ルネサンス・バロックの科学・文化・思想

 

 

 

 

自然に固有のもの ルネサンス期ヨーロッパにおける自然と学問

 

Anthony Grafton Nancy G. Siraisi

Natural Particulars : Nature and the Disciplines in Renaissance Europe

Cambridge MA, MIT Press, 2000.

Hardcover - 438 pages Index  ISBN 0262071932  Price: 50

 

 

2000年度前半で最も重要であると思われるルネサンス期 (15-16世紀) の西欧科学に関した論文集が先ごろ発売されました。プレ・モダン科学に関心ある人なら納得のものすごい顔ぶれの寄稿陣です。エディターの予告文を翻訳すると大体以下のようになります。

「本書は、15-16世紀の間に西欧で起こった自然研究の変容を考察する。特有のテクスト伝統をたどる論考もあれば、学術的・職業的コミュニティの発展をフォローする論考もある。一次文献の内的分析を行うものもあれば、より大きなグループへの実践の広がりを吟味するものもある。全ての所収論考に共通する中心的テーマは、この時代を特徴づける増大しつつあった自然、特に、自然形態、植物や動物のディテールといった「自然の固有のもの」へのこだわりである。また、いかに古い理論や手法が存在し続けたか、いかに刷新された古典ソースの研究が新たな問題と理論を自然研究へ導入したか、いかに新旧の学問分野の構成が自然世界へのアプローチの仕方を形作ったか、そして、いかに知識伝搬の物質的かつ実践的方法がそのコンテクストを形成することを助長したかを所収論考は議論する。近年、初期近代ヨーロッパの科学史研究は、異なる流派の学者間での分化によって活性化され、かつ不透明化されてもきている。一方で、厳密なテクスト分析が科学の発展の鍵を与えると主張する学派があれば、他方で、学問が成長した社会的・文化的コンテクストについて注意を集中する学派もある。本書は、複数の歴史学的アプローチが正当でありかつ相補的であるという主張をしつつ、そのような分化に対抗するものである。」

内容は、以下の通り。

Anthony Grafton and Nancy Siraisi, Introduction    p.1-
イントロダクション
 
Brian P. Copenhaver, "Number, Shape, and Meaning in Pico's Christian Cabala: The Upright Tsade, the Closed Mem, and the Gaping Jaws of Azael."     p.25-
ピコのキリスト教カバラにおける数字、形状、そして意味:
 
James Hankins, "The Study of the "Timaeus" in Early Renaissance Italy."    p.77-
初期ルネサンスのイタリアにおける『ティマイオス』の研究
 
Michael J. B. Allen, "Marsilio Ficino: Daemonic Mathematics and the Hypotenuse of the Spirit."    p.121-
マルシリオ・フィッチーノ、ダイモン的数学とスピリトゥスの斜辺
 
Luc Deitz, "Space, Light, and Soul in Francesco Patrizi's Nova de universis philosophia (1591)."    p.139-
フランチェスコ・パトリッツィの『新普遍哲学』における空間、光、霊魂
 
Ann Blair, "The "Problemata" as a Natural Philosophical Genre."    p.171-
自然哲学的ジャンルとしての『問題集』

 

John Monfasani, "The Pseudo-Aristotelian Problemata and Aristotle's De animalibus in the Renaissance."    p.205-
ルネサンスにおける偽アリストテレスの『問題集』とアリストテレスの『動物論』
 
Daniela Mugnai Carrara, "Epistemological Problems in Giovanni Mainardi's Commentary on Galen's Ars parva"   p.251-
ガレノスの『アルス・パルヴァ』へのジョヴァンニ・マイナルディの註解における認識論的問題

Vivian Nutton, ""A Diet for Barbarians": Introducing Renaissance Medicine to Tudor England."   p.275-
「野蛮人への食事」:チューダー朝英国へのルネサンス医学の導入
 
Chiara Crisciani, "From the Laboratory to the Library: Alchemy According to Guglielmo Fabri."    p.295-
実験室から図書館へ:グリエルモ・ファブリにとっての錬金術
 
William Newman, "The Homunculus and His Forebears: Wonders of Art and Nature."    p.321-
ホミンクルスとその先祖:技と自然の驚異
 
Katherine Park, "Natural Particulars: Medical Epistemology, Practice, and the Literature of Healing Springs."    p.347-
自然に固有のもの:医学的認識論、実践、そして療泉に関する文学

 

Paula Findlen, "The Formation of a Scientific Community: Natural History in Sixteenth-Century Italy."    p.369-
科学コミュニティの形成:16世紀イタリアにおける自然誌
 
Thomas DaCosta Kaufmann, "Empiricism and Community in Early Modern Science and Art: Some Comments on Baths, Plants, and Courts."    p.401-
初期近代科学と芸術における経験主義とコミュニティ:鉱泉、植物、そして宮廷に関するコメント

 

Index     p.419-
索引

  ルネサンス・バロックの新刊書紹介