占星術いろいろ

 

 

その2

 

『占星術、科学そして社会 歴史学的エッセー』

 

 Patrick Curryed.),

Astrology, Science and Society : Historical Essays.

Boydell Press, Woodbridge, 1987.

302pp. +Index  ISBN 0-85115-459-X

 

  その1で紹介した "Astrologi hallucinati " は、1524年の占星術的な世界終末予言についての論争に焦点をあてたケース.・スタディでしたが、こちらの方は、中世からルネサンスそして17世紀の占星術に関する広範な科学史的な観点からみたテーマの論文がそろっています。19843月にロンドン大学ワールブルグ研究所で行われた国際シンポジウムでの発表された論文を下にした論集で、それぞれの分野の第一線で活躍する歴史家の作品がぎっしりと詰まった論集です。近年のスカラーシップの傾向の原点を知る上でも、また、占星術的な知と科学との係わり合いを手軽に知りたい人(一般の人と歴史家の双方)にとって、これは重要な論集です。 内容は以下の通り。   

   

J.D.North, "Medieval Concepts of Celestial Influences : A Survey." pp. 5-
"Astrologi hallucinati "
の中でも「星辰の影響の概念」に関する長大で重要な論文を寄せていたグローニンゲン大学の天文学史の大家です。この論文は、その論文と対を成しています。「星辰の影響」を語る時には 両方読んで欲しいですね。
    
G.F.Vescovini, "Peter of Abano and Astrology." pp. 19-
中世イタリア医学の巨人アバノのピエトロについて著作を出している Vescovini 氏です。パドヴァ派医学に与えたピエトロの影響は絶大ですから、中世・ルネサンス・17世紀初期のイタリア系スコラ医学における「星辰の影響」の理論を語る時に絶対重要です。
    
H.M.Carey, "Astrology at the English Court in the Later Middle Ages." pp. 41-
この人は、英国の中世・ルネサンス・17世紀の占星術について幾つも著作を出している大家。
     
R.Lemay, "The True Place of Astrology in Medieval Science and Philosophy : Towards a Definition." pp. 57-
この人は偉大なる Lynn Thorndike の弟子で、中世ラテン世界に最も影響のあったとされるアラビアの天文学者アブルマシャールの研究で名を馳せた中世科学史(天文学・スコラ学・大学制度など)の重鎮です。

 

S.Caroti, "Nicole Oresme's Polemic Against Astrology, in his Quodlibeta." pp. 75-
"Astrologi hallucinati "
では、ルターの片腕となってルター派の大学における科学教育の方向を決定していたメラヒトンと占星術に関する論文を寄せていました。ここでは、ずっと時代を遡って中世のニコル・オスレムに焦点をあてています。

    

K.Hutchison, "Towards a Political Iconology of the Copernican Revolution." pp. 95-
「オカルト的質」や「超自然」と言った概念が17世紀の科学の形成期にいかなる状況にあったを取り扱ったヒット論文を次々と出し科学史専門誌『 Isis 』の賞も取っている Hutchison 氏です。

    

J.V.Field, "Astrology in Kepler's Cosmology." pp. 143-
あのケプラーの宇宙論における占星術的側面をあつかったものです。要チェック。

   

A.G.Clarke, "Metoposcopy : An Art to Find the Mind's Construction in the Forehead." pp. 171-

 

J.E.Halbronn, "The Revealing Process of Translation and Criticism in the History of Astrology." pp. 197-
この人は、クロード・ダリオという16世紀後半のモンペリエで活躍したパラケルスス主義者の占星術の著作の研究をしている人です。
  
S.Schaffer, "Newton's Comets and the Transformation of Astrology." pp. 219-
ニュートンの思想に占める彗星の意味とそれが与えた占星術の変容について。
      
P.Curry, "Saving Astrology in Restoration England : 'Whig' and 'Tory' Reforms." pp. 245-
いわゆる社会学史的手法です。王政復古期の英国における占星術。キース・トマスの影響なんでしょうか?イギリスでは、やたらと社会学史的手法による占星術史の研究があります。     

     

M.Hunter, "Science and Astrology in Seventeenth Century England : An Unpublished Polemic by John Flamsteed." pp. 261-
最後は、現在のロバート・ボイル研究の総本山。マイケルハンター氏の論文です。

    

Index, pp. 301-302.

 

 

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