ボイル研究

 




 


ボイルの典拠についての幾つかの考察:新版全集の書評にかえて

Quelques remarques sur les sources de Robert Boyle en guise de compte rendu de la nouvelle édition de son œuvre

 

『国際科学史アーカイヴ』

Archives internationales d’histoire des sciences, 53 (2003), pp. 303-318.

 

 

              1. イントロダクション  Introduction

              2. ボイル研究の歴史  L’histoire de l’étude boyléenne

                               2-1. 初期の歴史研究とボアス・ホール  Les premières études historiques et Marie Boas [Hall]

                               2-2. 70-80年代の社会・政治的アプローチ  Les approches socio-politiques des années 1970 et 1980

                               2-3. ハンターとボイル・ルネサンス Hunter et la renaissance de l’étude boyléenne

                               2-4. ボイルのキミアの典拠:クレリキュチオ、ニューマン、プリンチーペ  Les sources chymiques de Boyle :

                                   Clericuzio, Newman et Principe

                            3. ボイルの新全集  La nouvelle édition de l’œuvre de Boyle

                            4. 若きボイルの『幾つかの自然学的論考』の典拠  Les sources des Certain Physiological Essays du

                                   jeune Boyle

                              4-1. ファン・ヘルモントの『結石論』の役割 Le rôle du De lithiasi de Van Helmont

                              4-2. 軽視されているガッサンディのキミア的アイデア  Les idées chymiques négligées de Gassendi

                              4-3. 石化精気と鉱物学著作家達  Le spiritus lapidifique et les auteurs minéralogiques

                              4-4. 鉱物学的断片に一瞥  Bref coup d’œil sur les fragments minéralogiques

 

 

 

メイキング風景

 

2003. 7. 8

  事務のファビアンが、ボスが目を通して少し字面に修正を入れたボイル研究の原稿を見せてくれました。ということは、ローマ編集部にまだ送っていなかったということです。4月にあれだけ急いだのに…。デュシェーヌ論文の時は、5月に提出して8月に校正校が来ましたが、今回はそれよりもっと遅いペースです。論文自体は、次の年の4月に出ましたから、今回のボイル研究はさらに遅くに出ることになりますね。いや、こちらは全てに時間がかかります。

 

 

2003. 5. 12

  朝一で研究所に行って、マイナーな点を一箇所修正したボイル研究の原稿を提出しました。適宜、雑誌編集部のあるローマに送られると思います。

 

 

2003. 5. 9

  そうそう、今どき全ての原稿を手で打ち直ししているところも珍しかったのですが、『国際科学史アーカイヴ』誌でも、ついにフロッピー入稿を採用したということです。今回のボイル研究の校正刷りでは、デュシェーヌ論文の時のような膨大な数の間違いがないことを期待しています。

 

 

2003. 5. 8

  久々にボスに会ってきました。ボイル研究は二重マルです。

 

 

2003. 5. 1

  僕のボイル研究の第一弾も一区切りついたので、BHのボイル研究の頁を少し整理しました。特に肖像画を入れたのと、エセーの構成をアップデートしています。エセーは大きく分けて3部構成で、まずボイル研究史のおさらい、次に新全集の分析、最後にボイルのキミア・鉱物学的な典拠に関する考察が来ます。最後の考察の部分は、全体の半分以上の分量を占めています。鉱物学といっても、皆さんが想像しやすい、どの鉱物が何であるとかいった特殊論ではなくて、鉱物はどのように形成されるのか?といった一般論の伝統に焦点を当てています。この話題は、結石はどうしてできるのか?といった医学とも密接に絡んだ、当時の知識人にとって重要なテーマだったのです。ボイルの場合は、ライプニッツの『プロガイア』に通ずる原初地球論へのスコープも入っています。

 

 

2003. 4. 29

  ボイル研究を提出しに久しぶりに研究所に行って来ました。スタッフの懐かしい顔を見ましたが、ボスは居なかったので、来週の木曜日の朝にアポを入れました。あれだけプレッシャーをかけたのですから、それまでには目を通すでしょうか?

