ルネサンス・バロックの科学と文化

 

 

 

 

新刊書案内

 

その27

 

『ルネサンスと古典主義時代のシンボル図像の意味:

イマージュの哲学、神学、言辞学的な基底の研究』

 

Florence Vuilleumier Laurens

La raison des figures symboliques a la Renaissance et l'âage classique :

Etude sur les fondements philosophiques, théologiques et rhétoriques de l'image.

Droz, Genève, 2000.

554pp. Index ISBN 2-600-00430-0 Price:

 

 

    本書は、かなりの大冊ですが、本論自体は300頁あまりです。残りは、議論されているテーマに関連するラテン語テクストの校訂版を収録しています。この部分がかなりの量あるので、全体として大冊となっています。今日受取ったばかりなので、第一印象しか語れませんが、なかなか刺激的なテーマを扱った著作だと思います。参考文献もしっかりしていて、レフェランスとして使うには良いと思います。価格は、約9000円とかなり高い目ですので個人で買うよりは、公費で図書館に買ってもらって利用する方が良いでしょう。ルネサンスにおけるピタゴラス主義や古代神学とシンボル・寓意図像に関心のある人向きです。(2001320日記す)
 
   
例の『ルネサンスのシンボル図像の意味』をもうすぐ読み終わりますが、僕が期待していたものとは違います。まず、これはイコノロジー研究ではありません (図版は殆どない)。もちろん、「古代神学」 Prisca Theologia の概念については、ピタゴラスに関して沢山出てきますので、その方面では良いのです。ルネサンスのピタゴラス主義復活と言う文脈では注に入れるべき本です。しかし、各項目の論考が短すぎ、しかも引用をかき集めただけの印象を受けます。注の書き方も時として気に入りません。僕は文献情報の詰まったしっかりした注をつけることは好きなのですが、入手するのが比較的簡単な英語の2次文献を注内で延々と引くのはインクの無駄です。議論は、エニグマ、ヒエログリフィカ、シンボラ、エンブレマといった概念がどのように捉えられていたのか?についての哲学的・人文主義的・神学的な側面を分析した研究で、それぞれのエンブレムやシンボル図像の分析ではありません。単に僕がこの本で扱われているような分野の研究伝統を理解していないからなのか、本に問題があるのか分かりません。でも、決して悪いものではないんですよ。ただ、しっくりこない。はて、ナゼでしょう?2001414日記す)

 

 

Introduction    p.13-
イントロダクション
 
Première partie : Le retour de Pythagore    p.19-
1 ピタゴラスの復活
  
0. Pythagore à Santa Maria degli Angeli    p.21-
サンタ・マリア・デルィ・アンゲリにおけるピタゴラス
 
1. Leon Battista Aalberti faussaire maglré lui    p.25-
レオン・バッティスタ・アルベティ、それにもかかわらず贋作者

2. La Catena aurea de Marsile Ficin    p.41-
マルシリオ・フィチーノの『黄金の鎖』
 
3. De Politien a Beroalde l'Ancien    p.53-
ポリティアンからベロアルド(父)

4. L'émpreint pichienne    p.63-
ピコの痕跡 
 
5. La seconde génération : les enfants de Savonarole    p.73-
第2世代 サヴォナローラの子供達 
 
6. Pythagore kabbaliste : Reuchlin-Canpion    p.81-
カバラ主義者ピタゴラス ロイヒリンーカンピオン 
 
7. Symbola sive Synthemata : Agostino Steuno et la Philosophie perrenis    p.93-
『シンボルあるいはシンテマータ』 アゴスティノ・ステウコと古代神学
  
Epilogue : Descriptio Silentii    p.99-
エピローグ デスクリプティオ・シレンティイ
 
Symbolum pythagoricum a Lycosthene instauratum    p.104-
復興されたリュコステェヌにおけるピタゴラスのシンボル 
 
Deuxième partie : Le nouveau monde symbolique    p.107-
第2部 シンボル的新世界  
 
1. Le rôle d'Erasme: les symboles annexes aux adages    p.109-
エラスムスの役割 格言を補足するシンボル 
 
2. Les Sentinelles de l'âme de Juan Lluis Vives    p.117-
フアン・ルイス・ヴィヴェスの『霊魂の見張り番』 
 
3. Lilio Gregorio Giraldi : Symbola quasi aenigmata    p.135-
リリオ・グレゴリオ・ジラルディ 謎のごときシンボル 
 
4. Claude Mignault édituer et préfacier d'Alciat    p.145-
クロード・ミニョー、アルキアトの編者にして序文書き
 
5. Nicolas Caussin : Symbolique et éloquence sacrée    p.173-
ニコラス・コーサン 聖なるシンボルと雄弁
 
"Agnosto Theo"    p.183-
『アゴスティノ・テオ』
 
Troisième partie
Les enfants de Denys   p.185-
第3部 デュオニシウスの子供達 
 
1. La théologie symbolique de Maximilian van der Sandt    p.187-
マクシミリアン・ファン・デル・サンドのシンボル的神学 
 
2. La theologie mystique    p.209-
神秘的神学 
 
Excursus vel totius operis emblema. Le voile
archétype de l'allégorie    p.229-
脱線あるいは全ての技のエンブレム: ヴェール・寓意の原型 
 
Quatrième partie
La rhétorique des formes symboliques    p.247-
第4部 シンボル的形相のレトリック
 
1. L'Iconomystica de Jacob Masen    p.249-
ヤコブ・マセンの『イコノミスティカ』 
 
2. Image et persuasion
l'œuvre d'Emanuele Tesauro    p.267-
図像と説得 エマニュエル・テサウロの仕事 
 
3. Claude-Francois Menestrier : Législateur du Parnasse symbolique    p.297-
クロード・フランソワ・メネストリエ シンボル的パルナスの立法者
 
Conclusion    p.319-
結語
 
Bibliographie    p.323-
文献
  
Annexes    p.369-
補遺
 
Index nominum
人名索引
 
Tables des matieres    p.537-
目次

 

 

 

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