New Paracelsus Lounge

 

パラケルスス研究の新ラウンジ

  

  

 

 

その3

パラケルススについての研究文献

 

パラケルススの生後500年となる1993年には、多くの関連するドイツ語による出版物が陽の目をみます。それ以降、徐々にパラケルスス研究は国際化の歩みを進めます。同時に1990年代から、パラケルススの正真作と偽作を区別しようとする動きが活発になります。さらに2010年代半ばになると、それまで偽作として退けられてきた著作群にも光が当てられるようになってきました。ここでは、そうした近年の諸動向をまとめていきたいと思います。パラケルススの影響については、重複もありますが、「パラケルスス主義」を特集した【の4】をご覧ください。

 

 

A 総合的な単著

 

Walter Pagel, Paracelsus: An Introduction to Philosophical Medicine in the Era of the Renaissance (Basel: Karger, 1958; Basel: Karger, 1982).

『パラケルスス:ルネサンス期の哲学的学への入門』

パラケルススの複雑な自然哲学と医学を総合的にあつかった画期的な一書で、1982年の第2版で大幅に増補されています。現在でも重要な基本書ですが、正真作と偽書を混ぜて使用しているという大きな問題がります。

 

Massino Luigi Bianchi, Introduzione a Paracelso (Roma: Laterza, 1995).

『パラケルスス入門』

1990年代にイタリアで活躍したパラケルスス研究家によるポケット版の入門書です。著者の既発論文集を出して欲しいところです。

 

Udo Benzenhoefer, Paracelsus (Reinbek: Rowohlt, 1997).

『パラケルスス』

1990年代後半を代表するドイツの専門家によるポケット版の伝記。

 

Charles Webster, Paracelsus: Medicine, Magic and Mission at the End of Time (New haven: Yale University Press, 2008).

『パラケルスス:世界の終末における医学、魔術、そして伝道』

英国の権威的な歴史家によるパラケルスス研究の集大成。著者は魔術が嫌いなようで、すべてを理論的に説明しようとする傾向が極端すぎると思います。僕の書評Journal of Modern History 82 (2010), 667-669)を参考にしてください。

 

Bruce T. Moran, Paracelsus: An Alchemical Life (London: Reaktions, 2019).

『パラケルスス:錬金術的な生涯』

「ルネサンス人の生涯」シリーズの一冊として書かれた一般向けの入門書です。図版が多数あり、一気に読みとおすことができると思います。

 

 

 

B重要な論集と資料集

 

Peter Dilg & Harmut Rudolph (eds.), Resultate und Desiderate der Paracelsus-Forschung (Stuttgart: Steiner, 1993).

『パラケルスス研究の成果と展望』

パラケルスス生誕500年を記念する論集のひとつで、独語圏のパラケルスス研究のまとめと展望。

 

Peter Dilg & Harmut Rudolph (eds.), Neue Beitrāge zur Paracelsus-Forschung (Rottenberg: Akademie der Diözese Rottenburg-Stuttgart, 1993).

『パラケルスス研究の新貢献』

上記のDilg & Rudolph (1993a) 論集とペアになる論集で、独語圏のパラケルスス研究です。

 

Ole Peter Grell (ed.), Paracelsus and His Reputation, His Ideas and Their Transformation (Leiden: Brill, 1998).

『パラケルススとその評判、彼のアイデアとその変容』

英語による国際論集で、パラケルススについての論考と、彼の受容についての論考がバランスよく収録されてます。マスト・アイテムのひとつです。

 

Heinz Schott & Ilana Zinguer (eds.), Paracelsus und seine international Reception in der frühen Neuzeit (Leiden: Brill, 1998).

『パラケルススと初期近代における受容』

タイトルは英語ですが、英語や仏語の寄稿も収録されています。上記の Grell (1998) とペアで使用したいところ。

 

Gerhild Scholz Williams & Charles D. Gunnoe (eds.), Paracelsian Moments: Science, Medicine and Astrology in Early Modern Europe (Kirksville: Truman State University Press, 2002).

『パラケルススのモーメント:初期近代ヨーロッパの科学、医学、占星術』

パラケルススそのものよりも、パラケルスス主義の諸相とその時代の関連諸学についての論集です。

 

Karen Hunger Parshall et al. (eds.), Bridging Traditions: Alchemy, Chemistry and Paracelsian Practices in the Early Modern Era (Kirksville: Truman State University Press, 2015).

『諸伝統を結びつける:初期近代における錬金術、化学、パラケルスス的な実践』

上記の論集『パラケルススのモーメント』の続編的な存在で、パラケルススそのものよりも、その後の流れと諸伝統の結びつきに焦点が当てられた論集です。

 

Didier Kahn & Hiro Hirai (eds.), Pseudo-Paracelsus: Forgery and Early Modern Alchemy, Medicine and Natural Philosophy (Leiden: Brill, 2022).

『偽パラケルスス:偽書と初期近代の錬金術、医学、自然哲学』

7編の研究論文と300頁を超えるチェックリストからなり、偽パラケルスス文書を研究するうえで決定的な一冊です。

 

 



 

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