 

 

2003. 4. 28

午後からは、ボイル研究を紙に打ち出して、もう一度じっくり読み直します。

 

 

2003. 4. 27

  今日は、昨日の午後から始めたボイル研究プルーフ・リーディングがやっとのことで終えることが出来ました。週明けにボスに提出しようと考えていたのですが、もう一日だけ、日中の光の下で、じっくりと読み直してみたいと思うようになりました。

 

 

2003. 4. 26

  ポーランドでセンディヴォギウスを研究している Rafal に、昨日の3人の Johann Gerhard ことについて聞いたら、息子の方はチュービンゲン大学の学長をしているくらいだから、この大学の歴史を当たれば何かあるだろうと言われました。同じソースを見ていても、目の付け所が違うなとは思います。もともと前から、16世紀後半におけるチュービンゲン大学関係には関心があったので、幾つか入手してある資料を来月にでも読んでみたいと思います。

 

 

2003. 4. 25

  大詰めも大詰めのボイル研究は、昨日午後の最終局面で、さらなる展開を付け足したので、予定よりは少しだけ遅れています。プルーフ・リーディングが残ってますが、これはピュアに仏語の問題だけですので、内容的にはこれで良いだろうということで、ボイル学の見地から表記や議論に間違いがないか、吉本さんに見て頂くことにしました。よろしくお願いいたします。> 早速、帰って来ました。別に重大な間違いの指摘などはありませんでした。ありがとうございます。しかし、二人して気になっていることがあります。この際、この日記をご覧の研学諸氏にお尋ねします。チュービンゲンの医師 Johann Conrad Gerhard (1567- ca. 1623) とその息子でチュービンゲン大の医学教授の Johann Gerhard (1598-1637) いう人物について何でも良いから、知っていたら&見つけたら教えて下さい。なお、ルター派の神学者 Johann Gerhard (1582-1637) とは、同名ですが別の人物のようです。

 

 

2003. 4. 24

  さてさて、ボイル研究は、大詰めに入っています。朝から昼過ぎまでで、前半部の見直しを終えました。後半部は、これから取り掛かります。

 

 

2003. 4. 23

  おお、ボイル研究は、80パーセントのところまで来ました。新全集評価のセクションと全体を通して見直しして、結びの部分も、だいたいのものが出来ました。明日は、全体をプリント・アウトして通して全体の流れをチェックしたいと思います。そしたら、プルーフ・リーディングの段階に入ります。この調子だと、金曜には第1稿が出来るのでは?というところまで見通しが立ってきました。

 

 

2003. 4. 22

  う〜む。ボイル研究は、70パーセントのところまで来ました。少し疑問に思っていたことを吉本さんに矢継ぎ早にいろいろ質問しました。お答え、感謝です。あとは、明日に本来の目的である新全集の評価のセクションの見直しと全体の結語を書けば、第1稿はプルーフ・リーディングの段階に入れます。もう少しです。現段階では、つらつらとしたエッセは、何だか締まりのない終わり方なので、何が言いたいのか?ということになりかねませんので、何とかもう一工夫したいとは思っています。既に分量はかなり多いのですが。

 

 

2003. 4. 21

  復活祭の月曜日。今日は、どこも祝日です。ですが、ボイル研究の続きです。時間が本当になくなってきました。取り敢えず、タイトルは『ボイルの典拠へ:新版著作集の書評にかえてPour les sources de Boyle : en guise de recension sur la nouvelle édition de son œuvre というのにしようかなと思っています。学術雑誌のフォーマットでだいたい20頁になるので、論文なみのサイズですが、研究の重みから言えば、肩の力を抜いたリマーク集です。

 

              1. イントロダクション  Introduction

              2. ボイル研究の歴史  L’histoire de l’étude boyléenne

                 a. ボアス・ホール  Boas Hall

                 b. ジェイコブとシェイピン=シェーファー Jacob et Shapin-Schaffer

                 c. ハンターとボイル・ルネサンス Hunter et la renaissance de l’étude boyléenne

                 d. クレリキュチオ、ニューマン、プリンチーペ Clericuzio, Newman et Principe  

              3. ボイルの新全集 La nouvelle édition de l’œuvre de Boyle

4. 若きボイルの『幾つかの自然学論考』への幾つかの考察 Quelques remarques sur les Certain Physiological Essays du jeune Boyle

   a. ファン・ヘルモント Van Helmont

                 b. ガッサンディ Gassendi

                 c. 鉱物学著作家達 Quelques auteurs minéralogistes

                 d. 手稿関連作品から A partir des écrits manuscrits

 

 

2003. 4. 20

  日曜日の昼の恒例のスペイン・カフェのタパスを食べたら、ボイル研究の続きを行いたいと思います。まずは、エセーの議論をまとめてしまいたいと思います。そしたら、研究史と新全集へのリマークを見直します。> 午後から日が暮れるまで、それなりに集中できました。

 

 

2003. 4. 19

  今日は、マーストリヒトでのバイトのためボイル研究は一旦中断です。

 

 

