フラカストロ研究
論文
種子の理論をめぐるフィチーノ、フェルネル、そしてフラカストロ:「セミナリア」のプラトン主義的諸相?
Ficin, Fernel et Fracastor autour du concept de semence : aspects
platoniciens de seminaria ?
『ジロラーモ・フラカストロ:医学、哲学、自然科学のはざまで:没後450年記念国際会議論集』
Alessandro Pastore
& Enrico Peruzzi (eds),
Girolamo Fracastoro fra medicina, filosofia e scienze della natura :
atti del convegno internazionale di studi in occasione del 450°
anniversario della morte,
Nuncius 叢書 (Firenze, Olschki, 2005)245-260頁所収
ジロラーモ・フラカストロ(ca. 1478-1553)は主に、病気の種子という概念を導入した伝染病理論によってルネサンス医学史に名を残す。1530年に出版された韻文詩『梅毒あるいはフランス病』に既に見られる病気の「種子」 semina という理論は、1546年の著作『伝染病について』において「伝染病の種苗」 seminaria
contagionum という概念へと大きく発展させられる。特に前世紀初頭のシンガー夫妻の研究以来、この理論の元になったのはルクレティウスの「事物の種子」 semina
rerum という概念だと一般に受け入れられている。しかし、1520-1540年代の病因論を見渡すと、フラカストロと並行・独立に種子の概念を展開した著作家が幾人も存在したことが分かる。仏人医師フェルネルやスイス人医師パラケルススが、良い例である。病因論に限らなければ、16世紀の医学書だけではなく、自然学一般において種子という概念が盛んに議論されたことが最近の研究から分かってきている。これらのルネサンス型種子の概念の展開の発端は、フィレンツェのプラトン主義者マルシリオ・フィチーノの形而上学的な宇宙論の中に見出すことが出来る。これを出発点にして、本稿はフィチーノの種子の理論とフラカストロの伝染病の種苗の概念のつながりの可能性を探ることを目的にする。
1. Introduction
イントロダクション
2. Marsile Ficin et son concept de semence
フィチーノと種子の理論
3. Jean Fernel et sa réception des seminaria
ficiniens
フェルネルとフィチーノ的な種苗の受容
4. Les notions des seminaria et
du spiritus chez Fracastor
フラカストロにおける種苗と精気の概念
論集メイキング風景
2006. 5. 3 水
そうこうしているうちに、ついにフィレンツェの Olschki 書店からフラカストロ論集が届きました〜。老舗ならではのシックな装いも、非常に美しいです。記念碑的な一冊ですので、BHファンならずとも、皆さん、身近の図書館にリクエストを出して入れてもらって下さい。
2006. 4. 11 火
フラカストロ論集は僕のところに向かって発送されたようです。ついでに、僕の論文のPDFヴァージョンを送ってくれました。アップロードしましたが、上手くダウンロード出来ない場合は僕までメールで言ってください。
2006. 4. 5 水
おお、今メールでイタリアから報せがあったのですが、フラカストロ論集がついに出たようです。待ってました!編集のマリーナのところに届いたということで、発売はもう少し経ってからだと思います。>
と、思ったら、既にIBSでは購入出来るようです。36ユーロということで、医学史に関心ある人だけではなくBHファンは、ひとつヨロシク。タイトルは伊語ですが、英語や仏語の論文も入っています。> しかし、BHから生まれた本のコーナーも、だんだんスゴイことになって来ました!> イタリアで出た本なので、伊語会話の授業に持って行って、皆に見せてあげましょう。
2005. 12. 5 月
今日ついたフィレンツェの Olschki 書店の冬のカタログには、フラカストロ論集の予告が入っています。これで正式な論集のタイトルも分かりました。 『ジロラーモ・フラカストロ:医学、哲学、自然科学のはざまで』 Alessandro Pastore & Enrico Peruzzi (eds), Girolamo Fracastoro fra medicina, filosofia
e scienze della natura : atti del convegno internazionale di studi in
occasione del 450° anniversario della morte, Firenze, Olschki, 2006 ということで、Biblioteca di Nuncius という有名な叢書の 58番です。思えば、最終的にカッシーノ論集が、ここから出なかったことで悔しい思いをしたのですが、これで少し気が晴れました。
2005. 12. 3 土
