総合文献案内

 

 

 

その10

 

『パラケルススと初期近代における国際的な受容』

 

H.Schott & I.Zinguer (eds.),

Paracelsus und seine internationale Rezeption in der fruehen Neuzeit.

[Brill's Studies in Intellectual History, No. 86] 

Brill, Leiden, 1998.

ISBN 90-04-10974-9  Hard cover,  274pp. Price, 180 NLG

 
   19956月ボンとハイデルブルグでおこなわれたパラケルスス主義の国際的受容について、ほぼ同時期に出たもう一つのパラケルスス関連の論集と共に、最近のスカラーシップの動向を的確に把握する上で重要です。一方が全て英語に直された論文が収められていたのに対して、この論集は、独・仏語の論文が中心となって収められています。主な内容は、

Gunhild Poerksen, " Paracelsus und der Augenschein- Notizen zum aerzlichen Blick." pp. 1-12.
 
Lucien Braun, "L'idee de "matrice" chez Paracelse." pp. 13-
フランスでの唯一のパラケルスス専門家。パラケルススの著作における「マトリックス」(元々は母相とか子宮の意) の概念をここでは分析しています。
 
Heinz Schott, "Magie - Glaube - Aberglaube : Zur "Philosophia magna"." pp. 24-35.
魔術、信念と迷信の間で。
 
Frank Hieronymus, "Paracelsus-Druck in Basel." pp. 36-57.
ルネサンス期の最も活動的だった出版の街のうちの一つであるバーゼルにおけるパラケルスス主義関係の出版物について。詳細というよりは総括的・概観的な論文です。
 
Joachim Telle & Julian Paulus, "Bartholomaeus Carrichter - Zur Leben und Werk eines deutschen Fachschriftstellers des 16. Jahrhunderts." pp. 58-95.
この論文は、ドイツ錬金術史研究の第一人者ハイデルベルグのヨアキム・テーレ氏の偉大なる「ドイツの忘れられたパラケルスス主義者掘り起こし作業」の一環です。
 
Udo Benzenhofer & Karin Finsterbuch, "Antijudaismus in den medizinisch-naturwissenschaftlichen und philosophischen Schriften  des Paracelsus." pp. 96-109.
最近パラケルスに関する冊子を出版したばかりのベンツェンホーファー氏によるパラケルススの自然哲学・医学関係の著作における反ジュダイスムについて。
 
Joseph Levi, "Paracelsians versus Antiparacelsians : German Doctors against Jewish Physicians in Frankfurt am Main 1618-1645." pp. 110-
  
 
Ilana Zinguer, "Aubert-Duchesne dans le debat paracelsien." pp. 131-
フランスの偉大なるパラケルスス主義者ジョゼフ・ケルセタヌスに関する数少ない研究。このシンポジウムの共同開催者でもありますが、パラケルスス主義の専門家でないので、その内容はちょっと物足りない気もします。
 
Didier Kahn, "La faculte de medecine de Paris en echec face au paracelsisme : enjeux et denou;ent reels du proces de Roch Le Baillif." pp. 146-
こちらは、最近フランスのパラケルスス主義に関する詳細な博士論文を仕上げたばかりの実力者の力作です。ディーバス氏の『フランスのパラケルスス主義者』を大きく乗り越える研究の一端として、そのD論の柱の一つになるものからの抜粋です。
 
Stephen Bamforth, "Paracelsisme et medecine chimique a la cour de Louis XIII.." pp. 222-
フランスはルイ13世の治世下(1610-1643)でのパラケルスス主義と医化学の状況を追っています。ガッサンディやデカルトの活躍した、いわゆる近代科学の成立と非常に縁深い時期にあたります。要注意。
 
Roland Edighoffer, "L'enigme paracelsienne dans les Noces chymiques de Christian Rozenkreuz." pp. 238-
 
『薔薇十字運動』三部作の一つ『化学の結婚』におけるパラケルスス主義的テーマについて。

Index, pp. 261-

 

総合文献