2003. 4. 18

  ボイル研究は大分進みました。まだまだカオティックですが、今日はエッセの部分を紙に打ち出して検討するところまで来ています。ボイルの初期代表作のひとつである『懐疑的なキミスト』 (1661年) とほぼ同時期の『幾つかの自然学的論考』 (1661年)におけるボイルの典拠についてのリマークをつらつらと展開している訳ですが、ま、今後のしっかりした研究への幾つかの指針を示すものです。

 

 

2003. 4. 17

  今日もこれ以上は、日記にも手をつけず、メールもやらずにボイル研究に集中したいと思います。振り返ってみれば、研究史をまとめるのはそれほど大変ではありませんが、エッセ(文字通り「試み」です) の部分は良く練る必要があります。では、日記を閉じます。バイバイ。

 

 

2003. 4. 16

  昨日も結局、全く進みませんでした。まずいですよ、これは。>今日は、おおいに集中力が出て、大きく前進しました。イントロから、ボイル研究史のおさらい、新全集の分析といったところの一応のメドがたちました。細かいことは、また後で手を入れるとして、前半部のだいたいの形は見えてきました。明日は後半部、僕なりのボイル研究への現段階での一石を投じるエッセを書くことへと移行したいと思います。

 

 

2003. 4. 15

  この日記にいろいろ書いた割には、昨日は良く眠れなくて睡眠不足のせいか、虫の居所が悪く、全然作業が進みませんでした。今日は、心を入れ替えて、がんばります。

 

  ボイル研究史を見ていると、ウェルカムに居るとき耳にタコが出来るほど縁遠さんから聞かされた文学批評理論におけるポリティサイジングの手法の根幹を共有するものは、ボイル研究では既に70-80年代に盛んだったことが分ります。60年代までの動きに対抗するように登場したこの手法の影響力は大きく、成果も多々ありますが、問題は、そのポリティサイジングを行う際の足場が結局のところ啓蒙主義的な発展史観によって18世紀以降に作り上げられた歪められたボイル像であり、その間違った土俵の上で行われる単純化対立化によって成立しているものであるという点です。1990年代以降のボイル研究においては、発展史観の縛りから開放されたところで進むアーカイヴの発掘の作業から生み出される新事実の積み重ねとその解釈の方がより生産的であることが分ります。批評理論自体が悪いのではなく、その理論展開を行う際の足場となるデータが既に発展史観の色眼鏡に染まったものであるという点が問題なのでしょう。確かに、批評理論自体は複雑・先鋭化していくのでしょうが、議論をする足場が弱いという点は否定できないと思います。砂上の楼閣というヤツですね。ロンドン以降に気づいた点としては、各学問分野で共通した手法が用いられていることと、その手法が盛んになる時期に関する時差です。文学研究の人が、今は各種理論の嵐の過ぎ去った草木のない荒野にいると感じるというのも何となく分かる気がします。ま、どちらにしても、これまで読まれていないものを読まないと、新しいことは出てこないですよ、やっぱり。

 

 

2003. 4. 14

  ボイル研究では、いろいろ読み散らかしてきましたが、そろそろまとめる方向で今週は作業しないとマズイことになりそうです。読もうと思っていたボイルのテクストと関連するファン・ヘルモント等のものは、ある程度読めたので、今から取り掛かるのは、ボイル研究の動向分析の部分です。博論をやっていた頃読んだマテリアルのおさらいと、ボイル研究プロパーとして押さえておかなければならない部分があり、先週末からは、特に後者の点を攻めています。論理学、修辞学、神学には深入りできません。キミアの話に焦点を絞りつつ、「若きボイルのソース」という観点がいかに欠如していたか、それが1990年代以降どうなって来ているか、新全集でどういうことがなされたのか、まだ何が足りないかを追いたいと思います。ここをまとめたら、何が足りないか?への僕なりの解答としてのエッセを展開するため、読み散らかしてノートしたものをまとめて行きます。時間との戦いです。

 

 

2003. 4. 11

  ボイル研究の一環として、吉本さんに送って頂いたファン・ヘルモントのとある論考を読んでいます。ボイルにスタイルが似ているなとは思いますが、それは同時代の英語のせいでしょうか?それとも、ボイルの論述法のせいでしょうか?とにかくも、ボイルの方がはるかに文体が難渋です。

 

 

2003. 4. 9

  吉本さんに送って頂いたファン・ヘルモントの著作の英訳の一部を受け取りました。お願いした時に予想したよりも、だいぶ分量が多いですが、今取り組んでいるボイル研究に使おうと思っています。

 