マリーナの質問に応えるためにメールを送りました。まだまだヘタクソな伊語ですが、意味は通ったようです。どういうことを書いたのか興味ある人のために、参考として文面を挙げておきます。すぐに来た返事によると、12月末が全ての作業の締め切りで、1月か遅くても2月にフラカストロ論集は出版されるようです。僕にとっては、Olschki 書店からの第1本目となります。既に校正済で、12月末に全ての作業が締め切りという、この期に及んで無理矢理に所属先の表示を変えてもらわなくても良いのですが、新ボスは僕の書きものにゲント大学と入っているとご機嫌なので、もしまだ可能なら?ということで、この機会を借りてお願いした訳です。
2005. 12. 1 木
夏前に校正校を提出したあと音沙汰のなかったフラカストロ論集は、一体いつ出るのだろう?と少し不思議に思っていたのですが、どうやら秘書のマリーナが手作業でインデクスをおこしているようで、僕の論考の中に出てくる Jean とは誰だ?という問い合わせが来ました。新約聖書のヨハネのことなのですが、おそらく仏語を読めない彼女には分からないようです。伊語ではやっぱり、ジョヴァンニで良いのでしょうかね?> 良いようですね。San Giovanni Evangelista とかいうのが通常の言い方のようです。
2005. 5. 25 水
昨晩のイタ語会話の授業の後に、ワルテールとカフェで一杯、その後にイタリアンで夕飯をおごって貰らいました。もう65歳を超えるのに、クラブを経営する気持ちの若い、僕の本も買ってくれた懐の大きい人です。人生経験も人一倍豊富で、いろいろな話に付き合ってもらっています。木曜日の夜には、家に招いてくれるようです。感謝です。
ボルドー会議の発表からの仏語版のボイル論をほぼ完成させました。単に細かい部分を微調整しただけなので時間はそれほどかかりませんでした。プリントアウトして読んでみましたが、幾つか間違いを発見しました。そのまま送らないで良かったです。それから、補遺としてゼンネルトの著作の長い引用を加えました。クリストフの話ですと、やはり最後の方で登場するゼンネルトに何が書いてあるのか気になるようです。
フラカストロ論文の校正刷りは、控えのコピーを取ったので、今日にもフィレンツェに向けて投函してしまおうと思います。
一昨日からニューカマー高橋君とアルベルトゥス・マグヌスの小品『精気について』 De spiritu の読み会を始めています。とにかく、ジャンジャン行こうというのが合言葉です。
僕の無知のせいかも知れないですけれど、ルネサンス期のネーデルランドの自然哲学のことって、オランダ語圏以外では殆ど研究されていないのではないでしょうか?今回のゲント大学のプロジェクトに関して予備調査を始めたのですが、僕が関心を持っている生命と物質の問題にたずさわる分野に関しては本当に空白に近い気がします。
2005. 5. 24 火
推敲が終わったあとで、フラカストロ論文の校正刷りの見直しを始めました。それほど間違いはありませんが、幾つか編集側が手を入れたところに不統一なところがあります。例えば、引用文のラテン語原文を注に入れてあるところは、カッコ « » が付いていたり、付いていなかったり、と。そして、原稿を提出してから出版された僕の本ともう一人のガレノス論文のデータを補正しなければいけません。ま、でも、そんなところです。今日は、万が一のために控えコピーを取って、明日にでもフィレンツェのOLSCHKI書店の係に送り返したいと思います。まだまだ出版されるまでには半年くらいかかるかも知れませんので、僕のフラカストロ論文を今のうちに読みたいという人はメールで連絡ください。校正刷りのコピーを送ります。
2005. 5. 23 月
早速にも、フラカストロ論文の校正刷りが無事に到着しました。北イタリアからは全てが普通に機能するようです。原稿はさすがキレイに組み上がっていますが、それでも細かい間違いがあるでしょうから、2週間以内に見直しして、フィレンツェのOLSCHKI書店の係に送り返さないといけません。題名は、「種子の理論をめぐるフィチーノ、フェルネル、フラカストロ:「種苗(セミナリア)」のプラトン主義的諸相」 “Ficin, Fernel et Fracastor autour du concept de
semence : aspects platoniciens de seminaria”
で、頁割りは197-212頁になっています。今ちょっと読み返して見ましたが、悪くない出来だと思います。この調子だと、今年中に出版されることになるのでしょうか?
2005. 5. 18 水
すっかり忘れていたフラカストロ論文の校正刷りが編集局に届いたようです。転送するために、僕の住所を聞いてきました。今から2週間で直して、OLSCHKI 書店の担当者に送り返さなければなりません。ヴェローナからウチまでとウチからフィレンツェまでの往復の郵便の時間を考えると、殆ど時間はないように感じます。ま、相手はイタリアですから、取りあえず校正刷りが手元にちゃんと届くことを祈ります。
この間、ほぼ1年が経過。
2004. 6. 15 火
今日こそは集中力を高め&雑事を全て切り捨てて、フラカストロ論文の仕上げに取り組みたいと思います。日記も書くのをやめましょう。いつの間にか、3万8千字まで来ていました。もうすぐ上限に届いてしまいます。> だいたい出来ましたので、イタリア式というか、Olschki 式の書誌データの書き方に直しています。例えば、雑誌論文は他国と全く違って、こうなります:
M. Bullard, The Inward Zodiac: A Development in Ficino’s Thought on Astrology,
«Renaissance Quarterly», XLIII, 1990, pp. 687-708.
