リヒテンベルガー研究のプラットフォーム
ルネサンス期のヨーロッパでは、世界の終末と占星術を結びつけた言説が大流行します。この動きの端緒となったのが、ヨハネス・リヒテンベルガー(Johannes Lichtenberger, ?-1503)の『予後』 Pronosticatio (ハイデルベルク、1488年)だとされます。ドイツ語訳とイタリア語訳によりドイツやイタリアだけではなく、『驚異の書』
Liber mirabilis (パリ、1522年)の第5章にそっくり全文が収録されたことで、フランスをはじめとするヨーロッパ中にリヒテンベルガーの小著の影響は広まったのです。さらに拡張して、「予言」のコーナーも参考にしてください。
日本語で何が読めるのか?
A・ヴァールブルク『ルターの時代の言葉と図像における異教的・古代的予言』(ありな書房、2006年)
この長大な論考の陰の主人公はリヒテンベルガーと言って良いでしょう。
M・リーヴス『中世の預言とその影響:ヨアキム主義の研究』(八坂書房、2006年)
第3部第5章「鷲と百合」とそれ以降で、リヒテンベルガーが活躍します。
菊地原洋平『パラケルススと魔術的ルネサンス』(勁草書房、2013年)
第5章でパラケルススとの関係が記されています。
基本的な欧語文献
Domenico Fava, “La fortuna del pronostico di Giovanni
Lichtenberger in Italia nell quattrocento e cinquecento,” Gutenberg-Jahrbuch 5 (1930), 126-148.*
「15・16世紀のイタリアにおけるリヒテンベルガーの予言の影響」
Dietrich Kurze, “Prophecy and History: Lichtenbeger’s
Forecasts of Events to Come,” Journal of
the Warburg and Courtauld Institutes 21 (1958), 63-85.
「予言と歴史:リヒテンベルガーの未来予見」
Dietrich Kurze, Johannes
Lichtenberger (-1503): Eine Studie zur Geschichte der Prophetie und Astrologie
(Lübeck: Matthiesen, 1960).
『リヒテンベルガー:予言と占星術の歴史研究』
Paola Zambelli, “Fino del mondo o inizio della
propaganda?” in Scienze, credenze occulte
e livelli di cultura, ed. Luigi Tassinari (Firenze: Olschki, 1982),
291-368.*
「世界の終末か、プロパガンダの始まりか」
Dietrich Kurze, “Popular Astrology and Prophecy in the
Fifteenth and Sixteenth Centuries: Johannes Lichtenberger,” in Astrologi hallucinati: Stars and the End of
the World in Luther’s Time, ed. Paola Zambelli (Berlin: de Gruyter, 1986),
177-193.
「15・16世紀における大衆的な占星術と予言:リヒテンベルガー」
Robin
Bruce Barnes, Prophecy and Gnosis: Apocalypticism in the Wake of the Lutheran Reformation
(Stanford: Stanford UP, 1988).
『ルター派宗教改革の初期における予言、知、終末論』
Ottavia Niccoli, Prophecy and
People in Renaissance Italy (Princeton: Princeton UP, 1990).
『ルネサンス期イタリアにおける予言と民衆』
サヴォナローラの到来との関係をあつかっています。
Jonathan Green, Printing
and Prophecy: Prognostication and Media Change, 1450-1550 (Ann Arbor:
Michigan UP, 2012).
『印刷と予言:未来予想とメディアの変遷』
『驚異の書』
Liber mirabilis (Paris: Marnef, 1522).
『驚異の書』
第5章がリヒテンベルガーの書物の再録となっています。
Edouarde
Briçon (ed.), Le
livre admirable renfermant les prophéties
(Paris: Edouarde Briçon,
1831).
『予言を収めた驚異の書』
『驚異の書』の全仏訳です。
François Secret, “Aspects oubliés des courtants prophétiques au début du
XVIe siècle,” Revue d’histoire des religions 173 (1968), 173-201.
「16世紀初頭の予言潮流の忘れられた諸相」
Jennifer Britnell & Derek Stubbs, “The Mirabilis liber:
Its Composition and Influence,” Journal of the Warburg and Courtauld Institutes 49 (1986), 126-149.
「『驚異の書』:その構成と影響」
『驚異の書』の構成と諸版の相違など基本的な知見は、ここに。