  アーリー・サイエンス&メディシン誌の編集長からメールがあり、急な発刊スケジュールの変更で、もう一人のガレノス論文の掲載を来年の2号(5月)から1号(2月)に繰り上げることができるけれど、9月末までに最終ヴァージョンを送れるか?と聞かれました。来週は丸々1週間、ロンドン行きで潰れますが、その後にまだ1週間あるから大丈夫だと思います。がんばります。その場合、10月上旬に版組みに入り、12月に校正校を受け取るタイミングとなるようです。これ以上は物理的に無理ですから、2004年度が付くことはありえません。ま、これで、非常にしっかりした学術出版大手のブリルで出している雑誌でも、版組みから出版まで最低でも半年かかることが分かります。スムーズに行った今回でも、投稿時からカウントすると9か月です。これが欧州のペースということでしょう。

 

2004. 9. 29

  ついに昨日、もう一人のガレノス論文の最終校をアーリー・サイエンス&メディシン誌の編集部に送りました。> 受け取り確認メールが来たのでひと安心です。後は、12月に校正校、2月に出版という流れのはずです。

 

2004. 10. 21

  昨日は図書館から帰ってきて、夕方になったところでメール箱を開けると、もう一人のガレノス論文の仏語をチェックされたものが返ってきました。これに、僕の最終的な見直しを入れて、印刷所行きとなるようです。10月初めと言っていましたが、大分遅れましたね。しかし、完成校の入稿段階でこれほど入念に直されたのは初めてです。他では問題なく通るようなこところまで、いじくってあります。ここまで来ると、文体個人の好みのレヴェルの問題ではないかなと思えます。うるさいフィチーノ協会会長でさえ、ここまではしなかったと思います。チェックする人が、普段あんまりない仕事なので異様に張り切ってしまったのではないでしょうか?文学的な正しい仏語なのでしょうが、非仏語圏の人たちにシャ−プで分かりやすいと褒められる粗野かつ単純な言い回しに徹底する僕の普段のテクストではないようです。ま、文心のあるようなネイティヴにしか分からない差異であって、気が付かない人も多いとは思います。もし、これを読んで、普段の僕のテクストよりも洗練されていると感じたら、貴方の仏語力は大したものだと思いますよ。> 午前中の間ずっと集中して一回通して読み直し、お昼過ぎに送り返しました。

 

  プルーフ(校正)はいつごろ来るのか、一時帰国の時期と重なるので聞いておこうと思い、編集長に質問しました。11月にブリル書店の社屋の引越しがあるようで少し遅れるかも知れないとのことですが、PDFファイルによる校正稿を受け取ることも可能だと言われました。万が一、日本で受け取ることになった時のことを考えて、通信とプリントアウトの環境をしっかりしておかないといけません。新しいマシンになってからは、今度が初めて(前はニフティの独特なシステムで接続していました)なので、カワゴエでのネット環境が順調か分からないので、ちょっと不安ではあります。

 

2004. 10. 22

  昨日、送り返したもう一人のガレノス論文の最終校ですが、英文要約のチェックがまだだなと思っていたら、I went through your text once more yesterday, and first of all would like to congratulate you once more on your really very brilliant piece and your extraordinary display of linguistic skills. I am very happy to be able to publish your piece in our journal!” というコメントともに、直してもらった要約が来ました。こうなります:

 

"Inspired by Christian Platonism as developed in the late fifteenth-century Florentine milieus, the French physician Jean Fernel proposed a particular interpretation of Galen in a medico-philosophical work entitled On the Hidden Causes of Things (Paris, 1548). With this interpretation, he responded to the serious and urgent need for a reconciliation of the newly reconstituted Galen of Renaissance humanism with Christian faith. The present study examines Fernel's strategy and method in constructing this singular Galenic body of doctrine, special attention being given to the roles attributed to the Creator, the formative force, and the soul. Subsequently, an analysis of the notions of spirit and of its innate heat as indispensable instruments of Fernel's physiology will uncover the precise target of his criticism of materialism."