  しかし、ボイルの文章は退屈です。いちいち細かいディティールを延々と書き連ねます。冗長さに関しては、他のルネサンスやバロック期の著作家も似たようなものなのですが、ボイルの場合は、現象の記述をフランシス・ベーコン流の自然誌の方法に頼っているので、普遍的なことではなく、個別的なことに関心が大きく傾いているせいだと思われます。論理的な展開ではなく、時間概念のある歴史という意味ではないヒストリー (記述) の積み重ねなのです。

 

 

2003. 4. 8

  う〜む、イカン。マシンが一台に統合されてから、日記に割く時間が大幅に増えてしまっています。これから、ボイル研究に戻ります。昨日もそんなことを書きましたが、昨日はあまり良く集中できず、反省をしたばかりでした。ウェブ製作も、加減を誤るとマイナスかも知れませんよ。

 

 

2003. 4. 7

  この日記を書き終わったら、気分を入れ替えて、ボイル研究に戻ります。

 

 

2003. 4. 3

  さて、懸案のボイル全集のレヴュは、まず第1巻の総合イントロを読み直す作業から始めています。

 

 

2003. 4. 2

  新しい本棚を入れないと根本的な整理はできないという程度にまで達したので、整理の作業を一旦中止し、懸案のボイル全集のレヴュを書く作業を始めたいと思います。ロンドンでの一年間にチョコチョコと手を入れては、中断していたので、だいぶ忘れていますが、話の運びは考えています。レヴュというよりは、レヴュの形を借りた短めの論文あるいは長めの研究ノートに出きれば良いなと思っています。あんまり悠長なことは言ってられないのですが。

 

 

2004. 5. 27

   どうやら僕のボイル研究が出版されたようです。最終的なレフェランスは「ボイルの典拠についての幾つかの考察:新版全集の書評にかえて “Quelques remarques sur les sources de Robert Boyle en guise de compte rendu de la nouvelle édition de son œuvre”, Archives internationales d’histoire des sciences, 53 (2003), pp. 303-318 です。内容に関しては問題ないのですが、校正指示を滅茶苦茶に踏みにじられているので僕は怒っています。もともとの原稿はパーフェクトだったのに、編集側が変な手を入れ、しかも全体を通して統一されていません。校正の段階で直すようにイチイチ拾ったのですが、ことごとく無視されています。例を挙げますと、テクストは仏文ですから注を呼ぶ数字をピリオド の前に入れるべきですが、あるところでは前、あるところでは後ろにされています。また今回は、(出版地 :出版社、出版年) 形式を取ったのですが、途中から括弧ナシに直されたり、直されていなかったりと、ハチャメチャです。内容は問題ないので、これを関係者に配りますが、何だか研究のケの字も知らないチェリーボーイにように思われるので恥ずかしい限りです。トホホ。もうローマとは絶対仕事をしません!

 

 

2004. 5. 29

  僕のボイル研究の出ている号の本体は手元にないのですが、コピーを送ってもらってあります。ちょっと文字が小さいので大きく拡大コピーしたものを何部か作りましたので、関係者にお配りします。元の方は他人がしたコピーですので、ちょっとフレーム取りにユレがありますがお許しを。

 

ところで、このボイル研究にはいろいろな特徴がありますが、BH関係でいうと、吉本さんの書き物が初めて欧語の老舗雑誌で言及されるという点があります。これで海外の研究者は、Kagakushi という何語か訳も分からない怪しげな発行物に書かれた論文が幾つかあるエキゾチックな名前の謎のボイル研究者の存在を知り、これは一体何者?ということになる訳ですが、答えはボルドーでの国際会議で出されるという仕掛けです。

 

 

2004. 7. 20

  コピーを送っておいたボイル研究の世界的中心人物マイケル・ハンター氏から、専用サイトの新着コーナーに僕のボイル研究の書誌データを入れた旨の連絡を受けました。ありがとうございます。例によってエキゾチックだからでしょうが名前の綴りが間違っているので、失礼ながら直して下さいとお願いしつつ、ボルドーで会えることを楽しみにしていることはもちろんですが、バークベックで9月に開かれるフィチーノ会議にペーパーを読みに行くので、その時にハローという時間を見つけられるのでしょうという返事を出しました。> ま、しかし、ロンドンに居るときにデュシェーヌ論文のコピーを送った折には返事がなかったので、それから考えればずいぶんと前進したと見て良いのでしょうかね?

 

 

2004. 7. 21

   ボイル専用サイトの新着コーナーに載せてもらった僕のボイル研究の書誌データですが、早速名前の部分を直してくれたようです。>ハンターさんから直した旨の連絡がありました。恐縮です。バークベック会議の日の予定が立ってないので分からないけれど、会えるのではないかと。

 

 

 

ボイル公式サイト吉本さんのボイル研究ボルドー国際会議

 

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