New Paracelsus
Lounge
パラケルスス研究の新ラウンジ
その1
日本語で何が読めるのか?
A. テクストの邦訳
パラケルススのテクストの邦訳は、大きく進みました。以前のおもな訳として、標準的なズートホフ版全集からの別抜粋集であるヤコビ編 『自然の光』(人文書院、1984年)と、パラケルススの最初期のテクストである『ヴォルーメン・パラミルム』 Volumen paramirum の大槻真一郎氏による全訳 『奇蹟の医書』(工作舎、1980年)がありました。
さらに1993年には、岡部雄三氏による幾つかのパラケルススの小テクストの翻訳が出されています。これらは「聖ヨハネ草について」、「磁石の力について」、「魔術について」、「神と人の合一について」で、『キリスト教神秘主義著作集』の第16巻「近代の自然神秘思想」 (教文館、1993年)、9-59、523-531頁に所収されています。
2000年代に入ると、大槻真一郎氏の弟子である澤元亙さんにより、『パラグラヌム』 Paragranum の邦訳が『奇蹟の医の糧』(工作舎、2004年)というタイトルで出版されます。澤元さんは、さらに『医師たちの迷宮』(2010年)、『目に見えない病気』(2012年)、『アルキドクセン』(2013年)、『ヘルバリウム』(2015年)を立てつづけに邦訳し、ホメオパシー出版から出しています。現在のパラケルスス研究で標準となったズートホフ版ではなく、微調整されているポイケルト版を底本に使っているところが特徴ですが、翻訳自体は信頼できます。
2010年代になると、村瀬天出夫君が「像について」を翻訳し、池上俊一編『ルネサンスの自然学』上巻(名古屋大学出版、2017年)、555-578頁に収録されています。
B 研究
単著
スティルマン 『パラケルスス』(創元社、1943年)。*
小川政修『パラツェルズス伝』(築地書店、1944年)。*
大橋博司『パラケルススの思想と生涯』(思索社、1976年)。*
種村季弘『パラケルススの世界』(青土社、1976年)。 研究というよりも小説です。パラケルススの生きた時代の雰囲気を掴むには良いかも。
カイザー 『パラケルススの生涯』(東京図書、1977年)。* 原著は、1969年公刊の158頁の小品。
ゴルダンマー 『パラケルスス:自然と啓示』(みすず書房、1986年)。原著は1953年に出版。レアなアイテムで、他言語に翻訳されていないことから、とても便利な翻訳。
コイレ 『パラケルススとその周辺』(風の薔薇、1987年)。 パラケルススに関する章はひとつだけ、1933年のもの。
岡部雄三『ドイツ神秘思想の水脈』(知泉書館、2011年)。パラケルスス研究の論文が3本ほど収録されています。
「天のしるしと神のことば:パラケルススにおける予言と預言について」
「自然の黙示録:パラケルススの伝承空間」
「星の賢者と神の聖者:パラケルススの魔術論」*
菊地原洋平『パラケルススと魔術的ルネサンス』(勁草書房、2013年)。
論文その他
木村雄吉「パラケルススの医学術思想」 『自然』(1978年5、6、7月号に掲載)。*
『モルフォロギア』第7巻(1985年) 特集 「パラケルススとゲーテ」*
F・ヴァインハンドル「パラケルススとゲーテの哲学」、2-13頁。
小原正明「パラケルススからゲーテへ:スパギリークの変遷に関連して」、14-24頁。
高橋義人「ホムンクルス:錬金術から神話的自然讃歌へ」、25-44頁。
岡部雄三「自然の黙示録:パラケルススの伝承空間」『ドイツ文学』第86号(1991年)、35‐46頁。岡部(2011年)に再録。
金子務「パラケルスス再評価と17世紀科学革命論への視座」 、ウェブスター『パラケルススからニュートンへ』(平凡社、1999年)、210-234頁。
岡部雄三「天のしるしと神のことば:パラケルススにおける予言と預言について」、樺山紘一編 『ノストラダムスとルネサンス』(岩波書店、2000年)、207-234頁。岡部(2011年)に再録。
菊地原洋平「パラケルススの物質観:四元素と三原基の構造関係について」『科学史研究』第40巻(2001年)、24-34頁。 菊地原(2013年)に増補再録。
菊地原洋平「パラケルススの植物観にみる形態と象徴」『モルフォロギア』第24号(2002年)、47-67頁。菊地原(2013年)に増補再録。
菊地原洋平「記号の詩学:パラケルススの「徴」の理論」、ヒロ・ヒライ編『ミクロコスモス:初期近代精神史研究』(月曜社、2010年)、7-36頁。菊地原(2013年)に増補再録。
ゴルトアンマー(岩田雅之訳)「初期近代の哲学的世界観、神秘学、神智学における光シンボル」、ヒロ・ヒライ編『ミクロコスモス:初期近代精神史研究』(月曜社、2010年)、254-289頁。(ゴルダンマー名義で邦訳された単著と同一著者)
ヒロ・ヒライ編『ルネサンス・バロックのブックガイド』(工作舎、2019年)、134-141頁。村瀬天出夫氏による書評4本。
村瀬天出夫「16世紀の医師パラケルスス」『ドイツ語と向き合う』(ひつじ書房、2020年)、167-188頁。