 

2004. 12. 17

  ついに、もう一人のガレノス論文の校正刷りが、PDFファイルで送られてきました。3〜5日以内にチェックして返さないといけないのですが、どうも、ギリシア語の表記で上手く行ってないところがあるみたいです。ところで、じっくり腰を落ち着けて作業できる場所はないでしょうかね?残念ながら雑然としたカワゴエの家は、そういうところではないのです。> 今考えると、よくこういう環境から僕が生まれたなと思います。

 

結局、街中の中央図書館まで行って来ました。6人掛けの大きな平机に陣取って2時間くらい集中して、一度読み通しました。やはりギリシア語のアクセントが全て吹き飛んでいます。何とはなく悪い予感がしたので、プリントアウトしたオリジナルの原稿をベルギーから持って来ておいて良かったです。一方、いつも泣かされる斜体字は問題ありません。総合的にみると、これまで付き合ったなかでは、ブリルの編集の仕事が世界で一番上だと思います。> この時期に午前中から図書館に来ている人の多くは、受験生かな?と思われます。幾つもの暗記用のカードの束を机にズラッと並べてがんばっている人、朝から既に居眠りしている人、人生いろいろです。

 

2004. 12. 19

  校正校の修正点は10箇所くらい、ほぼ全てギリシア語アクセントの問題なのですが、さて、どういうふうに指示を出そうか迷っています。一番簡単なのは添付ファイルで送る方法ですが、受け手側で正しく表示されている保障はありません。1頁だけなのでファクスでも良いのですが、あいにくカワゴエにはファクス機はありません。そこらのコンヴィニにもあるようですが、オランダまで送れるかな?

 

2004. 12. 20

  このマシンのファクス機能で校正指示の原稿を送信できないか実験したいと思っていますが、なかなか上手く行きません。パソコンのファクス機能って使ったことがないのです。要は、プリンターにデータを落とすようなものなのでしょうが、それは良いとしても、上手くコンタクトが成立しません。> ん?上手く行ったかも知れません。実験の相方から、出来を報告してもらうのを待っています。> どうやら、上手く行ったようです。ベルギーでOKなのですから、オランダも大丈夫でしょうね。これで行こうと思います。> オランダの雑誌編集部に送りました。上手く行ったか、返事待ちです。

 

2005. 1. 3

 クリスマス休暇の明けたヨーロッパから、年末に急いで送ったはずの校正指示のファクスが届いていないというメールがありました。ガ〜ン。仕方ないので、急いで再トライ。今度は上手く行くでしょうか?ベルギーへは上手く送れたのに、オランダに届かないとは、どういうことでしょうか?マシンの相性が悪いのか、何らかの理由で正しい宛先に届かなかったか?です。う〜む。少なくとも番号は正しいですよ。しかも、本当のファクスのように、向こうのファクス機からの応答信号も受け取り、それでOKが出ている訳ですからヘンです。欧州に良くありがちな、人為的ミスでしょう。誰か違うところに転送されてしまったのか、休暇直前の慌しさの中で忘れられてしまったのか、既に休暇中で誰も居なかったか?

 

2005. 1. 4

  オランダから連絡がありました。どうやら無事に2回目のファクスを受け取ったようです。これにて一件落着。一回目も、やっぱりしっかり送れていて、ただ受け取り側の誰かのミスで編集長のクリストフ本人に手渡されなかっただけだと思います。欧州に良くある人為ミスです。クリストフは、東京からファクスを受け取ったことなどない&ヘッダーの日本語が珍しいので子供のように喜んでいると言っています。良かった、良かった。しかし、どんなヘッダーなのでしょうか?僕も興味あります。

 