一方、単著の方はこうなります:
L. Thorndike, A History of Magic and Experimental Science,
V,
こちらはさほど他の国と変わりません。それから、論文などの特別な頁を示す場合は:
F. Solmsen, Epicurus and Cosmological Heresies, «American Journal of
Philology», LXXII, 1951, pp. 1-23:20-23.
となるようです。末尾に注目してください。1-23頁ある論文の特に20-23頁を参照せよというときは、Olschki 式だと、こうなります。レアリスムというか何というか、合理的ではあります。これも驚いたのですが、いわゆる参照せよの Vede、See、Voir 等は使うなと言っています。結構な違いです。目下の個人的な問題は2次文献ではなくて、分析対象テクストとなる1次文献で、上記の形式には上手く収まりきらないケースです。それから、下付き二重カッコ doppie virgolette in basso « »
と上付き二重カッコ doppie
virgolette in alto “ ” の使い分け方もイマイチ良く分かりません。用法の違いが分かる人は教えて下さい。
2004. 6. 14 月
ローマの大橋さんのご好意で、急遽必要になったカッシーノ論集に含まれているフラカストロ関係の論文と自分の論文のコピーを送ってもらいました。ありがとうございました。深く感謝いたします。しかし、自分の論文のコピーを送ってもらうというのは変な気分です。中身をチェックしましたが、ほぼ9割がた僕の校正指示は尊重されていましたので、少し安心しました。
今日は何だか、銀行やら郵便局やらで、ワサワサと雑事をしている間に4時になってしまいました。フラカストロ論文の大体の目処が立ったので、気が緩んだのかもしれません (あるいは、昨日のジズー・ミラクルの余波かも知れません)。まだ終わった訳ではないのに!イカン。しかし、この日記を見ている人は、僕がほんの一瞬のうちに論文を書いてしまうような錯覚に陥るといけないので言っておきます。もともと、このフラカストロ論文は僕の博論のフィチーノ、フェルネル、フラカストロの章や節からの切り出し&再構成です。昨秋の発表時にストーリーは出来上がっています。今は、印刷物として出すために議論と形式を整えているだけの話です。もともとの仕込みには、多くの時間がかかっています。もう一人のガレノス論文のように完全な新作の場合を見れば分かると思いますが、入魂の一本ははやり作業開始から1〜2年かかります。
2004. 6. 10 木
今日から再び気を取り直して、フラカストロ論文の作業に戻りたいと思います。あまり暑くならないことを期待します。> 幸運にも何回かシャワーがあったおかげで、平均して涼しく過ごせる陽気でした。シャワーなんていうと、東南アジアみたいですが、そんな感じのキャッツ&ドッグな雨でした。
脚注を入れて4万字というのは、普段僕が作業しているフォ−マットで言うと10頁分くらいです。フィチーノとフェルネルの部分を終えた今の段階で、フラカストロ用の部分も含めて3万字で8頁です。あと、約2頁分だけ増やせば良いことになります。イントロは最後に手を入れ直すとして、今日は一応のところフィチーノとフェルネルを大体の形にすることが出来ましたので、明日はフラカストロの部分の整理に入りたいと思います。それほど長い時間取り組んだ訳ではないのですが、疲れてしまいました。
2004. 6. 9 水
昨日せっかく本格的に取り組み始めることが出来たフラカストロ論文ですが、一旦中止して、今日は伊語会話のテストに備えることにします。> 万全とは言いませんが、一応の準備は出来ました。> ま、問題なくクリアしたと思います。結果は学期末なので28日まで待たないと行けません。
2004. 6. 8 火
やっとフラカストロ論文の仕上げ作業に入りました。締め切りまで、あと3週間ですが、間に合うでしょうか?現時点で注を含めて2万字を4万字以内のところまでブーストしないといけませんが、もともとは長かったものを15分の発表用に無理矢理に短くしたものなので、スグに分量は取り戻せると思います。> ん?短くする作業の前のヴァージョンをしっかりと保存していなかったようです。しまった。ちょっとショックですが、がんばります。
2004. 5. 21 金
来週からは、6月末締め切りのヴェローナ会議の発表を正式に論文化する作業に取り掛かりたいと思います。タイトルは、「フィチーノ、フェルネル、フラカストロ:種子の理論をめぐって」です。
2004. 3. 29 月
去年10月にイタリアのヴェローナで開催されたフラカストロ国際会議のその後のお知らせが来ました。会議論集が、フィレンツェの学術出版の老舗 Olschki 書店から出されている科学史雑誌 Nuncius の叢書として出版されることが決まったそうです。6月末までに原稿を整えて送れ、という指示が来ました。結局、カッシーノ国際会議の論集は、当初言われていた Olschki 書店からではなく、ローマの医学史雑誌 Medicina nei Secoli の特集号という形で出されることになったので、自分の書き物が
Olschki 書店から出版されるのは、これが初めてのことになります。やった!