2005. 3. 1

   おお!何でも遅い欧州にしては、ギリギリのタイミングで入魂もう一人のガレノス論文の掲載された ESM 誌最新20051号が到着しました。これも、ボルドー会議でコピーを配れます。ナイスです!抜き刷りはくれないので、今回は特別に知り合いのコピー屋の社長に頼んで、自家製を作ろうと思います。僕の歴史家としてのアートの極みを見たければ、これを読んで下さい。ロンドンでのフェロー生活の結晶であり、さらにその後1年も手間ひまかけて熟成させた A Finely Polished Gem です。> なお、この最新号にはリールのツキイチ・セミナーのレギュラー参加者レミとリュックによる共同論文も掲載されています。リール組がグイグイ攻めている感じです。

 

2005. 3. 2

  昨日ついに出版された入魂のもう一人のガレノス論文のPDFヴァージョンを密かに入手しました。BH訪問者の皆さまへの特典として、希望者にお分け致します。審査の段階から2人の覆面審査員(おそらく、その内の一人は、あのナンシーさんです)に類まれな完成度を褒められたくらいですから、異なるテーマを研究している者にとっても、議論の進め方やテーマのとり方、細かい問題の処理の仕方など、何かしらの参考になると思います。また、たとえ仏語が読めなくても、リッチな脚注は大いに役に立つので、BHファンだけではなく、神的なものに関心のあるプラトニストにとっては必携アイテムでしょう。欲しい人は、僕まで直接に連絡下さい。> 取りあえず、ディープ・ゼミMLのテストを兼ねて、お知らせを流しました。また、目ぼしい関係者には既にこちらから配布しました。

 

2005. 3. 3

  さて、入魂のもう一人のガレノス論文は、単なる医学史とか、科学史とか、ルネサンス哲学とか、そういう次元を超越して、今後代々語り継がれるべき、古代から近代までを含めた思想史研究上でのエポック・メイキングな一本ではないか?と勝手に思っています。僕の本は結局のところ5年前の博論ですが、もう一人のガレノスは一論文と言えど、それ以降の研究の方向性を明確に打ち出すものであり、何度も言うとおり、僕の歴史家としてのアートの極みを投入したものです。伝説的な巨星たちに比べれば、まだまだ序の口であり、いろいろ未熟な点はあるでしょう。しかし、かつて日本人の研究が、この高みまで到達したことがあったのか?と自問したくなるほど本人は気に入っています。> 長尺にも関わらず、吸い込まれるように一気に読んでしまったというローマの大橋さん、いつもヴィヴィッドな反応をありがとうございます。

 

2005. 3. 4

  入魂のもう一人のガレノス論文に対する中世北欧史学の小澤君からの的確な評を頂きましたので、ここに引用させて頂きます。サンキュです。

 

内容に立ち入るだけの知識はありませんので、感想だけ記します。読後まず感じたのは、フランス的知性の良き例を久しぶりに読むことができたという点です。文献学者としての表現の正確さ、哲学者としての議論の緻密さ、歴史家としての問題設定の面白さ、文学者としての章設定の巧みさ、一論文とはいえこれら全てを備えている作品に出会うことは、私のような一般史の分野に於いても、そうあることではありません。人体の構造や機能に対する認識が、様々な流路による知のせめぎあいによって変動する中世最末期から初期近代の一齣を、ミクロな史料から読み手の眼前に浮かび上がらせるこの論文は、まさに学知の結晶だと思います。中心となる議論から離れたところで面白いなと思ったのは、ガレノスの権威を奉じる「ガレニスト」たちの間でも、その解釈が随分異なるのだなということです。これは専門の研究者であれば常識に属することなのでしょうが、私などからすると、それではフェルネルとレオニチェーノの違いを産み出したものは何なのだろうかという点が次に気になってきます。入手できたマテリアルの問題だろうか、所属していたサークル内での論調の違いなのだろうか、それとも生まれ育った風土の差なのか… ともあれ、門外漢ながら、おそらくヒライさんが意図している以上に多くのことを学ばせて貰いました。私ですらそうであるのだから、本論文が専門家たちの瞠目するところとなることを確信しております。」